4月から学習院大学4年生になる天皇、皇后両陛下の長女・愛子さま。コロナ禍でのオンライン授業を経て、この春からはキャンパスライフが始まる。専攻は日本語日本文学科だが、そもそもなぜ日本文学を選ばれたのだろうか? 愛子さまがご誕生のころから皇室番組に携わる放送作家のつげのり子さんに素朴な疑問を投げかけると、母娘の絆が見えてきた。

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 昨年3月17日の成年を迎えての記者会見で、愛子さまは文学部日本語日本文学科に在籍し、2年生からは「日本語日本文学系」を選択されているとお話しされていた。関心のある分野に関しての記者からの質問に、愛子さまはこう答えられている。

「関心のある分野は、いまだ模索中といったところではございますが、以前から興味を持っておりました、『源氏物語』などの平安時代の文学作品、物語作品を始め、古典文学には、引き続き関心を持っております」

 そのようにお話しされる愛子さまのお父さまである天皇陛下は、同じ文学部を卒業されている。専攻は史学科で、卒業後は、学習院大学大学院人文科学研究科博士前期課程に進学。

 さかのぼると高校時代には、いわゆる帝王学の一環として『古事記』『日本書紀』といった皇室史に関わる日本神話、『万葉集』『平家物語』など日本の古典文学から比較神話学なども学ばれており、愛子さまの大学での専攻の選択や興味、関心は父譲りの感もある。

「愛子さまが古典文学に興味を持たれた背景には、幅広く日本の歴史を学ばれてきた天皇陛下から、折に触れ歴史のお話を耳にされてきたこともあると思うのですが、実は雅子さまの影響もあったと思います」(つげさん)

 と話す放送作家のつげのり子さんは、雅子さまのご学友から聞いた秘話を思い出すという。

「3年前に『素顔の雅子さま』(河出書房新社)という書籍を出したときに、雅子さまと小さいころから交流のあるご学友の方に取材をしました。そのとき話してくれたのが、雅子さまのお母さまである小和田優美子さんの教えです。『海外に出たときに、日本のことを知らないと、真の日本人とは言えないのではないか。ただ英語ができるだけで海外に行ったところで、日本の根本についての素養を身につけていないと、根なし草になってしまう。歴史や文化、礼儀作法などを学び、日本人としての矜持を胸に秘めて海外に出てこそ、国際人になることができる』というお考えを優美子さんはお持ちだったそうです。日本の美意識や伝統文化を知ることがなによりも大切であることを雅子さまにも教え込まれたのでしょう」(つげさん)

 外交官の妻として、モスクワやニューヨークでの子育て生活を経験した母・優美子さんの揺るぎない国際人としての在り方は、しっかりと雅子さまにも受け継がれた。

「雅子さまはハーバード大学時代に日本文化クラブを設立されて、『さくらさくら』などの日本の曲をピアノで演奏したり、お茶を振る舞ったりしていらっしゃったそうです。日本文化を学生たちに伝える活動は、まさに日本人としてのアイデンティティを確立するものであり、国際人としての未来を切り開くものでした。お母さまから受け継いだ、そうした教えを雅子さまは愛子さまの子育てにも生かしていらしたのではないでしょうか」(つげさん)

 国際人になるというと、まずは英語などの語学の勉強と単純に考えてしまいがちだ。もちろん言語も大切だが、真の国際人になるためには日本を知ることは必要不可欠なのかもしれない。脈々と受け継がれた教えは、自然と愛子さまは日本語、日本文学を専攻し、中でも平安文学に興味をもたれるのもうなずけてくる。

「愛子さまの日本への探究心は深く、学習院初等科のころから藤原道長について歴史研究レポートをまとめていらっしゃいます。学習院女子高等科のときも「平安時代に見る猫や犬、人との関わり」というレポートを書かれ、一貫して平安時代に興味を持っていらっしゃるようです。天皇ご一家は実際に猫や犬を飼っておられるので、そうした動物との関わりを平安時代の切り口で分析なさるというのは、愛子さまらしい示唆に富んでいますよね。猫、犬、平安時代、とご自身が好きなものを結びつけたこともオリジナリティがあって素晴らしいと感じます。大学4年生で卒論を書かれると思いますが、平安文学作品に関するテーマになるのではないでしょうか。卒論は公表はされないでしょうが、読んでみたいですよね」(つげさん)                          

 興味のあることを深掘りする姿はとてもすがすがしい。春本番、愛子さまの本格的なキャンパスライフには注目が集まることだろう。(AERAdot. 編集部・太田裕子)

つげのり子/放送作家、ノンフィクション作家。2001年の愛子さまご誕生以来皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。