ロッテの佐々木朗希

 日本人投手はメジャーで人気が高い。ダルビッシュ有(パドレス)、田中将大(楽天)、大谷翔平(エンゼルス)、前田健太(タイガース)らが実績を築き、今年から海の向こうに渡った山本由伸(ドジャース)、今永昇太(カブス)も活躍している。

 想像を超えるパフォーマンスで、評判が高騰しているのが今永だ。13試合登板で7勝2敗、防御率2.96(前試合までは1.89)。平均球速は140キロ台後半とメジャーの平均値を下回るが、奪三振率9.23と高い。その秘密は手元で伸びる直球だ。平均回転数2500回転はメジャートップクラス。キレの良い快速球とスプリットのコンビネーションで三振の山を築いている。

 山本、今永は昨季、それぞれパ・リーグ、セ・リーグで最多奪三振のタイトルを獲得している。三振を奪う能力はメジャーで重視される指標の一つだ。

■佐々木のフォークは打てない

 その点でいえば、NPBで最も三振奪取能力が高い投手は佐々木朗希(ロッテ)であることは間違いない。昨季は91イニングを投げて135奪三振。数では山本の169に及ばないものの、奪三振率13.35は、山本の9.27を軽く上回る。今季は59回2/3を投げて70奪三振。長いイニングを投げるためにメリハリをつけて投げている印象があるが、それでも奪三振率10.56は12球団の先発陣でトップレベルだ。直球の平均球速は155キロを超え、フォークは140キロ台。

 対戦した打者は、

「直球とフォークの見極めが難しい。直球だと思ったら球が消えて。あんなフォーク打てないですよ。制球もまとまっているので攻略の糸口がつかめない。早くメジャーに行って欲しいです」

 と苦笑いを浮かべる。

 昨年12月にメジャーの監督や編成担当、選手の代理人が集まったウインター・ミーティングでは、エンゼルスをFAとなった大谷の去就が注目されていたが、佐々木も話題にのぼったという。

「複数のメジャー球団関係者に『佐々木はいつメジャーに来るんだ?』と聞かれました。高卒3年目に史上最年少で完全試合を達成したニュースは、米国でも話題になりました。大谷を超える素材と言われ、能力面で言えば今すぐ通用する。先発陣が手薄な球団が多いので注目度は非常に高いです」(ウインター・ミーティングを取材した記者)

 ただ、この高評価に陰りが見え始めているという。故障の多さは以前から懸念されていたが、今季も上半身のコンディション不良で2度の戦線離脱。交流戦中の6月13日に登録抹消され、1軍復帰のメドが経っていない。9試合登板で5勝2敗、防御率1.96。投球回数は59回2/3で、復帰が遅れれば自身初となる規定投球回数のクリアは厳しい状況となっている。

■「もっと欲しい投手を見つけた」

 メジャーの代理人は、

「米国で最も重視されるのは登板数とイニング数です。故障や不調で離脱すると先発ローテーションの編成に影響する。能力が高くても、シーズンを通じて稼働できない投手は評価が落ちます。佐々木はNPBで一度も規定投球回数に到達したシーズンがない。今年も登板後にまた抹消された。この点は大きな不安要素です」

 とシビアな評価を口にし、こう続けた。

「関係者に話を聞くと、評価が上がっているのが宮城大弥(オリックス)です。同じ左腕の今永がメジャーで活躍していることも影響しています。個人的には今永より、宮城の方が総合力で上だと思います。多彩な変化球、抜群の制球力に加えて直球の力強さも増している。佐々木を視察したメジャーのスカウトが、『もっと欲しい投手を見つけた』と話していたのが宮城でした。彼にメジャー志向があるとは聞いていませんが、挑戦する時期が来たら争奪戦になることは間違いないでしょう」

オリックスの宮城大弥

 佐々木と同学年の宮城は高卒2年目の2021年に13勝をマークするなど、同年から3年連続2ケタ勝利&規定投球回数をクリア。リーグ3連覇に大きく貢献し、球界を代表する左腕となった。今季は6試合登板で2勝4敗、防御率1.70。150キロ台の直球に90キロ台のスローカーブを織り交ぜるなど、投球の幅が広い。佐々木には及ばないが、42回1/3イニングを投げて47奪三振で奪三振率9.99と高い。左大胸筋の損傷で5月上旬に離脱したが、肩や肘の故障がなく体が強いことも魅力だ。

 米国の通信員も現地で宮城の評価が高いことを認める。

「メジャーのスカウトがオリックスに在籍していた時の山本由伸だけでなく、宮城の投球にも熱視線を送っていました。身長が171センチと小柄ですが、直球の角度で勝負する投手ではないので評価が落ちることはない」

 そして、宮城以外にも多くの投手の名前を挙げる。

■現時点で十分メジャーで通用する

「日本は『投手の宝庫』と評価されています。平良海馬、今井達也(西武)、戸郷翔征(巨人)、高橋宏斗(中日)、森下暢仁(広島)、伊藤大海(日本ハム)、東克樹(DeNA)、種市篤暉(ロッテ)…。彼らは現時点で十分にメジャーで通用します。特に高橋に注目しているスカウトが多いですね。まだまだ発展途上で体が細いけど、持っている能力が抜けている。東海岸の球団関係者は『佐々木より高橋の方が欲しい。あの投手はタフだし長年稼働できる』と太鼓判を押していました」

 高橋は現在、佐々木、宮城より1学年下の21歳。メンバー史上最年少で選出された昨年のWBC決勝・米国戦で救援登板し、メジャーを代表する強打者のマイク・トラウト、ポール・ゴールドシュミットから連続三振を奪ったことで米国でも話題になった。

中日の高橋宏斗

 昨年は7勝11敗、防御率2.53。負け越したが、146イニングで自身初の規定投球回数をクリアした。今季は投球フォームで試行錯誤し、開幕2軍スタートとなったが、4月下旬に1軍昇格以降は8試合登板で4勝0敗、防御率0.49。

 他球団の打撃コーチは、

「昨年までは立ち上がりが結構フラフラしていたけど、ギアが上がると打てる球がなくなる。今年は安定感がグッと増した感じがします。直球、スプリット、カットボール、ナックルカーブとすべての球種の質がいいので絞りづらい。あと、試合終盤になっても直球の球威が落ちない。体が強いんでしょう。年々良くなっているし、山本由伸クラスの投手になる可能性がある」

 と分析する。

 佐々木が高性能の投手であることは間違いない。ただ、「無事是名馬」という格言があるように、故障で離脱しないことも一流選手の証と言える。

佐々木はロッテでやることがまだまだたくさんある

 スポーツ紙デスクは、

「今年のオフに佐々木がメジャー挑戦することは現実的ではないし、ロッテがポスティング・システムを認めるとは思えない。仮に挑戦したとしても今の状態だと故障が多く、短命のキャリアで終わるリスクがある。コンディション作りを含め、ロッテでやることはまだまだたくさんあります」

 と指摘する。

 ロッテは首位・ソフトバンクと11ゲーム差の3位につけている。逆転優勝に向け、「令和の怪物」の力は不可欠だ。日本で文句なしの実績を残し、メジャーに羽ばたいて欲しい。そう思う野球ファンは多いが、佐々木朗の心中はいかに――。

(今川秀悟)