レッドソックス・吉田正尚(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今年の野球界の話題といえば、メジャー史上最高額の契約でドジャース入りした大谷翔平、同じく大型契約でドジャースと契約と結んだ山本由伸、そして日本時代以上の投球を見せ、現地でも話題となっているカブスの今永昇太など米国で活躍する日本人選手が中心となっている。(以下、文中の成績はすべて現地5月12日終了時点)

 その傍らメジャー2年目にして早くもを“移籍話”で注目されているのがレッドソックスの吉田正尚だ。昨季は140試合の出場で打率.289(537打数155安打)、15本塁打、72打点とルーキーイヤーとしては上々の成績を残した。

「大谷のような華々しさはないが自身の役割は果たしている。コンスタントに結果を出すので使いやすい選手。チームの中心とは言えないまでも大事な戦力となっている」(地元新聞社レッドソックス・ビートライター/番記者)

 だが、シーズンオフの1月にはトレードの可能性が浮上。実際には開幕前に移籍は起きなかったが、チームは過渡期を迎えているだけに夏のトレード期限(今年は7月30日)までに移籍もあるという声もいまだに多い。今季は開幕から主にDH(指名打者)として24試合に出場して打率.275(80打数22安打)、2本塁打、11打点という成績を残していたが、4月28日の試合で左手を痛めIL(負傷者リスト)入り。5月10日にはアレックス・コーラ監督が復帰まで数週間かかる見込みであることを明かした。

 チームは今季、ここまでア・リーグ東地区で首位オリオールズから5.5ゲーム差の3位。2022年からは2年連続で地区最下位となっており、再建中といっていい状況だろう。そんな中、吉田が昨季守ったレフトを任されている新加入のタイラー・オニールの他、ジャレン・デュラン、ウィルヤー・アブレイユと外野手の陣容は固まってきている。吉田はDHでありながら今季の年俸が1800万ドル(約28億円)と彼らよりはるかに高く、それもトレードを後押しする要因にもなりそうだ。

「守備が決して上手くない外野手にしては高額な契約。年俸などを考えれば、現在の打撃成績では物足りない。チームが人件費縮小を目指していると言われる中、移籍候補に挙がるのは仕方ない」(地元新聞社レッドソックス・ビートライター/番記者)

 とはいえ、堅実な打撃はメジャーでも評価は高い。チームがトレード期限前までに優勝を狙える位置にいなければ、獲得に手を挙げる球団は少なくないという。

「今季の年俸は球団内で3位だが見合った活躍ができるか。大崩れしない打者なので欲しい球団は複数あるはず。状況次第でトレード期限前にプレーオフ進出を狙う球団へ移籍する可能性はあるでしょう」(スポーツマネージメント会社関係者)

 また、吉田以上に“トレード要員”として価値を上げそうな日本人選手がいる。それがブルージェイズの菊池雄星だ。今季がメジャー6年目となる菊池は、白星こそ2勝(3敗)にとどまっているが、8試合に登板して防御率2.64、47回2/3を投げて、46三振と素晴らしい投球を見せている。

 チームはレッドソックスとは違い、ここ数年はウラジーミル・ゲレロJr.一塁手、ボー・ビシェット内野手ら若手の主軸が出てきたことに加え、積極的な補強を敢行している。だが、世界一を目指すタイミングが来ているものの、結果がついてこない。今季も今のところ18勝22敗でリーグ最下位と苦しんでいる。
 
「チームは大型補強をしているが勝てない状況が続いている。また菊池は今オフにFAとなるため、他球団の有望株との交換に動く可能性は否定できない」(在米スポーツライター)

 菊池は今季がブルージェイズと結んだ3年総額3600万ドル(約56億1000万円)の契約最終年。かつ後半戦に向けて“勝ちモード”に入ったチームに重宝される先発投手だけに、吉田以上にトレードの価値は高まりそうな予感も漂っている。

「(このままの活躍を続け)オフにFAとなれば他球団に移籍する可能性もあるので、今季中の放出はあり得る。菊池の評価は高いので好条件でオファーを出す球団は多いはず」(MLBアジア地区担当スカウト)

 チームは今季、世界一を目指して球団史上最高となる2億2500万ドル(約350億円)を年俸に注ぎ込んだ。しかし結果に繋がらなければ、来季以降の戦いに向け舵を切ることも十分に考えられるだろう。

「(ブルージェイズは)大谷翔平獲得にも本格参戦したようにお金を使う気持ちはある。しかし現状の戦いぶりでは勝てる可能性は低く、方向転換するのではという声が多い」(在米スポーツライター)

 吉田と菊池が所属する球団はともにア・リーグ東地区に属し、同じ地区ではオリオールズとヤンキースが走りつつある。また、ワイルドカードでのプレーオフ進出も現状では厳しそうなため、移籍期限までに何か動きがあるようにも思える。

「(もしトレードとなれば)2人の実力が正当に評価された優勝請負人としての移籍になる。大谷を含めた他の選手もそうだが、日本人選手が本当の意味で必要とされるようになったということ」(MLBアジア地区担当スカウト)

 日本では移籍に関してはネガティブな考えもいまだにある。しかしメジャーでは「トレード=必要な戦力」として見られることがほとんど。吉田と菊池が仮にトレードとなった場合は現地でも評価が高いという証明にもなるだろう。