やれ「分配」だ「減税」だ、選挙まっただなかで各政党や政治家たちは声高に訴える。でもコロナで困窮する人たちは何を思い、何を望んでいるのか。声を聞いた。

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 10月の土曜日の午後、東京・池袋の公園に数百人の行列ができている。折りたたみ椅子持参でスポーツ紙を読む高齢者に交ざって、大きな袋を肩に掛け、スマホをいじりながら並ぶ若者の姿もチラホラ見られる。彼らが待っているのは無料で配られる弁当だ。

「今日はお弁当だけ。先週は弁当のほかにパンとか果物も配られたけど」と説明してくれたのは40代男性。都内の飲食店でアルバイトをしているが、コロナ禍でシフトが3分の1以下になり、2カ月前から家賃が払えずネットカフェや路上で生活し始めた。

「今はランチタイムの3時間だけ、週に3回だけだけど、まだ俺には仕事があるからいいよ。バイトの学生さんはみんなクビさ。少しでもお金を浮かすために、あちこちの炊き出しに並んでる」

 男性の手帳には細かい文字で炊き出しスケジュールが記されていた。

「ここの弁当が一番おいしい。でも早めに来て並ばなきゃならないけどね」。この日は弁当が配られる2時間前から並んだという。

 行列の前方にはオシャレな服を着た若い女性も並んでいた。都内の大学に通う福島出身の女性はコロナ禍で居酒屋のバイトがなくなり、ポスティングのアルバイトで生活費を稼いでいると話す。

「旅館で仲居をしていた母の仕事がなくなってしまったのに、仕送りを増やしてもらうわけにはいかないから、何とか自分で働かないと。でもなかなかバイトも見つからない。節約のため、ここでお弁当を配る日は毎回並ぶようにしているんです。初めて並んだときはちょっと怖かったけど、もう慣れたから全然平気」

 午後4時過ぎ、弁当が配られ始めると列は一気に進んでいく。この女性は弁当を受け取るや否や、猛ダッシュで再び列の最後尾に並んだ。記者も慌てて追いかける。

「弁当が余れば2回目の人にもくれるから」という。しかし、残念ながらこの日は途中で品切れ。

「早くこんな生活から脱出したい。コロナが早く収まって、またバイトに復帰できるのが一番の望みかな。選挙で給付金や補助金を出すって言ってるけど、どうせまだずっと先のことでしょ。今が大変なんだから、今助けてほしいのに」

 もらった弁当をその場で食べ始めている50代男性もいた。

「今日初めての食事でね。給付金? 欲しいね。消費税の減税もありがたいけど、俺らはもともとお金使わないから。ありがたみは少ないね。使えるほどお金があればいいけどね」

 夏に派遣切りにあい、新たに見つけた清掃の仕事も不定期で、貯金も尽きた。

「生活保護も考えるけど、家族に連絡がいくのが嫌で踏み切れない。家賃が払えなくなったら俺もホームレスになるのかもなって思う。俺たちみたいなコロナの被害者を助けてくれる政治家がいるなら、絶対投票するけどね。期待はできないね」

 コロナ困窮者の数は、たぶん想像以上に多い。選挙で地元を奔走する候補者たちに、彼らの声は聞こえているのか。(本誌・鈴木裕也)

※週刊朝日  2021年11月5日号