遺骨収集事業を巡る厚生労働省の不祥事が止まらない。事業見直しのきっかけにもなった2010年のフィリピンでの遺骨混入事件に端を発し、今夏にはシベリアでも取り違えが発覚した。9年前、遺骨混入疑惑を最初に報じた記者が取材した。AERA 2019年12月9日号から。



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 厚生労働省のシベリアでの遺骨収集事業で、大量の現地人の遺骨が「日本人」として収集され、戦没者として埋葬されていたことが発覚した。ミャンマーでは、「獣骨」として分類され廃棄されていた人骨が見つかるなど、次々と不祥事が明るみに出ている。それでもなお、科学的鑑定に不可欠なDNAを損なう「焼骨」にこだわり続ける同省の姿勢に、遺族は翻弄(ほんろう)され、関係者は「証拠隠滅行為」と怒りの声を上げる。

 シベリアでの遺骨取り違えは、7月29日、NHKが独自ニュースとして取り上げたことで発覚した。5年前に厚労省が東シベリアのザバイカル地方で「日本人」として収集、帰還させた16体の遺骨のうち、鑑定可能だった14体の遺骨が「すべて日本人ではない」という衝撃の内容だった。NHKはその後も五月雨式に特ダネを連発、14年前に専門家から疑いを指摘されながら、ロシア側にも事実を隠蔽(いんぺい)していた厚労省は、9月19日、調査結果として1999〜2014年にロシア国内9カ所から収集された遺骨のうち、597体分が日本人のものでない可能性があると発表した。

 厚労省によれば、海外戦没者約240万人のうち、部隊や一般の引き揚げ者が持ち帰ったものを含め約128万体の遺骨が収容され、うち約34万体が同省の事業として収集されてきた。

 旧ソ連ではシベリアなどで抑留された日本人のうち、約5万5千人が亡くなったとされる。同省はロシア側から提供された資料をもとに、91年度からこれまでに約2万2千体の遺骨を現地で収集し、日本に帰還させてきた。

 なぜ、取り違えが起こったのか。

「埋葬記録はあるが、チェックが杜撰(ずさん)ということでしょう。もちろん、現地の村長らに話を聞いたうえで収集しているのですが、彼らももう何代も代替わりしているので情報の精度も高くない。ロシアでは墓地の上に墓地を作るようなこともあるので、ロシア人の墓を掘り起こして収集してしまった蓋然(がいぜん)性が高いと思います」

 と、毎日新聞記者、栗原俊雄さん(52)は語る。栗原さんには、『シベリア抑留 最後の帰還者 家族をつないだ52通のハガキ』などシベリア抑留や遺骨収集、戦争に関する著書が多数ある。


 栗原さんはため息交じりにこう続ける。

「597体の中でも、疑わしさに濃淡はあるでしょう。歯と四肢骨なども残っているので、鑑定はできるはずですが、過去にも同様のケースがたくさんあったと思います。それをどこまで検証するつもりがあるのか。現地に専門職員を派遣せず、日本人以外の遺骨の多数混入を招いたフィリピンで懲りたのか、最近は人類学者を収集現場に派遣して体制強化を図っているというけれど、スキーム自体を見直さないといつまでも同じことを繰り返すでしょう。ロシアなら軍の研究施設などを借りてDNA鑑定すれば、アジア系かそうでないかぐらい確認できるのに」

(編集部・大平誠)

※AERA 2019年12月9日号