小池百合子知事

 都知事選が中盤に入り、各候補の運動に熱が入る。現職に挑む前参院議員・蓮舫氏(56)、前広島県安芸高田市長・石丸伸二氏(41)も連日、街頭へ繰り出し高らかに熱弁を振るう。対称的なのが現職の小池百合子知事(71)だ。公務に専念し、週末以外はほとんど街頭へ出ず、目立った動きがない。いや、水面下の選挙活動は着々とこなしていた。

■6.11から目玉政策をスタート

 小池都政の目玉政策の1つは、昨年から実施している「018サポート」。この令和6年度分の申請が6月11日からスタートした。 

 「018サポート」というのは0歳から18歳までの子供に所得制限なしで、一人当たり月額5000円を支給するというもの。

 昨年の申請は9月1日のスタートだった。今年も同じころにと思いきや、そうではなく3カ月近く前倒しになった。都福祉局子供子育て支援部育成支援課の担当者は「今年度からマイナンバーを活用して簡単に申請できる仕組みを導入しました。デジタル庁と共同でつくり、その準備が整った6月11日からの受付としております」 。

 これを額面通りに受け止めていいものかどうか。

 都庁内部からは「  6月11 日スタートは都知事からの指示ですよ」という声も聞こえる。各候補者が一斉に街頭活動に出た告示日は6月20日。小池氏が特別顧問を務める都民ファースト関係者が小池戦略を語る。

「都知事選とタイミングがピッタリ合うようにということです。知事室に座っていても、布石は打ってあるんですよ」

 告示日に合わせたかのような施策がもうひとつあった。

 「物価高騰対策臨時くらし応援事業」。住民税非課税世帯約190万世帯を対象に1万円分の商品券や電子ポイント、現金が支給される。各家庭に向けての通知書の発送を6月14日に始めた。6月17日からはホームページでも受け付けを開始した。 

「ちょうど今、申し込み用紙の入った封書が各家庭に届けられている。『1万円もらえます』というね。(小池氏は)こういう手を打っているので、あちこち街頭へ出る必要がないのですよ」 (前出・都民ファースト関係者)

 1万円の支援についても、なぜこのタイミングになったのか。福祉局生活福祉部事業推進課の担当者に聞いた。

「支給は令和5年度の最終補正予算で計上した予算です。計上するにあたっては当然、小池知事の確認を経ています。議会に予算案として提出して、今年3月初旬に都議会で可決されました。そこから準備を始めまして、準備が整ったので6月14日から配布を開始したということです」 
 

■街頭演説よりも公務

支持者に手を振る小池知事 東京都足立区で 6月29日(撮影/上田耕司)

6月22日(土):八丈島

6月23日(日):奥多摩、青梅市

6月29日(土):北千住

 小池氏の最近の街頭演説の日程だ。ウィークデーはひたすら公務に専念、街頭演説は週末に、というのが小池氏の1週間になっている。

 小池氏の場合、「街頭演説」よりも「視察」が目立つ。 

ウィークデーは公務に専念

 都の報道課によると、 

6月25日(火) :有楽町の東京イノベーションベースの視察、八王子の学校給食センター

6月26日(水) :損保ケアユニバーシティ芝浦、住宅の防災マンション、江東区の中央防波堤のコンテナターミナル、水門管理センターの視察 

6月27日(木) :墨東病院の視察 

 小池氏の視察や街頭に同行しているジャーナリストの横田一氏によると、小池陣営は視察先でも街頭演説でも、とても神経質に映るという。 

 小池氏が八丈島で初の街頭演説をした日のこと。

 横田氏が、東京都の出生率が「0.99」だったことについてコメントを求めた。小池氏は無言だったが、都民ファーストの幹部が「選挙妨害ですよ」と立ちはだかった。 

 この幹部は別の街頭演説会場でも、周囲を警戒し、声をあげている人を自身のスマホで撮影しているという。 

「彼は小池さんの元秘書。選挙妨害をしそうな人たちのチェックをしています。今回の選挙は元秘書ファミリーが、小池さんをがっちり守っているんです」(報道関係者)

 「東京を変える」という期待感が高かった初当選当初ほどの人気はなくなっている小池氏の陣営。できるだけトラブルを避け、無難に選挙期間をやり過ごす守りに徹した戦略なのだろうか。

■勝てる公算

 元東京地検特捜部副部長で小池氏側近の衆院議員だった若狭勝氏は、こう分析する。

「あまり動かなくても当選できるというスタンスでしょう。現職は強い。むしろ、いろんなところへ出て行くと、批判されたり、追及されたりする。あまり表舞台に出ない方がいいということだと思います」 

 018サポートや物価高騰対策臨時くらし応援事業の支給についてはこう語る。

 「ばらまきは現職の強みという見方をする人もいるだろうし、執行がこの時期になっただけという見方もできる。どちらが正しいというわけではないが、結果として1万円や月5000円を受け取る世帯にとっては、小池さんの評価が高まるということでしょうね」