劇団ひとりの“真剣な悪ふざけ”が炸裂? 「ゴッドタン」人気企画「キス我慢選手権」の令和版への期待

AERA DIGITAL6/7(土)11:30

佐久間氏が仕掛けるNetflixで新コメディシリーズ『デスキスゲーム いいキスしないと死んじゃうドラマ』が配信。そなくてはならない存在は劇団ひとり

  Netflixで新たなコメディシリーズ『デスキスゲーム いいキスしないと死んじゃうドラマ』の配信が決定した。企画演出・プロデュースを担当するのは佐久間宣行氏。これまでにNetflixで『トークサバイバー!』『LIGHTHOUSE』『罵倒村』といった話題作を手がけてきた彼が今回、満を持して送り出すのは、デスゲームとキスを融合させた異色の即興ドラマバラエティーだ。

 本作の主演は劇団ひとり。同僚役として声優の宮野真守も出演する。美女たちからの誘惑が次々と襲いかかる謎の世界に放り込まれた芸人たちが、「キスしてしまったら死ぬ」というルールのもと、即興でストーリーを進めていく。最終的には「最高のキス」で物語のフィナーレを迎えることが目標なのだが、ゴールにたどり着くまで出演者は理性と本能の綱引きに耐え続けなければならない。

 この奇抜な設定に、既視感を覚える人は少なくないだろう。そう、佐久間氏が長年制作している『ゴッドタン』(テレビ東京)の人気企画「キス我慢選手権」である。台本のない即興ドラマの中で、芸人がいかなる誘惑にも屈せずキスを我慢し続けるあの企画は、バラエティーの歴史に残る伝説的な代物だった。

 シンプルな構造の中に、羞恥・欲望・笑い・人間ドラマといった多層的な要素が詰め込まれており、視聴者を笑いと感動の渦に巻き込んだ。『デスキスゲーム』は明らかにその進化版とも言える内容であり、「令和版キス我慢選手権」として期待が高まっている。

■リアルな葛藤が見もの

 「キス我慢選手権」は、芸人がドラマというフィクションの中でリアルな葛藤にさらされるのが見どころだった。魅力的なヒロインに迫られ、意味不明な展開に巻き込まれながらも、「キスをしてはいけない」という絶対的なルールが彼らを縛る。その中で何を選択し、どう芝居を続けるのか。すべてが芸人本人の判断に委ねられている。笑いを取りたいという芸人としての本能と、男としての衝動がぶつかり合うことで生まれる、ぎこちない演技や照れた表情が視聴者の笑いを誘い、演者の人間味を浮き彫りにしていく。

 この企画でとりわけ強烈な印象を残したのが、劇団ひとりである。そもそも「キス我慢選手権」がのちのちまで続く大ヒット企画に成長したのも、劇団ひとりのアドリブ芸があったからだ。

 彼は即興演技の中で、シリアスとユーモアを巧みに使い分けながら、状況に応じて絶妙なセリフを繰り出し、「真剣にふざける」ことでナンセンスな世界観を成立させた。そこには芸人としての技術だけではなく、役者としての柔軟性と感受性も示されていた。

 芸人でありながら、ここまで芝居の空気を読み取り、自分の立ち位置を正確にコントロールできる人物は多くない。劇団ひとりがその後、俳優や小説家・脚本家として活動の幅を広げていったことを思えば、「キス我慢選手権」はまさに彼の演技の原点と呼ぶべき場であった。

■芸人が本能と向き合う笑いの根源

 この企画が長く愛され、映画化もされるほどの人気を誇ってきた理由は明確だ。単なるお色気企画で終わらず、芸人が自らの本能と向き合い、真剣にバカを演じるという笑いの根源にある誠実さがあるからだ。どこまで真面目にふざけられるかという戦いに挑む彼らの緊張感が、視聴者に笑いと同時に芸人の覚悟を感じさせていた。だからこそこの企画は、単なる悪ふざけや下ネタを超えた「人間ドラマ」としての強度を持っていた。

 佐久間氏は、このような「芸人のリアル」を掘り下げて笑いにすることが得意な演出家である。そんな彼が新たに手がける『デスキスゲーム』は、より自由に、よりダイナミックにその世界観を表現する場になるだろう。

 劇団ひとりの意気込みも並々ならぬものであるに違いない。『ゴッドタン』という番組や「キス我慢選手権」という企画は、テレビにおける彼の代表作であり、出世作とも言えるものだ。その系譜を引き継ぐ新企画に臨むからには、自分の芸人人生を懸けて、本気で挑むという覚悟を持っているはずだ。

 かつての劇団ひとりが見せていた「真剣な悪ふざけ」が、Netflixという大舞台でどのようにアップデートされるのか。かつての「キス我慢選手権」を知る人にとっても、知らない人にとっても、間違いなく興味深い内容になるはずだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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