一般参賀での天皇ご一家。愛子さまはアンカーでお手振り(撮影/写真映像部・松永卓也)

 霧雨のような細かい雨が降りしきった23日、皇居で行われた天皇誕生日の一般参賀に参加した。記者は一般参賀に行くのは初めてだ。

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 はりきって午前6時に起床、午前7時20分に二重橋に到着した。だが、既に200〜300人が並んでいるという混みよう。それから3時間、ただひたすら立ったまま、寒さと雨に震えながら、宮殿に入れるのを待ち続けた。

■雨に濡れて待つ男性

 ふと見ると、記者の近くに傘も差さず、レインコートも着ないで、雨に濡れて立っている男性がいた。耳たぶから水滴がしたたり落ちる。男性に話しかけた。

「秋田県から来ました。昨日、飛行機で羽田に到着し、板橋のホテルに1泊しました。参賀が終わったら、きょう夕方の便で秋田に帰ります」

 男性は36歳、独身だという。一般参賀に参加するためだけにやって来た。どうして、秋田県から遠路やってきたのか。

「ナマで玉音を聞き、龍顔を拝みたかった。私は自営業なので、家族に『ごめん、どうしも行かせてくれ』と頼み込みました。明日から仕事がありますので、きょう帰るんです」

■手荷物検査で「ひと口飲んでください」

 午前9時頃、手荷物検査があり、女性担当官からカバンを開けるように言われた。カバンの中に入っていたペットボトルのほうじ茶。「ひと口飲んでください」と言われて、飲んだ。厳重にチェックしているようだ。

 その後、宮内庁の職員を先頭に、警察官約10人が横並びし、人々はその後について宮殿に進んだ。警察官がマイクで「きょうはご覧のように大勢の方で混み合っています。危ないですので、お互いに譲り合ってゆっくりとお進みください」「この辺りは水で滑りやすくなっておりますのでご注意ください」などと注意を呼びかけるなか、歩いていった。

天皇皇后、両陛下のお手振りを見守る愛子さま(撮影/上田耕司)

 到着したところにあったのは、マスコミ報道でよく見る宮殿・長和殿のベランダ。運良く、最前列のド真ん中の位置になった。すぐ目の前にベランダがある。

 10時を少し過ぎたころ、アナウンスが入った。

「参賀のみなさまにご案内します。天皇皇后両陛下、秋篠宮皇嗣同妃両殿下、愛子内親王殿下、および佳子内親王殿下は10時20分頃、宮殿中央にお出ましの予定です。なお、大声を発することはお控え願います」

 会場の興奮は最高潮に達する。

■いよいよ天皇、皇后両陛下がお出まし

 そしてついに時は来た。ベランダに現れた天皇陛下、皇后陛下、愛子さま、秋篠宮ご夫妻、佳子さまの6人。

 愛子さまは白い服装で白い帽子をかぶり、イアリングもネックレスも白。青い服装に青い帽子と、ブルーでまとめてきた佳子さまとは対照的だった。

タイミングを待ってお手振りをする愛子さま(撮影/上田耕司)

 陛下や雅子さまは先にお手振りを始めたが、愛子さまはその様子をじっと見つめている。お手振りには、まず天皇が始めてから他の皇族が続くという順序があるが、愛子さまはタイミングを上手にうかがいながら、アンカーとしてお手振りを始めた。初々しさと同時に、会場との一体感を感じた瞬間だった。

 天皇陛下はお言葉をこう述べられた。

「冷たい雨や厳しい寒さの中、誕生日にこのように来ていただき、みなさんから祝ってもらえることをありがたく思います。先月、発生した能登半島地震によって亡くなられた方々に改めて哀悼の意を評するとともに、ご遺族と被災された方々に心からお見舞いをお伝えします。この冬も、大雪や厳しい寒さで苦労された方も多いことと思います。みなさん一人一人にとって穏やかな春となるよう祈っております。みなさんの健康と幸せを祈ります」

■思う気持ちと思われる気持ち

  お言葉が終わると、周囲からは「天皇陛下バンザーイ」という声が何度も沸き起こった。

 冒頭の秋田から来た男性は、こう話した。

「うれしかったですね。陛下のお言葉の時には、涙がこぼれそうになりました。陛下のお言葉は短い中にもその時の情勢とか国民を思う気持ちが込められている。思う気持ちと思われる気持ちというのが、短い瞬間でしたけれど感じ取れました。テレビで見るよりも、ここに来て、より近くでお言葉を聞いたほうが、ナマの玉音が伝わってきた」

秋田から来た男性。雨に濡れて待っていた(撮影/上田耕司)

■愛子さまに「パワーをいただきました」

 帰り道、赤いレインコートを着た40代の女性に話を聞いた。

「愛子さまが見えました。大人だなと思いました。これから頑張ってくれる人だから。成人になって、赤十字社で働くし、次の天皇になるというのもまだ全然、ダメになったわけではないと思いたいです。きょうは愛子さまから気のパワーをいただきました。女性天皇になってほしい気持ちはあります」

 ベビーカーに3歳の男児と2歳の女児を連れてきた30代の夫婦は、千葉県から来たという。

「せっかく休日でお休みいただいたので、子供も連れて来て、一緒に見せてやりたいと思いました」と夫が言えば、妻は「間近で見れてホントに良かった。陛下のお言葉で『みなさん一人一人穏やかな春となるよう』というところが良かったです。これから家族で買い物に行ってきまーす」

■譲り合って傘を下ろした

 日の丸の国旗を手に持っていた女性は、都内から来た。

「私の位置からはギリギリしかベランダが見えなかったんですが、皇族の方々が現れると、ほとんどのみなさんが傘を下ろし、他の人にも見えるようにしていた。お互いに譲り合って、陛下の前に立った。陛下のお言葉には震災のご心配をされたりして、ご配慮がありましたね。皇族みなさんの姿を見たら、何だかすがすがしい気持ちになりました。雅子さまは優雅でしたし、愛子さまには成年皇族としてご活躍が期待できますね」

 フィリピンからやって来た28歳と30歳の女性2人組は、3歳の子どものベビーカーを押していた。

「フィリピンにはエンペラーがいないから一度見たかったし、子どもにも見せたかった。フィリピンではバースデーをすごく盛大にお祝いするんです。きょうは幸せな気持ちになりました」

「エンペラーが見たい」と一般参賀したフィリピン人の女性たち(撮影/上田耕司)

 皇室ジャーナリストの神田秀一氏は、愛子さま人気の高まりも感じたという。

 愛子さまは3月に学習院大学を卒業し、4月から日本赤十字社の嘱託職員となる。

■「愛子さまなら」が国民に浸透

「記者会見などさまざまな場のご発言などを見ても、愛子さまは極めて優れた見識をお示しになっています。もし女性天皇が誕生したとしても、『愛子さまなら務められる』という考えが、国民に浸透しはじめている現れじゃないですかね」(神田氏)  

 雅子さまと愛子さまの、母娘仲のよさを感じさせる光景はよく見る。2月9日には、外国(ケニア)から要人を招いた昼食会に初めて出席した。愛子さまは隣に座ったケニアの女性大臣にスワヒリ語で「こんにちは」と話しかけ、英語でも談笑なさったという。

「雅子さまは困った時や体調が悪い時、愛子さまはずいぶん、サポートされたように思います。雅子さまとしては愛子さまによって助けられたという気持ちがあると思います。外国から賓客が来た時とかも、愛子さまは陰になり日向になって、いろいろと力を尽くしているようです」(神田氏)

 愛子さまは日本赤十字社に就職後も、皇室行事はこなされる予定だ。これまではイギリス、オランダを訪れたことがあるが、ルト大統領は「3カ国目はケニアに」と招待したという。愛子さまは海外での皇室にも人気が出始めているようだ。(AERAdot.編集部 上田耕司)

雨の中、早朝から一般参賀に並んだ人々(撮影/上田耕司)
最前列ど真ん中から。ベランダに勢ぞろいした天皇陛下、皇后陛下、愛子さま、秋篠宮さま、紀子さま、佳子さま(撮影/上田耕司)
お手振りのタイミングを待つ愛子さま(撮影/上田耕司)
ベランダに姿を見せた秋篠宮さま、紀子さま、佳子さま(撮影/上田耕司)
佳子さまの表情は明るい(撮影/上田耕司)
愛子さまに続き、最後にベランダを去る佳子さま(撮影/上田耕司)
1回目の一般参賀で宮殿ベランダ前に集まった人々(撮影/上田耕司)