韓国の文在寅大統領は9月21日に国連総会で演説し、朝鮮戦争の終戦に向けた決意を表明し、韓国国内で大きな反響を呼んでいる。報道によると、文大統領は「朝鮮戦争の終戦宣言に向け、改めて国際社会の協力を要請したい。韓国・北朝鮮・米国の3カ国、あるいはそれに中国を加えた4カ国が共同で、朝鮮戦争の終戦を宣言することを提案する」と述べたという。

 1950年6月に勃発した朝鮮戦争は、53年7月に国連軍と中国朝連合軍の間で休戦協定が結ばれ、現在に至る。文大統領は就任以来、2045年までに朝鮮半島の統一を目指すとことを宣言するなど、北朝鮮との関係改善に積極的に取り組んできた。

 18年4月、文大統領と金正恩朝鮮労働党委員長(現総書記)は南北首脳会談を実施し、朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言を共同で出した。19年6月には当時の米国・トランプ大統領が、現職の米大統領として初めて韓国と北朝鮮を隔てる軍事境界線を歩いて越えて北朝鮮側に入った際、文大統領も同行。トランプ大統領の後に、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と握手を交わした。

 ただ、その後の南北の関係性は改善に向かっているとは言えない。今月に入って、北朝鮮は巡航ミサイルや弾道ミサイルの実験を行うと、韓国は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験に成功したことを発表。

 文大統領は北朝鮮の挑発に対応したことを否定したが、金正恩総書記の妹の金与正朝鮮労働党副部長が「大統領まで出てきて相手を中傷するのに加勢すれば、やむを得ず対抗手段を取るしかなく、そうなれば、北南関係は完全に破壊へと突き進むことになる」と朝鮮中央通信を通じて談話を発表。神経をとがらせている。

「そもそも朝鮮戦争で韓国は休戦協定に署名していないので、国際的には当事者ではないという認識です。文大統領が朝鮮戦争の終戦を呼び掛けてもその権限があるわけではない。また、米国は北朝鮮が核兵器を放棄することを最優先のテーマにしている。その問題が解消されていない時点で終戦というのは現実的な話ではない。米韓合同軍事演習を行っていることに対しても北朝鮮は反発している。文大統領がどこまで本気なのか測りかねている状況です」(政治部記者)

 文大統領が朝鮮戦争の終戦を呼び掛けたこの発言は、韓国でも大きな反響を呼んだという。 

「韓国国内では文大統領のパフォーマンスと揶揄する声が多いです。大統領の任期が終わるのでレガシーを残したいという思いが推測されますが、現在の韓国と北朝鮮の関係性を考えれば統一のイメージがわかない。韓国国内では北朝鮮との関係改善より、米国との同盟関係を強化するべきという声の方が多い。10代、20代の世代はその傾向が顕著で、統一に賛同する考えは少なく、文大統領のスタンスでは米国と良好な関係が築けないと危惧している」(韓国に駐在する通信員)

 韓国大統領の任期は、1期5年で再選がない。文大統領の任期は来年5月までだ。悲願の南北統一の気運は高まっていないが、文大統領の思いは変わらないだろう。今後の発言が注目される。(江口顕吾)