巨人・高梨雄平

 巨人・高梨雄平は左打者封じのスペシャリストとして高い評価を受けている。今シーズン4月に国内FA権を取得した左腕は、今ではグラウンド内外でチームに欠かせない存在となっており、オフの去就には早くも注目が集まっている。

 6月23日のヤクルト戦、東京ドームが大きな歓声に包まれた。ヤクルトの西川遥輝が放った一塁ゴロのベースカバー時、ボールを受け取った高梨はベースへ向けて咄嗟にスライディングをしてアウトを掴み取った。

「(打者走者と)交錯するなと思って、スライディングしかないなと思いました。かわしながら。上手いことああいう感じになりました」(試合後の高梨)

 マウンド上では常に冷静でクレバーな印象を受けるが、同時に必死な泥臭いプレーを見せたことが話題となった。前日の同カードでは両チームスコアレスの8回に登板して2失点を喫して敗戦投手になり、この日は絶対に負けないという高梨の“負けん気”の強さが出た場面でもあった。

「大事な場面で投げる役割なので常に結果を求めている。仮に打たれた時も同じ失敗を繰り返さないように努力している。試合後は登板映像を何度も見返しています。貪欲な姿勢が投手陣に好影響を与えている」(巨人関係者)

「常に客観的に自分を見ている。結果に一喜一憂せず冷静に登板を振り返ることで、失敗(=打たれる)がないようにしている。決めたことに突き進む我の強さも持っている頑固な奴です(笑)」(巨人関係者)

 今季がプロ入り8年目となる高梨は2016年に社会人のJX-ENEOSからドラフト9位指名で楽天に入団。ドラフトの指名順位が示す通り、決して高い評価をされてのプロ入りではなかったが1年目から46試合に登板して防御率1.03と活躍。その後も、貴重なリリーフ左腕として楽天のブルペンを支えた。

 そして、コロナ禍で開幕が遅れた2020年シーズンの序盤に中継ぎ左腕が補強ポイントだった巨人にトレード移籍。「(楽天で)優勝したかったですが、それはこのあとの野球人生で叶えられるように頑張っていきます」と語った高梨は新天地でも、引き続き素晴らしい投球を披露している。

 巨人では加入1年目に44試合の登板で21ホールド、防御率1.93をマーク。2021年以降は昨季まで毎シーズン55試合以上に登板して、昨年こそ防御率4.19と数字を落としたが、今季はここまで23試合に登板して13ホールド、防御率2.60を記録している。

「投球時のテイクバックが小さく腕が体に隠れることで打者はリリースが見えにくい。腕の位置も低いので左打者は体の後ろ、右打者はかなり遠くからボールが来るように感じる。これだけ打ちにくい投手もなかなかいない」(在京球団スコアラー)

 先述のように今年の4月に国内FA権を取得し、かつ人的補補償がないCランクと見られていることから今季の活躍次第ではオフの移籍市場では“人気”になるとも予想されているが……。

「優勝から遠ざかっている巨人にとって絶対に必要な存在。何度となく修羅場をくぐってきた経験に勝るものはない。勝利への執念、野球へ取り組む姿勢も素晴らしい。若手がもう一皮剥けるためにも高梨という手本がいて欲しい」(巨人OB )

 高梨は国内FA権取得に対して「僕、ジャイアンツが大好きなので。ジャイアンツが良い評価をしてくれたら、それが一番うれしいですね」と“巨人愛”を語っている。だが、仮に今シーズン好成績を残した場合、残留するかはチームの提示する条件次第になるだろう。他チームからの需要もあるだけに、今後が注目される投手の1人でもある。

「FA権を行使したら欲しがる球団はいくつもあるだろう。変則投手の需要も高いMLB球団からも高評価だと聞く。巨人は早い段階から下交渉をして十分な条件で契約延長を目指すのではないでしょうか」(在京球団スコアラー)

 また、マウンドでのパフォーマンスだけではなくファンからも人気のある選手。2021年の春季キャンプでは沖縄・那覇の宿舎でカレーを作り、原辰徳監督や同僚たちにふるまったことが話題となった。自身のYoutubeチャンネル『たかなしきっちん』を開設するなど、料理が上手いことからファンには“シェフ”のニックネームで親しまれている。

「成績面でも素晴らしいものを見せている。岡本和真や戸郷翔征にもメジャー挑戦の噂も浮上しており編成部も大変だろうが、高梨の残留交渉に全力を注いで欲しい」(巨人OB )

 周囲の話からは高梨、球団は相思相愛のようで来季以降も巨人でプレーする可能性は高そうだが、今季ここからの活躍がキャリアを大きく左右するのは間違いない。

「守護神・大勢が離脱、阪神から獲得したケラーも安定感に欠ける部分もある。バルドナードと高梨という左腕2人の役割は重要。優勝争いにとどまるためにも今後の登板数は増えるはず。体に気をつけて投げ続けて欲しい」(巨人関係者)

 7月に32歳を迎えると脂が乗った時期だけに今後もフル回転が予想される。結果を残し続ければ、大好きな巨人との好条件の契約も見えてくるはずだ。