世界的に主流になりつつあるデルタ株(通称インド株)。国内でも今後、アルファ株(通称英国株)から置き換わりが進む可能性が高い。従来株よりも増殖率も感染力も高いため、警戒を強めることが必要だ。AERA 2021年6月28日号から。



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 国内の新型コロナウイルスのほとんどは5月中旬までに「アルファ株(通称英国株)」と呼ばれる変異株に置き換わった。これは従来のウイルスより感染が広がりやすい。そして今、懸念されているのはアルファ株よりさらに感染が広がりやすい、インドで最初に見つかったデルタ株(通称インド株)の増加だ。

 アルファ株が昨年9月に世界で最初に確認された英国では、昨年暮れから感染者が急増し、1日の新規感染者が8万人を超えたこともあった。その後、ロックダウンなど厳格な対策がとられ、ワクチン接種も世界に先駆けて進められたことで、今年4月下旬から5月上旬には1日の新規感染者数が千人台にまで下がった。ところが、成人の半数以上がワクチン接種を2回終えているにもかかわらず、5月下旬以降、また感染者が増加傾向に転じている。一因が、デルタ株だと考えられている。

 英国内では現在、アルファ株がほぼデルタ株に置き換わりつつある。英イングランド公衆衛生庁(PHE)によると、5月31日からの1週間に調べたウイルスのうち詳細な検査が終わったウイルスの74%、簡易検査しか終わっていないものも含めると96%がデルタ株だった。

■増殖率も感染力も高い

 米疾病対策センターによると、遺伝子解析した米国の新型コロナウイルスのうちデルタ株の割合は、5月22日までの2週間では2.7%だったが、次の2週間では9.9%に増加した。

 日本では、6月7日までにデルタ株は105件、アルファ株は1万7038件確認されている。7日までの1週間で確認された件数もデルタ株は17件で、アルファ株2986件に対してまだ少数だ。しかし、厚生労働省によると、空港などの検疫で6月7日までの1週間に見つかったデルタ株は10件で、アルファ株の4件より多く、変異株の中で一番多かった。都内の中学校でデルタ株によるクラスターが発生するなど、渡航歴の無いデルタ株への感染者が複数の自治体で見つかっている。

 国が全都道府県にデルタ株の有無を調べるよう要請したのは6月4日になってからだ。それまでは東京都など一部の自治体が自主的に調べていただけで、その他の自治体のスクリーニング検査方法では、デルタ株は見つけられなかった。

 東京都は17日、健康安全研究センターで独自に実施している変異株スクリーニング結果を基に、6月7日からの1週間に発生した感染のほぼ4分の1はデルタ株だった可能性がある、という推計結果を発表した。

 今後、国内でもデルタ株への置き換わりが進む可能性は高い。アルファ株は、国立感染症研究所(感染研)の分析や海外の研究チームの複数の論文によると、従来株より1.3〜1.7倍感染が広がりやすいとみられている。デルタ株は、PHEの疫学調査などによると、アルファ株に比べて増殖率が高く、アルファ株よりさらに約1.6倍、感染が広がりやすいという。

■入院リスク2.6倍

 入院率や死亡率が上がるなど、重篤度については、その時点での医療体制の逼迫度など環境要因も関係するので評価が難しい。世界保健機関(WHO)はどの変異株についても、重症化させやすさを示す「病原性」が上がっているのか、科学的な確証は得られていないとする。その上で、従来株よりアルファ株は入院・重症化・死亡率の高い可能性があり、デルタ株は入院率が高い可能性があるという。

 PHEが3月29日〜5月20日にウイルスの遺伝子解析をした感染者約3万9千人を分析したところ、デルタ株への感染者はアルファ株感染者に比べ、検査を受けてから2週間以内に入院するリスクが2.6倍高かった。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

※AERA 2021年6月28日号より抜粋