天皇ご夫妻の長女愛子さまが9月11日、誕生日を迎えた秋篠宮妃の紀子さまへのあいさつのため、赤坂御用地をたずねた。天皇や上皇に近い「内廷皇族」の内親王が宮妃を訪問したことに驚いた人も少なくなかったようだ。皇室の序列である「ご身位(しんい)」は、どうなっているのか。
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ピンクの帽子をかぶり、赤坂御用地を訪問した愛子さま。にっこりほほえむ様子が「可愛らしい」と話題になった。
この日、愛子さまが帽子をかぶっていたのには理由がある。皇室では、「相手を訪問する」立場である時には帽子を着用し、自身の住まいなどで相手を迎える場合には帽子はかぶらないという慣習があるためだ。
一方で、驚きをもって、このニュースを見ていた人も少なからずいた。
元宮内庁職員で皇室解説者の山下晋司さんは、「このニュースを見たとき、まずは『えっ』と思いました」。
というのも、愛子さまは内廷皇族の内親王。皇室の序列である「ご身位」を考えると、宮妃である紀子さまよりも「上」に思えるからだ。
■紀子さまは摂政になれない
皇室の「ご身位」は、皇室典範などで明確に規定されているわけではない。一般参賀やご一家の写真の並び順、晩さん会の席順などが参考になるものの、実際にはわかりづらいものだ。
山下さんによると、皇室典範に記された皇位継承順位や摂政の序列が基準になると考えられるという。
皇位継承順位でいえば、皇嗣で57歳の秋篠宮さまが第1位。そして第2位に長男で17歳の悠仁さま、3位に上皇さまの弟で87歳の常陸宮さま、と続く。
摂政は、天皇が未成年だったり、病気や事故などによって国事に関する行為を行うことができない場合に置かれるものだが、摂政を決める順序も皇位継承順位が優先される。
ここで興味深いのは、選ばれる候補に女性皇族も含まれる点だ。
皇室典範では、「親王及び王」の次に、「皇后」、「皇太后」、「太皇太后」、「内親王及び女王」が続く。現在の女性の皇室メンバーだと、雅子さま、上皇后の美智子さま、そして愛子さまとなる。
「紀子妃殿下や常陸宮家の華子妃殿下、三笠宮家の百合子妃殿下など、皇室の外から皇族に嫁がれた宮妃には摂政の資格がありません。ただし、皇后となった方は別格です」
と、山下さんは解説する。
■もっとも皇后に近いのは紀子さま
こうして見ると、序列が「上」に思える愛子さまが、なぜ紀子さまを訪問する形になったのか。
重要なのは、紀子さまが「皇嗣妃」である点だ。
皇嗣は、皇太子待遇の称号。つまり紀子さまは、皇太子妃と同格の妃で、将来の皇后に一番近い存在ということになる。
愛子さまが紀子さまを訪ねたような「逆転」の訪問には、前例もあるようだ。
山下さんによると、平成の時代にも、当時の天皇ご夫妻の長女の紀宮さま(黒田清子さん)が、皇太子妃だった雅子さまの誕生日に、東宮御所へお祝いのあいさつに訪問したことがあったという。
山下さんは、こう続ける。
「紀宮殿下が皇太子妃殿下を訪問されたのは、次の皇后というお立場の方だからでしょう。今回、愛子内親王殿下が紀子妃殿下を訪問されたのも、それと同じ考えだと思います」
2021年に成人皇族となった愛子さまは9月、皇室に関する重要事項を審議する皇室会議の皇族議員の選挙に際し、初めて「立会人」の務めを果たした。皇室と愛子さまの動向に、国民の関心は高まるばかりだ。
(AERA dot.編集部・永井貴子)