今季が3年契約の最終年となる中日・立浪監督

 中日・立浪和義監督は今季が3年契約の最終年だ。球団史上初の2年連続最下位に沈んだことから風当たりは強いが、チームを改革しようという強い意思が伝わってくる。阿部寿樹(楽天)、京田陽太(DeNA)らレギュラークラスの選手たちをトレードで放出し、チームの再建を図ってきたのも批判覚悟だ。今季は得点力不足解消へ、中田翔、中島宏之、上林誠知ら実績のある選手たちを獲得。投手陣はリーグトップレベルの陣容だけに、得点力が上がればガラッと変わる可能性を秘めている。

■後継者は誰に

 中日を取材する記者は、立浪監督の変化を感じるという。

「自ら手取り足取り教えるのではなく、一歩引いてコーチに託すことが増えたように感じます。頭の回転が速い人なので、2年間指揮を執って学んだことが多いと思います。選手が結果を出した時は名指しで褒めたり、すぐに結果が出なくても練習で取り組む方向性が間違っていなければ評価したりする。問題は二遊間ですね。ここにハマる選手が出てくれば、センターラインが締まって安定した戦いができると思います」

 低迷気が長く続くチームに変化の兆しがみられるが、今年も下位に沈むようだと監督の交代が現実味を帯びる。昨オフに監督が代わったのが3球団。巨人・阿部慎之助監督、ソフトバンク・小久保裕紀監督、楽天・今江敏晃監督が新たに就任した。中日は立浪監督の長期政権がかなわなかった場合、後継者は誰になるだろうか。

理論派で選手に寄り添う指導方針に定評がある和田1軍打撃コーチ

 スポーツ紙デスクは「内部昇格で考えられるのは和田一浩1軍打撃コーチ。理論派で選手に寄り添う指導方針に定評があります。DeNAで伸び悩み、現役ドラフトで移籍した和製大砲・細川成也のブレークに一役買いました。和田コーチは現役時代に打力を生かして外野手にコンバートされましたが、捕手出身なので野球をよく知っている。侍ジャパンの井端弘和監督も有力候補ですが、2026年開催予定のWBCまで監督を務めるなら候補のリストから外れる。現場で評価が高いのは山本昌氏です。矢野燿大前監督の希望で阪神の臨時投手コーチを務めた時期がありましたが、個々の選手を熱心に調べて投球フォーム、変化球について助言するなど好評でした。15年限りで現役引退後、古巣の中日から常勤のコーチ、監督として声が掛かっていないのが不思議です。指導者の適性がないとは思えないですが……」と首をかしげる。

侍ジャパンの井端監督も有力候補だという

■50歳までプレー

 山本氏の野球人生は異端だ。日本記録の実働29年間、50歳までプレーして通算219勝をマークしたが、立浪監督のように高卒1年目に新人王を獲得したエリート街道とは対照的な道を歩んでいる。日大藤沢高からドラフト5位で入団し、4年間未勝利。戦力構想から外れても不思議ではなかったが、1988年に米国留学してスクリューを習得したことが大きな転機になる。同年のシーズン途中に帰国して5勝をマークすると、翌89年から先発ローテーションに定着。最多勝を3度獲得するなど球界を代表する投手に駆け上がった。

阪神の臨時投手コーチを務めた山本昌

 スター選手になっても親しみやすい性格で知られた。名古屋のテレビ関係者は証言する。

「昌さんは話好き。世代を超えて人が集まってくるんですよね。ある若手が『他の先輩は緊張するけど、昌さんは話しやすいんですよね』と明かしていましたが、同じように感じた選手は多いと思います。主力になると寄せ付けないオーラを放つ選手が多いのですが、昌さんは違う。これは自身の野球人生が影響しているかもしれません。戦力外寸前で頭角を現しているので、なかなか芽が出ない選手たちの気持ちが理解できる。『おれは運がいいんだよ』と常々話していました。変なプライドがないから、他の投手の良いところを取り入れようとベテランになっても貪欲でした。チームは得点力不足なので野手出身の監督が求められているかもしれませんが、昌さんが監督に就任してどのようなチームをつくるのか興味があります」

■「野球IQ」の高さ

 山本氏、井端監督、和田打撃コーチの共通点は落合博満監督(当時)の下で主力選手として活躍したことだ。落合監督は2004〜11年に指揮を執り、8年間全ての年でAクラス入り。リーグ優勝4度、07年に日本一に輝いた。落合中日の強さの源は「野球IQ」の高さだった。個々の選手が状況に応じた役割を果たし、勝利に徹する。当時中日でプレーした選手は振り返る。

「大量得点を取れる打線ではなかったけど、投手力が良かった。この戦力でどうしたら勝てるかと考えた時、少ない得点で逃げ切る野球を確立するしかない。二遊間で鉄壁の守備を誇ったアライバ(荒木雅博と井端)は打撃でも球数を投げさせて粘って四球で出塁したり、ノリさん(中村紀洋)も右打ちで走者を進めたり。勝つためのベクトルが一つに向いていました」

山本氏、井端監督、和田打撃コーチは落合博満監督(当時)の下で主力選手として活躍した

 現在のチームはどうだろうか。打線は得点力不足だが、柳裕也、高橋宏斗、小笠原慎之介、大野雄大、涌井秀章、梅津晃大、根尾昂ら力のある先発投手を擁し、救援陣も充実している顔ぶれは落合政権の布陣とスタイルが重なるように感じるが……。

 「うーん、僕はちょっと違うと思いますね。生命線の二遊間が固まっていないし。上林もシーズンを通じて活躍できるとは思えない。立浪監督の就任前からの問題ですが、野球の質が落ちているのが気になります。守備、走塁で信じられないミスが多い。技術的な部分を磨くのはもちろん、個々の選手の意識もまだまだ低い。単純な戦力の比較だけでなく、プレーの精度を高めなければ上位にいくのは難しい」(前出の選手)

■CS圏内の3位以内に入れるか

 今季のセ・リーグは、球団史上初の連覇を狙う阪神が圧倒的優位という声が多い。ただ2位以降は順位予想が割れる。もちろん中日が目指すのはリーグ優勝だが、現実的な目標を考えると、CS圏内の3位以内に入れるかがポイントになるだろう。

「優勝までいかなくても、Aクラスに入れば立浪監督が続投の可能性が出てくる。でも結果を残せないようだと、監督交代になるでしょう。山本昌はシーズンを通じてコーチ、監督の経験がないので未知数に思えますが、立浪監督も落合元監督もNPBで指導経験がなく監督に就任しましたし、その点は障壁にならないと思いますよ。他球団ですが、指導歴がなかった新井貴浩監督(広島)も就任1年目の昨年に2位と躍進していますしね。知名度が高いし、明るいキャラクターでチームをガラッと変えるには適任の人材です」(元中日関係者)

 今年の中日のスローガンは「勇龍突進 Always be a challenger!」。勇敢に突き進み、常に挑戦者であれという意味が込められている。立浪監督は集大成のシーズンでチームを変革して、上昇気流に乗せられるか。

(今川秀悟)