スーパーセーブで幾度となくチームを救った小久保玲央ブライアン(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 無事に、そして見事に、U-23日本代表がAFC U-23アジアカップでパリ五輪出場切符を勝ち取り、優勝にも輝いた。今後、パリ五輪出場のメンバー18人の枠の争いに注目が集まるが、その狭き門を経てフランスの地での戦いを終えた後には、A代表での活躍を是非とも期待したい。その能力と資格を持つ選手は多くいる。

 まずはGK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)だ。2001年1月23日生まれの23歳。ナイジェリア人の父を持ち、柏レイソルの下部組織育ちで、ユース所属時にポルトガルの名門に引き抜かれた。これまでトップ出場はなく、U-23やBチームでの出場のみだったが、今回のU-23アジアカップで安定感のあるセービングだけでなく、決勝戦アディショナルタイムでのPKストップを筆頭にチームを救うビッグセーブを連発した。A代表のアジアカップで不安定なプレーが目立った2学年下の鈴木彩艶とは対照的に、大舞台での勝負強さを存分に披露した形だ。ベンフィカとの現契約は2025年6月末までとなっているが、今夏の移籍話も浮上している。身長193センチに長い手足というだけでなく、GKとしての総合力の高さはすでに証明しており、パリ五輪後にクラブレベルでも欧州リーグでレギュラーを張ることができれば、A代表招集へ支障はなくなる。

 アジアの舞台で試合毎に成長を遂げたDF高井幸大(川崎フロンターレ)も、パリ五輪後のA代表入りを期待したい逸材だ。2004年9月4日生まれの19歳。川崎の下部組織で育ち、身長192センチの高さに加えて、確かな足元の技術と配球力、そして現代サッカーに必要とされるCBからの持ち上がりの推進力も持ち合わせる。まだ経験不足は否めないが、今後もJリーグで試合を重ねながらパリ五輪の舞台でも活躍できれば、是非ともA代表のCB陣に加えたい。現状、冨安健洋と板倉滉がレギュラー格で、町田浩樹が今季の欧州リーグで評価を上げているが、冨安をアーセナルで出場中の左サイドバックとして計算すれば、高井をCBに抜擢する「枠」も生まれる。伸び盛りの人材を抜擢し、成長スピードを加速させる育成法はA代表においても有効なはずだ。

 満を持してのA代表招集が期待されるのが、MF松木玖生(FC東京)だ。2003年4月30日生まれの21歳。青森山田高校時代に1年時から選手権で活躍して高校サッカー界のキングとして全国優勝を果たした男。強靭なフィジカルを武器とし、それ故に当時から「将来性」に関しては疑問符を投げかける声もあったが、プロ入り後も順調にプレー時間を確保しながら結果を出し、今季からはキャプテンマークを巻いて奮闘。ピッチ全体をカバーする運動力と左足の決定力を持ち合わせており、U-23アジアカップでは国際舞台で不可欠なインテンシティの高さと強いメンタリティを改めて見せつけた。同じく中盤の軸としてパリ行きが確実で、すでにA代表招集済みの藤田譲瑠チマとともに、五輪後のA代表定着を期待したい。森保ジャパンに新たな刺激を与えられるはずだ。

 アタッカー陣では、鈴木唯人(ブレンビー)のA代表再招集からの定着を期待したい。2001年10月25日生まれの22歳。市立船橋高校から2020年に清水エスパルスに加入すると、高卒1年目からリーグ戦30試合に出場。力強いドリブルと左右両足からの強烈なシュートで注目を集め、国内組限定だった2022年1月の親善試合ウズベキスタン戦で追加招集された(試合は新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止)。その後、やや伸び悩みの感があったが、自身2度目の海外挑戦となったデンマークの地で今年に入って定位置を掴むとともに大きく躍動。個人能力の高さが際立つインパクトのあるゴールを量産している。その活躍で、欧州内での注目度と移籍金が一気にアップしたと報道されており、五輪で活躍すればさらに市場価値は上がる。現在の森保ジャパンには2列目のアタッカー陣は最激戦区になっているが、その争いに加われる力は間違いなくある。

 過去を振り帰っても、「五輪経由A代表入り」は日本代表強化の常套ルート。フランスの地で味わうものが「歓喜」であればいい。例え「悔しさ」であったとしても、その後のサッカー人生に間違いなく生かすことができる。今夏のパリ五輪を経て、大きく進化してA代表に新風を吹かせる選手の登場に、大いに期待したい。(文・三和直樹)