池江璃花子、入江陵介らが出場し、入賞を果たした競泳400メートルメドレーリレー。惜しくもメダル獲得とはならなかったが、さまざまな勝負の行方とともに注目されているのが、「競技終了直後のマスク」問題だ。



 各競技で日本代表選手が出場すると、競技後はテレビ映像が選手のインタビューに切り替わる。満足いく結果だったのか、それとも納得できなかったのか、悲喜こもごもの選手たちの表情が映し出される。だが気になるのは、まだ息が荒い選手たちがマスクをつけてインタビューに臨んでいる姿だ。SNSでは「陸上とか、競泳とか、競技終わってすぐマスクつけるのは酷だな」「競泳という有酸素運動でレース後息上がってるのにインタビューでマスク着けたままで呼吸しんどそうにしてるの見てて辛い」などの声が上がっている。

■プレイブックの「マスク」ルール

 選手を守る意味でもマスクが必要なのはわかるが、競技直後のインタビューでも必要になるのか。五輪ルールを定めた公式プレイブックを確認すると、大会時の衛生管理についてこう記載されている。

「マスクを常時着用してください。ただし、練習中、競技中、就寝時、インタビュー時は除きます」

 また、競技後のミックスゾーンや記者会見においては、

「全てのインタビュアーはマスクを着用してください。アスリートはインタビュー時にマスクを外すことができます」

 つまり、マスクを外してインタビューに応じている選手が規定違反というわけではないのだが、それでも競泳などの一部の競技では、競技後すぐにマスクを着用している姿が多く見受けられる。

 激しい運動をしてすぐにマスクを着けることについて、ナビタスクリニック新宿の院長で内科医の濱木珠恵医師に聞いた。

「特に不織布など予防効果の高いマスクをすることによって、屋外の場合だと熱中症のリスクにはなりますし、屋内でも呼吸が苦しくなってしまうことがあります」

■息が整うのを待ってあげて

 呼吸が苦しくなってしまうような状況でも、選手たちがすぐにマスクをつける必要性は高いのだろうか。濱木医師に感染対策との両立について聞くと、

「感染のリスクを減らすという意味ではつける方がいいと思いますが、本来マスクを着けた方が良いかというのは周りに人がいるかいないかによります。恐らく競技場内は換気が効いていると思いますし、屋外で会話もしないという状況であれば、別にマスクをすぐにつける必要はないです。ただ、例えば競技中終了後にすぐ人が寄ってくるような状況であれば、つける必要があると思います」

 テレビ画面越しには、選手とインタビュアーがどれくらい離れているのか正確な距離はわからない。また、画面には映らないが、選手のすぐ横で海外メディアが自国の選手などにインタビューしているケースもある。プレイブック上では、競技終了後のミックスゾーンにおいて「アスリートとインタビュアーの距離を2メートル以上に保つ」とされている。

 これまでは、選手がメダルを獲得した直後の興奮した様子が五輪中継の定番でもあった。2004年アテネ五輪の競泳平泳ぎで金メダルを取った北島康介によるあの名言「チョー気持ちいい!」も、直後のインタビューを通して出てきた言葉だ。だが、コロナ禍の五輪ではインタビュー前にマスクを渡されることで、そういった風物詩にも変化があらわれるのかもしれない。
 
「苦しくてマスクを着けていられない、という選手ももちろんいると思います。なので、まず息が上がっている人には話しかけない。息が整うのを待って、落ち着いてマスクを着用してから話をするような配慮が必要なのかなと思います」

■五輪だけじゃないマスク問題

 運動直後のマスクは五輪に限っていえることではない。もし自分たちが運動している時はどのように考えたらよいだろうか。この時期であれば、熱中症のリスクが懸念されるが、濱木医師によると最も理想的なのはマスクをしなくても良い環境を整えることだという。

「マスクをして運動をすることで心拍数や呼吸回数が上がり体に負担がかかります。そうすると体感温度が上がったり、血中の二酸化炭素濃度が増えたりするため、熱中症のリスクが高くなってしまう可能性があります。理想的なのは、人がいない場所や換気の行き届いた場所で他の人との距離をとる、など周りの環境を整えてマスクをしなくてすむようにすること」

 だが、現実的には難しい場合もあるだろう。そういった時は「水分補給などでできる限りの熱中症対策をするしかない」と濱木医師は言う。

 感染の拡大が続く中、人が集まる場所でマスクを着用することは感染対策として重要だ。しかし、マスクによる熱中症などのリスクを回避するためには、なるべく人の集まるところに行かないなどの基本的な対策にも立ち返りたい。(文/AERA dot.編集部・大谷奈央)