結成33周年を迎えた博多華丸・大吉

 2月10日、福岡PayPayドームで『博多華丸・大吉 presents 華大どんたく supportedバイ 洋服の青山』が行われた。これはコンビ結成33周年を迎えた博多華丸・大吉が、地元である福岡と、自分たちを支えてくれたすべての人への愛を込めて、人脈をフルに生かした大型イベントだった。彼らは「愛と人脈の総力戦」とうたっていた。

 ナインティナイン、中川家、かまいたち、見取り図、令和ロマンをはじめとして、主に吉本興業の芸人が集結して、ネタを演じたり、大喜利に挑んだり、歌を披露したりした。開会宣言を務めたのは明石家さんまだった。

 バカリズム、原口あきまさ、どぶろっくなど、吉本興業以外の事務所の芸人も参戦していた。朝から夜まで丸一日にわたって行われたこのイベントは、もはやライブというよりもフェスと呼ぶべき内容。改めて吉本興業の底力を見せつける巨大イベントだった。

■立て続けに大型イベントが

 このライブに限らず、近年、芸人が出演する大規模イベントが立て続けに行われている。1月14日には横浜アリーナで『男・出川哲朗 還暦祭り in 横浜アリーナ』という出川の還暦記念イベントが行われた。2月9・10日には日本武道館で、バナナマンのコントに登場するキャラクターであるフォークデュオ・赤えんぴつが出演する『赤えんぴつ in 武道館』が開催された。

東京ドームでイベントを開催したのはオードリー

 さらに、2月18日には東京ドームにて『オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム』というイベントが行われる。これはオードリーのラジオ番組『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)のイベントである。すでに追加発売を含めたチケット5万枚が完売しており、芸人のライブとしては史上最多の5万人を動員するビッグイベントとなる。

■原則お笑いは大きい会場には向かない

 一般的な感覚では、人気のある芸人が大きい会場でイベントをやるのは当たり前だと思うかもしれない。だが、そうではない。なぜなら、原則として「お笑いは大きすぎる会場には向かない」とされているからだ。

 数千人から数万人の規模の大会場で漫才やコントを演じると、音が反響して聞き取りにくくなるし、細かい表情や動きも見づらくなる。その状況では純粋にネタを楽しむのが難しい。

 そのため、お笑いライブが行われる会場は、数十人から数百人程度のキャパシティであることが多い。最大でも1000人前後が限界である。それはお笑い業界の人間やお笑いファンであれば誰でも知っていることだ。

 そうであるにもかかわらず、最近になって大規模なお笑いイベントが増えているのはなぜなのか。ここにはいくつかの理由が考えられる。

 最大の理由は、新型コロナウイルスの流行が落ち着いて、人々のライブへの需要が高まってきたことだ。マスク生活から解放されて、どこか外に出て思い切り笑って楽しみたい。大型お笑いイベントはそういう人たちの需要に応えているのではないか。

 もともとお笑いライブというのは、音楽のライブに比べるとややマイナーな文化だった。小さいライブハウスなどで行われることが多く、情報を集めるのも難しいため、どうしても熱心なファン以外には敷居が高いところがあった。

 でも、大きい会場のお笑いイベントであれば、気軽に参加しやすい。テレビで見たことがあるような有名な芸人も出演するということであれば、参加へのハードルはぐっと下がる。

 これは、音楽フェスと音楽ライブの関係に近いような気がする。フジロックやサマソニなどの大規模な音楽フェスは、ディープな音楽好きばかりが足を運ぶわけではない。もっとライトな感覚で、イベントの雰囲気を楽しむために行くという人も多い。

■ライト層需要にマッチ

 そもそもお笑いというのは、生で見て楽しむのが本来のあり方だ。テレビやYouTubeなどの映像だけでは伝わり切らない面白さがあるのがお笑いライブの魅力なのだ。

 しかし、お笑いライブにはキャパシティの限界があり、小さめの会場で行われることが多いため、初心者が情報を調べて気軽に足を運ぶことが難しい。大規模なお笑いイベントは、そういうライト層の需要に見事に応えているのではないか。

 大型お笑いイベントは、もともとライブで楽しむものだったお笑いという分野で、新たな楽しみ方を提供することに成功した。音楽フェスに参加するような感覚で、気楽に笑って楽しんで盛り上がれる。これこそがポストコロナ時代にふさわしいエンターテインメントの形なのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)