政府の新型コロナ対策分科会会長の尾身茂氏が理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)で、コロナ対策などで給付された300億円以上の補助金で収益を大幅に増やす一方で、有価証券の運用も130億円増加させたことが、AERAdot.の取材でわかった。JCHOではコロナ患者用の病床を用意し多額の補助金を受けながらも、患者を十分に受け入れていなかった実態がわかっており、厚生労働省などから批判があがっている。

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「JCHOは適切に補助金を運用していないのではないか」

 いま医療関係者の間でこんな疑念が生じている。どういうことか。その原因は、JCHOがホームページで公表している財務諸表を見るとわかる。

 2020年度の財務諸表によると、20年度の当期純利益は約200億円で前年度より約168億円も増加していた。補助金等収益を見ると、こちらは約324億円で、前年度より311億円も増加していた。補助金等の明細を見ると、交付された補助金は126件(交付額は約368億円)あり、そのうちコロナ関連と思われる補助金は56件あった。56件の交付額は約351億円、うち約310億円が収益計上されていた。

 同時に、有価証券での運用額は685億円で、前年度より130億円増加していた。当期純利益は200億円で、現金及び預金は約24億円しか増加していない。

 これ以前にも、JCHOはコロナ患者を受け入れるために多額の補助金をもらいながらコロナ専用の病床数や受け入れ患者が少ないことが批判の的になっていた。AERAdot.では9月1日に配信した「【独自】コロナ病床30〜50%に空き、尾身茂氏が理事長の公的病院 132億円の補助金『ぼったくり』」の記事で、JCHO傘下の都内病院で、コロナ専用病床の多くが空床になっていることを特報している。

 これに関して、尾身氏は18日に自身のインスタグラムで「#ねえねえ尾身さん」と題したライブ放送を行い、視聴者からの疑問に答える形でこう釈明した。

「補助金のぼったくりの話ですけども、看護師さんなんかを確保するのに難しいという理由はあったにせよ、実際に確保した病床よりも、実際に入れた患者が少なかったという事実はある。この事実に関しての補助金の扱い方については、国や自治体が方針を示すと思いますから、その方針に従って適切な行動をとりたいと思っています」

◆厚労省幹部が「由々しき問題」

 今回、新たに問題になっているのは、コロナ関連で多額の補助金を受け取り、法人全体の収益をあげながら、その収益が有価証券の運用に使われているということだ。この実態は政府関係者の間でも問題視され始めている。厚労省の幹部はこういう。

「コロナ関連の補助金が大部分を占めるJCHOの収益が、結果的に有価証券購入の原資として間接的に還流されているとみています。補助金収入がきちんとコロナ病床や患者医療に還元されず、有価証券などとして内部留保されていることは厚労省としても由々しき問題と考えています。尾身氏の経営判断を尊重する必要はあるのですが、自身があれだけ『医療ひっ迫』を主張する中で、このような経営は受け入れられないのではないでしょうか」

 法人が自身の資金をどう運用しようとも、適切なプロセスを踏んでいれば問題はない。しかし、コロナ関連で受け取った補助金によって大幅に収益をあげて、それを間接的にでも投資に回していたとしたら、批判や疑問の声も出るだろう。

 JCHO職員によると、補助金収入の大幅増と有価証券の取得増は「無関係ではない」という。他の民間医療機関と同様にJCHOもコロナの影響などにより病院経営は収益の柱となる医業収益が減となるなど厳しい環境下にある。こうした中で有価証券残高を130億円増やすことができたのは、「補助金収入が大きく寄与した」(前出の職員)という。

◆尾身氏からの回答は?

 JCHO理事長の尾身氏はどう答えるか。尾身氏宛に、補助金で収益をあげながら多くの資金を有価証券で運用するのが適切と思うか、補助金を投資で使っている事実はないかなど書面で見解を質した。

 すると、広報担当からメールで「個別にいただいたご質問等にはお答えすることはいたしかねます」と回答が来た。

 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏はこう指摘する。

「尾身氏はJCHOの理事長として国民に事実を説明する必要があるでしょう。この問題は、JCHOでコロナ病床を増やし、患者もしっかりと受け入れるという覚悟も問われていると思います」

 補助金は国民の税金が原資だ。尾身氏の説明責任が問われている。
 
(編集部・吉崎洋夫)