感染者数の減少ペースが鈍り、東京など1都3県の緊急事態宣言がまた延長される延長の背景に、どのような判断があったのか。AERA 2021年3月15日号では東京都医師会の尾崎治夫会長に話を聞いた。



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「3月7日での解除はあり得ませんでした」

 こう話すのは、東京都医師会の尾崎治夫会長だ。7日に解除の期限を迎えていた東京、千葉、神奈川、埼玉の1都3県の緊急事態宣言。菅義偉首相は予定通り解除したい姿勢をにじませ続けてきたが、再延長に追い込まれた。

 尾崎会長が「あり得ない」理由としてまず挙げるのは、新規感染者数が減らないことだ。

 東京都医師会が考えていたシナリオは、「都内の新規感染者数を、まずは1日100人前後まで落とす」というもの。そのうえで、テレワークの実施などは継続しつつ、ワクチン接種まで持っていく筋書きだった。

「3週間ほど前までは、『新規感染者の7日間平均が1週間前の7割に』という都の目標に近い減少スピードになっていたので、このままなら3月初旬には100人前後まで下がるのではと期待していました。ところが実際は減少スピードが鈍化して300人台の日もあるなど高止まりしている。重症者もまだ50人以上。入院患者も、感染の恐れがなくなっても退院できない高齢者の割合が多いこともあり1500人前後となかなか減らない。持病を持っていたり重症化の恐れがあったりするにもかかわらず収容先が決まらない『自宅待機』の方もまだ500人ほどいる。こんな状態で解除するのか、という話です」

■「5月に2千人」試算も

 もう一つ、尾崎会長が懸念するのが解除による「気の緩み」だ。

「ただでさえ3月は学校の修了式や会社の転勤などさまざまな『人の動き』がある時期。そんなタイミングで解除のメッセージが出ることで『2カ月我慢したけど、いよいよ解放されるぞ』という流れになってしまうと、リバウンドが懸念される。現に、5月ごろにまた大きな感染の波が来ると警告するシミュレーションもいくつか出ています」

 政策研究大学院大学の土谷隆教授が示した東京における新規感染者数のシミュレーションも、その一つだ。「緊急事態宣言を3月7日に解除し、その後何も対策をとらない」場合、4月中には1日の新規感染者数が1千人を超え、5月中に2千人超えもあり得るとする衝撃的な内容だ。

 尾崎会長は、緩みに加え、感染力が強いとされる変異株のリスクも指摘する。

 変異株の調査は通常のPCR検査以外にウイルスの遺伝情報を調べる「ゲノム解析」などが必要なこともあり、日本では実態の把握が十分に進んでいない。国は全国の地方衛生研究所に、新規感染者の約5〜10%に変異株の確認検査を実施するよう要請しているが、尾崎会長は「もっと広い範囲で検査し、全体の中での変異株の状況をきちんと把握できるシステムを作るためにも、感染者数がもっと減っていく必要がある」と指摘する。(編集部・小長光哲郎)

※AERA 2021年3月15日号より抜粋