去就が注目されていたオリックスの山崎

 今オフに「FA移籍の目玉」として去就が注目されていたオリックス・山崎福也。残留を含めて6球団の争奪戦を制したのが、日本ハムだった。

 スポーツ紙デスクは「意外でした。獲得に名乗りを上げた他球団の中で、日本ハムが最も移籍の可能性が低いと思っていましたから」と驚きを隠せない。

「山崎福は埼玉県出身ということもあり、在京球団に移籍するとみられていました。実際に巨人、ヤクルト、DeNAが獲得に動いている。打撃センスも抜群なので投手が打席に立つセ・リーグというのも有力視された理由の一つです。条件面で他球団を圧倒していると言われていたのがソフトバンクでした。一方で、日本ハムはソフトバンクのように圧倒できる資金力があるわけではなく、パ・リーグで、在京球団でもない。縁が薄い球団だと思われていただけに今回の決断はビックリしました」

■黄金時代を築いたソフトバンク

 かつてFA補強の代名詞と言えば、巨人だった。FA制度導入の初年度となった1993年オフに落合博満を獲得したのを皮切りに、川口和久、広澤克己、清原和博、江藤智、工藤公康、野口茂樹、小笠原道大、村田修一、杉内俊哉、山口俊、丸佳浩と各球団の主力選手たちを獲得してきた。生え抜きの選手たちを中心に黄金時代を築いたソフトバンクも、近年は外部補強に積極的だ。2021年オフに8年ぶりのFA補強で又吉克樹の獲得に成功。昨オフは他球団と争奪戦の末に近藤健介、嶺井博希を獲得した。

オリックスの優勝パレードで、バスから手を振る山崎

 他球団の編成担当はこう語る。

「FA移籍する選手が決断するうえで重視するのが、契約年数と年俸です。ソフトバンクには条件面で他球団は勝てないですし、巨人は現役引退後のケアを含めてしっかりしている。両球団が選手たちから人気だったのは必然と言えます。ただ、近年は実力が抜きん出た選手はFAかポスティングシステムでメジャーに挑戦するのが主流となっている。超一流と呼ばれる選手は米国に行くので、国内移籍でFAの需要が高い選手は少しランクが落ちる。彼らが重視するのは成長できる環境、起用法です。今は球団の垣根を越えて選手同士が情報交換する時代ですから。選手間で人気が高いのがオリックス、日本ハムです」

 一昔前だったら考えられなかっただろう。オリックス、日本ハムは主力選手がFAで流出するチームの代表格だった。2018年オフに西武の主砲・浅村栄斗(現楽天)がFA宣言した際はソフトバンク、楽天、オリックスが獲得に乗り出す争奪戦に。オリックスは地元・大阪出身のスター選手がのどから手が出るほど欲しかったが、交渉の機会がないまま断りの連絡が入った。

 在阪のスポーツ紙記者は「資金面で他球団に見劣りするわけでなく、練習施設も充実していたが当時は万年Bクラス。関西では阪神の人気が圧倒的なのでメディアの扱いも小さかった」と振り返る。

在京球団に移籍するとみられていたという

 チームのイメージが一新したのは、中嶋聡監督が就任した21年シーズン以降だろう。同年からリーグ3連覇。山本由伸、宮城大弥、宇田川優希、山崎颯一郎、若月健矢、紅林弘太郎、杉本裕太郎、中川圭太ら生え抜きの選手たちが躍動し、ベンチは常に活気づいていた。他球団の選手たちはこの雰囲気が魅力的に映ったのだろう。昨オフに球界を代表する捕手・森友哉が西武からFA移籍。巨人も獲得を検討していたことが報じられたが、森は「捕手出身の中嶋監督が指揮するチームでプレーすることが自分のステップアップになると感じたので入団を決めました」とオリックスと相思相愛だった。今オフは大阪出身の天才打者・西川龍馬が広島からFAで加入が決まった。

 日本ハムも今オフの「ストーブリーグの勝ち組」と言えるだろう。ポスティングシステムで上沢直之のメジャー移籍が承認されたが、FA権を行使すれば複数球団による争奪戦が必至だった左腕エース・加藤貴之が大型契約で残留を決断。巨人、ソフトバンクなどとの争奪戦を制し、山崎福の獲得にも成功した。

■楽しんでいる雰囲気

 在京球団でプレーする中堅選手は、「伸び伸びプレーできる環境かどうかが(移籍を決断するうえで)重要ですね。ピリピリした雰囲気で首脳陣の顔色をうかがって野球したくないですから。日本ハム、ロッテは他球団から移籍してきた選手が活躍するイメージがあります。日本ハムは昨オフにソフトバンクへFA移籍した近藤選手の人的補償で加入した田中正義投手、中日から加入したアリエル・マルティネス選手、郡司裕也選手が活躍している。チーム全体で野球を楽しんでいる雰囲気があります。逆に移籍して力を発揮できないまま引退する選手が多い球団は気になりますね。提示された条件面が他球団より良くても、移籍したいとは感じないです」と語る。

 選手のFA移籍する球団が「多様化の時代」に入っている。パ・リーグの各球団が地方都市に根づき、地域密着で人気球団となっていることも大きく影響しているだろう。ただ、FA移籍で即戦力のタレントを獲得したことが必ずしもプラスアルファにならないところが野球の奥深いところだ。今年38年ぶりの日本一に輝いた阪神はドラフトで獲得した選手の育成を重視する方針にシフトし、18年オフにオリックスからFA宣言した西勇輝を獲得以降は、今オフを含めてFA補強に動いていない。

「FAで獲得する選手が活躍する時期は長くても3、4年。それ以降は下り坂になる。山本(オリックス)や今永昇太(DeNA)のような絶対的エースならともかく、少し力が落ちる選手を獲得するなら生え抜きの選手を起用し続けて一本立ちさせたほうが、チーム力が高いレベルで長期間持続する。FA補強に慎重な阪神のやり方は理にかなっていると思います」(在阪テレビ関係者)

 巨人、ヤクルト、DeNAなどは山崎福の獲得に失敗したが、生え抜きの若手から今年の村上頌樹(阪神)のように大活躍する救世主が現れるかもしれない。FA補強が成功だったかの答え合わせは、数年先の話になるだろう。

(今川秀悟)