「どの城が一番なのか?」。城ファンが集まると話題がつきないテーマの一つである。週刊朝日ムック『歴史道 Vol. 26 江戸三百藩の名城大図鑑』では、近世城郭“何でもランキング”を掲載。ここでは、普請、作事、立地、戦略、権威の5つの指標から分析した「最強の城」や、「標高が高い城」「駅近な城」「近世城郭が多い都道府県」のランキングを紹介する。

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最強の城 ベスト5

 幕藩体制において、もっとも格式の高い城郭として位置づけられたの、将軍家が鎮座する江戸城だった。ただし、敵を迎撃する城として評価してみると、巨大過ぎて締まりがなく、最強の近世城郭かというと疑問が残される。そこで、最強の近世城郭を選考するため、パラメータを設定し、採点した。

 2位の江戸城は、全体的な締まりがないため、戦略の項目を減点。1位の大坂城は、各項目の均整が保たれ、最強の近世城郭の称号にふさわしいスペックを誇った。採点には本項執筆者の主観も潜在しており、独自のランキング作成もお勧めしたい。 

1位 / 大坂城 97点
普請 20点、作事 20点、立地 19点、戦略 19点、権威 19点

大坂夏の陣で陥落したのち、徳川幕府によって再建され、最強の近世城郭へ変貌を遂げた。本丸の石垣は日本一の高さを誇る。

2位 / 江戸城 95点
普請 20点、作事 20点、立地 19点、戦略 17点、権威 19点

本丸と西の丸という二つの中核が存在する巨大城郭。縄張りを担当したのは藤堂高虎。

3位 / 熊本城 94点
普請 20点、作事 19点、立地 19点、戦略 18点、権威 18点

加藤清正が築いた西国一の名城。普請をはじめ、パラメータのバランスは最高水準を誇る。

4位 / 姫路城 92点
普請 18点、作事 19点、立地 20点、戦略 17点、権威 18点

3棟の小天守を従えた連立式天守は、江戸城や大坂城よりも威圧感を示した。

5位 / 名古屋城 91点
普請 19点、作事 19点、立地 18点、戦略 17点、権威 18点

最強の平城。江戸城天守が失われたのち、名古屋城天守は日本一へ昇格 



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標高が高い城 ベスト10

 日本一標高の高い城郭は、1760mの贄川城とされ、戦国の山城であれば、標高1000m級が列挙される一方、近世城郭に限定すると、800mクラスの高遠城が1位となる。

 現存12天守のうち、もっとも標高の高い地点に築かれたのは、山城の備中松山城ではなく、平城の松本城であり、山国信濃(長野県)は、半数の5城を占めた。

1位 / 高遠城 804m

2位 / 高島城 760m

3位 / 岩村城 717m

4位 / 小諸城 658m

5位 / 松本城 592m

6位 / 高取城 583m

7位 / 上田城 456m

8位 / 備中松山城 430m

9位 / 三春城 407m

10位 / 沼田城 400m

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駅近な城 ベスト5

現代の住居では駅近の物件が好まれるように、城跡も駅から近ければ、集客力を期待できる。ただし、駅が近過ぎると、長岡城のように遺構の破壊という悲劇も生じた。

1位 / 長岡城 JR上越新幹線長岡駅 徒歩0分

1898年、北陸鉄道(北陸本線)の長岡駅開業とともに本丸の遺構は消滅。駅構内には城跡であったことを示す案内板等が設置される。

1位 / 三原城 JR山陽新幹線三原駅 徒歩0分

山陽新幹線の建設とともに本丸は分断されたが、新幹線のホーム下には、往時の石垣が現存。見学通路をたどれば、天守台を探査できる

3位 / 高松城 高松琴平電鉄高松築港駅 徒歩2分

4位 / 福山城 JR山陽新幹線福山駅 徒歩3分

5位 / 明石城 JR山陽本線明石駅 徒歩5分

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近世城郭が多い都道府県 ベスト5

今回ランクインした城が密集するエリアには、譜代大名や親藩大名が配置される傾向が強かった。それらは隣国の強大な外様大名を監視する役割を果たし、幕藩体制の安定に貢献した。

1位 / 福島県 9城

会津若松城・猪苗代城・福島城・三春城・二本松城・白河城・平城・相馬中村城・棚倉城

1位 / 三重県 9城

長島城・桑名城・神戸城・伊勢亀山城・津城・田丸城・松坂城・伊賀上野城・鳥羽城

3位 / 長野県 8城

飯山城・松代城・上田城・小諸城・松本城・高遠城・高島城・飯田城

3位 / 愛知県 8城

吉田城・田原城・岡崎城・西尾城・刈谷城・挙母城・名古屋城・犬山城

3位 / 兵庫県 8城

尼崎城・篠山城・明石城・姫路城・龍野城・赤穂城・出石城・洲本城

(監修・文/外川 淳)

※週刊朝日ムック『歴史道 Vol. 26 江戸三百藩の名城大図鑑』から抜粋