新型コロナウイルスの感染拡大が続き、世論調査やネット上では東京五輪・パラリンピックの中止を求める声が強まっている。AERA 2021年5月24日号では、経済アナリスト・森永卓郎さんに経済の専門家の立場から話してもらった。


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 何が何でも東京五輪・パラリンピックをやろうと国が進めてきた結果、日本の経済はガタガタになり、国民の命が危機にさらされることになりました。

 この間、先進国が行ってきた新型コロナウイルス対策はロックダウン、大規模PCR検査、ワクチン接種──この3本柱です。イギリスは三つを同時に行い、新規陽性者数を激減させることに成功しました。ところが、日本はいずれも行わなかったり後手後手に回ったりしています。

 最大の「罪」は大規模PCR検査を行わなかったことです。例えば、東京都民全員を検査すれば1万人前後の陽性者が出ると考えられます。その人たちを治療したり隔離したりすれば、感染の拡大を止められます。しかし、「1万人」という大量の陽性者が明らかになれば、そんな都市で五輪は開催できなくなるので、大規模PCR検査は実施できないのです。

 なぜ、菅義偉首相は緊急事態宣言に消極的なのか。菅首相は経済損失を恐れているのだと思います。今年1月から3月期の国内総生産(GDP)はマイナス成長で、4月から6月期もほぼ確実。それぞれ2兆から3兆円規模の経済損失が出ると思われます。ただ、昨年4月から6月期は外出自粛などの影響でGDPはマイナス成長となり、11兆円近い経済損失が出ました。菅首相はそれを繰り返したくないのでしょう。しかし、ズルズル宣言を延長することで、被害は大きくなるばかり。これから中小企業はバタバタ倒れていくと思います。「生産性の向上」を掲げる菅政権の成長戦略を見ると、生産性の低い中小企業が倒産するのを狙っている可能性すらある、と思っています。

 五輪は国民の支持があって初めて成功します。国民の70%以上が中止や再延期を望んでいる以上、まずは中止を決めるべきです。それを言えるのは、小池百合子東京都知事です。菅首相は国会であれだけ中止を否定してきましたから、今さら言えない。7月に都議会議員選挙を控えているので、小池都知事が勇気を持って「中止します」と言えば、選挙で都民ファーストの会は大勝します。彼女は最後の最後で「ちゃぶ台返し」をするのではないか、と睨(にら)んでいます。

 いずれにしても、五輪は来年に延期し、まずはコロナを徹底的にたたくのが最も望ましい選択です。無観客で開催しても、テレビでしか見られないのなら日本で行う意味はありません。1年あれば、ワクチンの接種も進み感染を抑え込むことができていると思います。

(編集部・野村昌二)

※AERA 2021年5月24日号