ここ数年、注目を集めてきた秋篠宮さまの誕生日会見。57歳を迎えた今年、SNSの活用への発言が話題を呼んでいる。だが皇室の研究者である森暢平・成城大文芸学部教授は、革新的に見える秋篠宮さまの発言を読み解くと「皇室のガラパゴス化が伝わってくる」と話す。

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「そういう可能性も、もちろんあり得る」

 皇族がSNSを個人のアカウントで発信する可能性について質問された秋篠宮さまは、こう答えた。

 英王室をはじめ海外の王室では、王族がインスタグラムなどSNSの個人のアカウントを持ち、投稿することも珍しくない。

 秋篠宮さまも、「今後の検討課題」としながらも、「皇室の発信は間接的でない方がストレートに伝わる」「皇族の誰かが個人のアカウントで発信しているかは知らない。私はやらない」と一部、肯定的ともとれる姿勢をみせた。

 しかし、かつて新聞社で宮内庁担当記者を務めた森暢平・成城大文芸学部教授は、違和感がぬぐえなかった。

「秋篠宮さまも記者も、『発信』という言葉しか用いなかった点です。本来、SNSは相互コミュニケーションの手段であって、一方的な発信の場ではないはずです」

 先駆的な王室として知られる英王室が公式フェイスブックを開設したのは2010年。14年には、ツイッターと同じ水色のスーツに身をつつんだ当時88歳のエリザベス女王が、公式アカウントからツイッターでつぶやいている。

 英王室メンバーのチャールズ国王とカミラ王妃、長男のウィリアム王子とキャサリン妃のインスタグラムは、共感を示す「いいね!」マークも押せるし、投稿へのコメントも書き込める。家族との時間や華やかなシーンなど私生活を映した動画も投稿され、国民との絆の構築に貢献しているのは、他の王室も同じだ。

「秋篠宮さまが皇室への誹謗(ひぼう)中傷対策の一貫、広報強化としてのSNSに触れたこと自体、前向きな考え」

 広報は英語でパブリック・リレーションズ(Public Relations)と表す。つまり、人々との「関係」や「交渉」を意味する、と森教授は言う。海外王室は、国民の反応を予想して動画や写真の投稿を行い、相手とのコミュニケーションを楽しんでいるのだという。

 先ほども触れたが、秋篠宮さまは皇室の課題として「皇室の情報発信も、正確な情報をタイムリーに出していくということが必要」とあげたうえで、広報を強化の手段として皇室のSNSの活用に触れた。さらに、世の中が「スマホ、スマートフォンを使って調べる時代になっている」と説明した上で、「SNSにたどり着いて、さらに詳しく知りたい人は、本体であるWEBサイトの方を見る(中略)そういう構図を宮内庁も考えているのではないか」

 と説明した。

 秋篠宮さまは、正しい情報を国民に届けるツールとして「SNSの活用」を口にしたのだ。確かに、天皇陛下はもちろん、高齢の皇族方では提案できない内容だ。

「皇族のスポークスマン役」を自認し、皇室と国民との橋渡し役であった故・寛仁親王に代わるように、秋篠宮さまが天皇や他の皇族方が口にしづらい事柄について問題提起をしている部分もある。  

 皇室は、ある種、世間を隔絶した空間を保持した世界でもある。宮内庁という役所の管轄にありながらも、天皇家の私生活部分は「奥(おく)」と呼ばれる侍従や女官が支え、その中身は表に出ることはない。また、古来のしきたりを守りながら皇室の祭祀に従事する掌典や内掌典の存在など、うかがい知ることのない神秘性を持つのが皇室でもある。

 それだけに、世俗性を感じるテクノロジーの活用は、遅い傾向がある。

 宮内庁がホームページ(HP)を開設したのが1999年。当時は、ニュースとして注目されたほどだ。そして四半世紀前に作られたHPは、ほとんど変わることなくいまに至る。

「しかし、このSNS全盛の時代です。皇室メンバーが外出すればスマホで写真に撮られ、あっという間に情報が拡散します。皇室がどこまで世俗的な社会と距離を置き、神秘性を保つことができるのか、疑問です」

 森教授は、そう指摘した上で、こうも言う。

「あえて厳しい言い方をするならば、会見の言葉から国民との相互コミュニケーションによって信頼を得るという視点が欠けている印象を受けました。これまでの宮内庁のHPと同じ感覚で、『正しい情報』をSNSで細切れかつ一方的に発信したところで、国民の耳に届くかどうかは疑問が残ります」

 そもそも秋篠宮さま自身も、「わたしはやらない」と発言したように、宮内庁長官をはじめとする幹部の中に、YouTubeなどの動画サイトやSNSで情報を発信したことがある人間がどれほど存在するのだろうか。

 秋篠宮さまの「SNSへの肯定」は確かに画期的なことだ。

 ただし、フェイスブックもインスタグラムもツイッターも、それぞれ得意不得意な分野がある。

「何を目的として発信するかを明確にしないまま、十把一からげにSNSとくくっている点は危うさを感じます。SNSを、ご自分たちが正しいと考える情報を『発信』するツールとして捉えている点にも、ズレを感じます。たしかに、お堀の中が昔から変わらないことに良い面もあります。しかし、SNSについてもガラパゴスのままでは、その活用方法を誤る可能性もあるのではないでしょうか」

 森教授は、そう危惧する。

 世情が不安定な時ほど、皇室への関心は高まる。かつてないほど国民の視線が注がれている。

 秋篠宮さまもその可能性に触れたように、若い皇族方が匿名によるSNSで発信をしている、というのはよく耳にする話だ。

 次世代の皇族方は、SNS社会にどう向き合い、国民との信頼を築いていくのだろうか。(AERA dot.編集部・永井貴子)