(写真はイメージ/GettyImages)

 若い頃より集中力が続かないことを、年のせいにしている人もいるのではないだろうか? 順天堂大学医学部教授・小林弘幸さんによると、若い頃よりも年を重ねたほうが集中力は高まるそうだ。小林さんの著書『自律神経の名医が教える集中力スイッチ』(アスコム刊)から、意外と知らない集中力と年齢の事実を紹介する。

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 ハーバード大学とBoston Attention and Learning Laboratoryの研究チームが2015年に発表した研究結果によると、集中力は年を重ねるごとに高まっていき、43歳前後でピークを迎えるとのこと。あくまでこれは一説であり、唯一無二の結論ではありませんが、総じて子どもよりも大人のほうが集中力が高いことは間違いありません。

■高齢でも集中力が高い人の特徴

 年をとるにつれ、変わっていくものは多々あります。見た目的にも肌や髪の毛、体形などの変化がありますが、記憶力、判断力や理解力といった脳の「認知機能」もまた、加齢にともない低下する傾向にあります。物忘れが多くなったり、若いころにはできていたことができなくなったりすることで、つい落ち込んでしまう方も少なくないことでしょう。

 もちろん、集中力も年齢とともに低下する傾向にあります。前述しましたが、一般的に集中力のピークは43歳前後といわれており、それを超えると徐々に低下していきます。筋力の衰えは血流にも影響するため、脳の血流が低くなると集中力も低下してしまうのです。とはいえ、脳の働きの低下には個人差があります。日常生活のなかで、いわば「つねに頭を使っている人」は、認知機能や集中力を維持できる傾向にあります。

■定年後も仕事をしている人は集中力が高い

 定年後もなんらかのかたちで仕事を続けている人は、認知機能や集中力の低下を防げます。仕事をすることは、高い集中力、判断力、思考力を必要とするので、つねに脳を活性化させることで、脳の働きを維持することができるのです。

 またその場合は、楽しいと思えたり意欲をかきたてられたりすることのほうが、集中力が高まります。もちろん、仕事ではなく趣味でも可能です。その際は、長く続けている趣味を楽しむことももちろんすばらしいですが、新しい趣味や習いごとに挑戦することは、脳がより活性化されるのでおすすめです。楽器の演奏や編み物など、手先を使って集中できることも、より認知機能や集中力の低下を防ぐことができます。

■新しい物事を楽しむことが集中力を高める

 高齢者になっても、新しい人や物事と出合い、それらを楽しむことは、脳の活性化と集中力の向上につながります。私の周りでも、70歳を過ぎても元気にゴルフを楽しんでいる知人も多く、私もよく一緒に回らせてもらっています。人と会って体を動かすことは脳の活性化にもつながりますし、お天気がよければ日光をたっぷり浴びることができ、セロトニンが分泌されて自律神経も整います。

 話題のドラマや映画、本や漫画に触れることも、意識的に努めてみてください。若い人の感性に触れることで新しい刺激を受けることができますし、楽しいことに没頭することで集中力も高められます。積極的に外に出て、人に会ったり新しい物事に出合うことで、集中力を維持し、心身ともに健康な日々を過ごすことができるのです。