楽天は今シーズン序盤戦は苦しんだものの、夏場以降に調子を上げ、なんとかクラマックスシリーズ(CS)への切符を掴もうとしている。
とはいえ、チームは近年フリーエージェント(FA)の選手などを積極的に補強しており、ギリギリAクラスというのは決して満足できる結果ではないだろう。これからオフに向けベテラン選手などを中心に“大きな動き”に出るのではないかという声も出ている……。
シーズン中盤からはチームに勢いは出てきた。9月25日の日本ハム戦(エスコンフィールド)での勝利で、4月以来5カ月ぶりとなるCS圏内に浮上。10月2日終了時点では4位となっているが、2位ソフトバンクと1ゲーム差、3位ロッテとは0.5ゲーム差とCS出場の可能性を残している。
「石井一久監督は経験と実績の力を重視しておりベテラン選手の効果的な起用が目立つ。シーズン通じて野手では浅村栄斗、投手では田中将大、岸孝之、則本昂大という柱を大事にした。勝負所の秋口になってより多くのベテラン選手の起用が目立つのもそのため」(楽天OB)
3位に浮上した日本ハム戦では、先発した田中が7回1失点と試合を作った。そして試合を決めたのは9回に代打出場し、今季初安打となる決勝タイムリーを放った銀次。2013年の日本一を知るベテラン2人の活躍はうれしくもあるが、シーズン全体を通したパフォーマンスについては評価が難しい。
「今季中の(日米通算)200勝が確実と言われた田中は安定度を欠く投球が目立った。銀次に至っては開幕から二軍暮らしが続き9月22日にやっと今季初昇格。来季の契約を考えた場合、少しでも結果を出すことが求められる立場でもあり必死さは伝わってきた」(楽天担当記者)
今年で35歳となる“マー君”は楽天復帰3年目を迎えた。昨季年俸9億円から大幅ダウンの4億7500万円での1年契約だが、成績を見る限り金額に見合った活躍はできてない。銀次も東北・岩手出身のプロ18年目35歳、地元で絶大な人気を誇るものの世代交代の波に飲み込まれている。
「楽天は大型補強を繰り返したが結果が伴わない。親会社の経営不振が囁かれる中で球団経営の圧縮も必要になるかもしれない。田中も含めたベテラン選手に対する評価、処遇に関してはかなりシビアなオフになると見られている」(スポーツマーケティング会社関係者)
「石井監督はCSをめぐる勝負所なのでベテランの経験に賭けている部分はある。しかしシーズンを通じては20代の選手を多く起用して経験を積ませている。確実に柱となれるベテランを除いては、今オフは戦力外の選手が増えることが予想される」(在京球団編成担当)
特に野手に関しては辰己涼介、小郷裕哉、小深田大翔、村林一輝、伊藤裕季也、太田光など20代の選手が今はスタメンの中心となっている。着実な世代交代が進んでいる一方、銀次のように、二軍でのプレーが長くなっているかつての主力選手も多い。
そして、日本ハムから加入2年目を迎えた西川遥輝も実績がありながら苦しんでいる選手の1人だ。
「西川は期待外れのまま終わりそうな予感もする。31歳は中堅と言える年齢でまだやれるはずだが、かつてのような輝きをコンスタントに発揮できない。気持ちの波が激しいと言われ続けてきたように安心して継続起用できない。今のままでは一軍の戦力になるのは難しい」(楽天担当記者)
日本ハム時代には盗塁王4回、ベストナイン2回、ゴールデングラブ賞4回を獲得。2021年オフに日本ハムから事実上の戦力外ともいえるノンテンダーとなり、楽天入団となった。実績十分で年齢的にもまだ若いことから、大きな期待がされていたが、入団1年目となった昨季の序盤を除いてはほぼ戦力となれていない。
今季は二軍ではここまで63試合に出場して、打率.369、5本塁打、29打点、8盗塁、OPS1.069と圧倒的な成績を残しているが、一軍では35試合で打率が1割台。現在も二軍でのプレーが続いている(成績は10月2日終了時点)。
「二軍ではレベルの違う飛び抜けたプレーで結果を残すこともあるが長続きしない。気持ちに左右される部分は以前と変化がない。楽天移籍で精神面を含め、さらなる成長も期待されたが難しかったようだ。現状では来季は構想外となってしまうかもしれない」(スポーツマーケティング会社関係者)
「西川以外にも、昨季最多安打を獲得した33歳の島内宏明、34歳の岡島豪郎も年齢的な伸び代を考えれば微妙な立場。29歳の茂木栄五郎も二軍暮らしが続いている。これからオフまで楽天はかなりの激震に見舞われる可能性は大きいのではないか」(在京球団編成担当)
10月2日には第1次戦力外通告期間が始まった。ヤクルトは同日に7人の戦力外選手を発表。さらに今年セ・リーグを18年ぶりに制した阪神でも2016年の新人王・高山俊、北條史也の中堅2人が来季は構想外であることが報道されている。楽天はまだCSへ向けての戦いが続いているが、チームは現在“過渡期”にあるため、中堅、そしてベテラン選手については厳しい決断が下されるかもしれない。第1次戦力外通告期間は13日まで。楽天がどういった選択をするかに注目が集まる。