現在はドジャースでプレーする大谷翔平(ロイター/アフロ)

 日本人プレイヤーがメジャーリーグでプレーすることが一般化したことで、現地でのプレーのトレンドはもちろん、使用される言葉なども多く入ってくるようになった。

 その中の一つに「プロスペクト」というワードがある。これは若手の有望株を指す言葉だが、メジャーリーグではそのプロスペクトをランク付けするという文化がある。メジャーリーグの公式サイト『MLB.com』も毎シーズン、リーグ全体、チーム別、ポジション別などのランキングを発表しているが、果たして上位にいた選手は評判通り活躍しているのだろうか……。日本人に馴染みのある選手を中心に絞って振り返ると“新たな発見”もあって面白い。

 このプロスペクトランキングで2018年に堂々トップとなっていたのがドジャースの大谷翔平(当時エンゼルス)だ。まだ“二刀流”としての活躍に懐疑論もあった中だったが、ポテンシャルは世界から集まるスター候補の中でも際立っていた。

 当時の評価としては「メジャーリーグ以外の球団に所属する選手としては世界ナンバーワン」とし、25歳ルールに該当していなければ「2億ドル(311億4000万円)以上の契約になっていた可能性があっただろう」としている。

 スカウトは打者としての潜在能力の高さは認めているものの、当時は投手としての評価の方がはるかに上であることが紹介文からは伺いしれる。打撃については「打率3割は難しそうだが、 打率.270以上、30本塁打以上をマークする力は持っている」という査定だった。その後は2023年に本塁打王となり、ドジャースに移籍した今季は三冠王を狙えるほどのパフォーマンスを見せるなど、打者としては良い意味で予想を裏切るパフォーマンスを見せているのはご存じの通りだ。

 なお、この年は大谷に続く2位が昨季40本塁打、70盗塁を達成し、ナ・リーグMVPとなったロナルド・アクーニャJr.外野手(ブレーブス)、3位が2021年シーズンに48本塁打、111打点を記録し、大谷とMVP争いをしたヴラディミール・ゲレーロJr.一塁手(ブルージェイズ)とトップ3は見事に“出世”している。なかなか評判どおりの結果が残せない選手が多い中で、トップ3がそろってリーグを代表するプレイヤーとなったことは凄いことだ。

 公式サイトと同じくプロスペクトランキングを発表している米野球専門誌『ベースボール・アメリカ』では1位アクーニャ、2位大谷、3位ゲレーロ。順番は入れ替わっているが、この年の若手ではこの3人が突出した評価を受けていたということだろう。

 ちなみに2018年からはすでに6年が経っており、ランキングトップ100の中にはNPBでプレーしている選手も複数存在している。

 この年に27位にランクインしていたのは昨シーズン巨人でプレーしたルイス・ブリンソン外野手(当時マーリンズ)。身体能力を生かしたプレーは当時から評価が高く、日本でも走攻守での活躍が期待されたが、打撃、守備ともに粗さが目立ち、1シーズンで帰国となっている。他にも2021年シーズンから2年間DeNAでプレーした中継ぎのフェルナンド・ロメロ(当時ツインズ)は68位にランク。日本では2シーズン通算で防御率4.01とブリンソン同様に結果を残すことはできなかった。

 今季から来日した選手では西武のアルバート・アブレイユ(当時ヤンキース)が74位にランクしており、ポテンシャルの高さは折り紙付き。現在はチームの抑えを任されており、ここまで18試合の登板で6ホールド、8セーブ、防御率2.20とまずまずの成績を残している。まだ年齢も28歳。メジャーでも認められたポテンシャルが花開き“大化け”も期待できるだろう。

 また、47位につけていたアンソニー・アルフォード外野手(当時ブルージェイズ)は2022年から2シーズン韓国プロ野球でプレー。近年はメジャーで伸び悩んでいる元プロスペクトが早い時期に日本などアジアのリーグでキャリアを立て直すという流れが見られる。

 さらに昔を振り返ると、2012年のランキングは面白い。

 2位がブライス・ハーパー外野手(当時ナショナルズ、現フィリーズ)、3位がマイク・トラウト外野手(エンゼルス)とともにリーグを代表するスターが並ぶが、その年の1位はなんとNPBのソフトバンクでプレーしたマット・ムーア投手(当時レイズ、現エンゼルス)だった。

 ムーア自身も早い時期から頭角を現し3シーズン目の2013年に17勝を挙げるなど、評判に違わぬ能力を見せていたが、その後は伸び悩んだ。とはいえ、将来的に殿堂入りの可能性のある2人を抑えての1位。まさか将来的に日本でプレーするとは当時は思っていなかっただろう。

 同じ年には昨年DeNAでプレーしたトレバー・バウアー(当時ダイヤモンドバックス)が9位にランクインしている。

 今シーズンのランキングでは1位のジャクソン・ホリデー内野手(オリオールズ)、2位のポール・スキーンズ投手(パイレーツ)がすでにメジャーデビューを果たして現地で大きな話題となったが、彼らは期待通り活躍できるのか。数年後に改めて今年のランキングを見返してみると“新たな発見”があるかもしれない。