作家・室井佑月氏は、ある俳優の発言に憤りを覚える。



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 7月16日の「JIJI.COM」によると、「時事通信が9〜12日に実施した7月の世論調査で、菅内閣の支持率は前月比3.8ポイント減の29.3%で、不支持率は5.6ポイント増の49.8%となった」という。

 ようやく支持率が3割を切ったといえども、まだ結構な人々が菅内閣を応援しているのが驚きだ。

 都内の新型コロナウイルスの感染者は、1千人を超える日がつづいている(この原稿を書いているのは7月18日)。

 このことについて、東京五輪の開催は関係ないと強弁している人もいるが、五輪開催が人々に間違ったメッセージを発しているのは事実だ。「だって五輪はやれるんでしょ」という意識が、人々の気の緩みを作っている。

 東京都に緊急事態宣言が出されるのが4度目だということも大きい。

 なぜ、緊急事態宣言が4回目なのか。過去の3回、感染の抑え込みに失敗したからじゃないのか。

 東京五輪は無観客といいつつ、関係者たちをひっそり入れて開催される。それが多くの人にバレているから、緊急事態宣言下、生活に自重を求められても、「は? なんでうちらだけ我慢しなきゃなんないの? どうせ今回の緊急事態宣言も失敗するんだし」ってなもんだろう。政府が国民に対し、緊急事態宣言下で東京五輪開催という誠意のないことをしているのだから、それも当然であると思う。

 ある俳優がテレビに出て、東京五輪開催の判断を下した菅義偉首相と小池百合子都知事の暴挙について、「つくづく、菅さんにしても、小池さんにしても偉いと思う。まず、その偉さをたたえなきゃ。なぜかといったら、失敗したら、あの人たちはパーですよ。それをあんな穏やかに、やせもせず、おできになるんですから、立派な方々ですよ」といったらしいが、冗談じゃない。

 菅さんにとってパーになるのは、東京五輪後に描いていた自分の思惑だけだ。五輪で国威発揚を狙ってその後、解散総選挙をやって勝ちたいという。小池さんもできるだけ目立って国政へ返り咲き、初の女性総理の目を模索するってくらいのもん。

 この人たちの勝手に付き合わされ、コロナにかかって大変な目にあったらどうしてくれるんだ。まして自分や大事な人が死んだりしたら。

 その俳優はこうもつづけた。

「バッハさんのことも、言い間違いも含めて、金メダルの話題が二つか三つ重なれば、みんな忘れます」

 強烈な嫌み? 強権政治の提灯(ちょうちん)持ち? 戦後、あたしたちがこんなに自分たちの命を軽視されたことがあったか? みんな、このことは、絶対に忘れないでいよう。

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

※週刊朝日  2021年8月6日号