就任2年目の今季、早々と“休養”となった西武・松井稼頭央監督

 西武・松井稼頭央監督の“電撃休養”が球界を騒がせている。昨年の就任から結果が出ていなかったとはいえ、あまりにも早い時期での決断にファンも驚きを隠せない状況だ。

 そんな中、今季は西武以外にもこれから“大低迷”する危険性のあるチームもあり、他球団の指揮官にとっても松井監督の実質的な解任は明日は我が身の状況でもある。交流戦の戦い方次第では開幕から苦しむチームに何らかの動きがあるかもしれないという。

 西武は5月26日の試合終了後に松井監督が休養し、渡辺久信GMが監督代行を兼務することを発表した。松井監督が休養となったタイミングでチームは15勝30敗、勝率.333の最下位と大苦戦しており、交流戦が始まる前に球団は手を打った。

「球団内では少し前から(松井監督の休養を)検討していたらしいが、オフの補強を含めカズオには気の毒な部分が多い。西武のスタープレイヤーだっただけに、もう少し何とかならなかったのかと思った」(西武OB)

 二軍の指揮官も務めた松井監督は満を持して昨シーズンから一軍の監督に就任した。だが、主砲・山川穂高(現ソフトバンク)が女性問題で謹慎になるなど、戦力的に厳しい状況で65勝77敗1分けの5位に終わった。

 そして昨シーズンのオフにはその山川がFAでライバルのソフトバンクに移籍。何とかその穴を埋めようと長打が魅力の新外国人アギラー、コルデロの2人を獲得したがここまで期待外れの状態。打線の迫力不足は明らかで、今井達也、ルーキーの武内夏暉など投手陣の奮起はあったが、5月中旬から8連敗を喫するなどチームを立て直すことができなかった。

「(西武は)交流戦で巻き返さないと取り返しがつかないと判断したのだろう。パ・リーグはソフトバンクの強さは目立つが他球団の力は拮抗している。シーズンはまだ4カ月残されており、CS(クライマックスシリーズ)に進出できるAクラス入りの可能性はゼロではない」(西武担当記者)

 渡辺監督代行は2008年から13年まで監督を務め、08年にはチームを日本一に導いた経験もある。西武黄金時代の主力投手であり“勝ち方”は知っている。ここから巻き返すためには適任だったと言ってもいいだろう。

 早い段階で西武は監督の休養という道を選んだが、今シーズン不調の他球団にもそれが連鎖する可能性も指摘されている。

「交流戦の結果次第では西武と同じように監督の休養や交代が起こってもおかしくない。苦戦が続く楽天・今江敏晃、ヤクルト・高津臣吾、DeNA・三浦大輔の3監督は正念場になるはず」(在京テレビ局スポーツ担当)

 28日からスタートした交流戦は大きく明暗が分かれることで知られている。3人の監督たちもここで躓くようだと球団が“見切る”という判断をする可能性もあるという。

 楽天は西武の陰に隠れているが苦しい戦いが続いている。5月21日のソフトバンク戦で「0-21」、翌日の同カードも「0-12」と壊滅的な敗戦も喫した。

「ソフトバンクの強さを考えても2日間で33点差はプロとして恥ずかしい。同球団の三木谷浩史オーナーは現場介入を行うことでも有名で、今後、希望を持てなければ動く可能性はある」(楽天担当記者)

 セ・リーグでは2021、22年に連覇(21年は日本一)を果たしたヤクルトも厳しい。投打で故障者が続出、調子が上がらない中心選手も多くリーグ最下位に低迷している。

「今季も“ヤ戦病院”と揶揄されベストメンバーが揃わず、伸び悩んでいる選手も多い。不運もあるのだろうが、総合的に判断して高津監督のマネージメント能力にも疑問が出てきている」(ヤクルト担当記者)

 1998年以来リーグ優勝から遠ざかっているDeNAも同様だ。本拠地は常に多くのファンで埋まる人気球団になったが、勝てない状況にファンのストレスも溜まっている。

「投手出身の三浦監督だが打線頼みの試合を続けている。ゲームプランが無いに等しい今の戦い方では先も見えている。勝利にこだわるのなら残された時間は少ないだろう」(DeNA担当者)

 今江監督は今季からの就任だが、何が起こってもおかしくないと思わせるのは、松井監督と西武との関係性もある。松井監督はプロ入り後からプレーした西武を離れ、メジャーや楽天でプレーした時期もあったが現役最後のシーズンは西武に復帰するなど、球団が大事にしてきた人物でもあった。引退後も二軍監督などを任され指導者としての“英才教育”を経て、昨シーズンから指揮官を任されたばかりだった。

「現役引退後すぐに巨人の監督となった高橋由伸氏は、チームの成績が振るわないこともあったがスター選手だったこともあり3シーズンの任期を全うした。(2年契約の)松井監督も同じような扱いになると思われたが西武はタブーに足を踏み入れた形。他球団も後に続く可能性は否定できない」(在京テレビ局スポーツ担当)

 近年はSNSでファンの声がダイレクトに選手、監督、そして球団にも届く時代となった。今季はシーズン開幕後から苦戦が続いていたことで松井監督や球団にも辛辣なコメントも多く寄せられ、それも西武の決断を早めたのかもしれない。これから今回挙げた3チームも同じような状況に陥ることも考えられ、監督を守るという意味でも、“休養”という形は増えていきそうな予感もする。