コロナ禍で人とつながりが希薄になり、孤独が問題視されている。孤独は自ら命を絶つことにもつながるだけに、対策は急を要する。新首相に求める政策は何か。AERA 2021年10月4日号は、NPO法人「あなたのいばしょ」の大空幸星理事長に聞いた。

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 日本では、孤独は個人の問題とされてきました。しかし、社会問題に広げる必要があります。昨年末、僕は政府に、担当大臣の設置や調査・研究の推進を求める「孤独対策」を提言しました。すると今年2月、菅義偉首相は内閣官房に孤独・孤立対策担当室を新設し、孤独・孤立対策担当大臣を任命しました。孤独担当大臣はイギリスに次いで世界で2例目。これについてはかなり評価しています。

 昨年3月に僕が立ち上げたNPO法人「あなたのいばしょ」は24時間年中無休で、インターネットを利用したチャット相談を受け付けています。相談は増える一方で、特にここ数カ月で増えています。今は1日1千件近い相談が寄せられます。

 相談が増えた一因に、新型コロナウイルスがあるのは間違いないと思います。長引く外出自粛で他人との接点が減り、「望まない孤独」を感じている人が増えています。望まない孤独は、ときに自ら命を絶つまでに人を追い詰めます。

 今回、自民党総裁選に立候補した4人の政策集などを見る限り、「自殺」という2文字が入っていたのは岸田文雄さんだけでした。その点は率直に評価したいと思いますが、子どもの分野に限っています。

 孤独と自殺は全世代にわたるメンタルヘルスの問題です。そこに取り組むと明言した候補者は、残念ながらいません。

 日本の政治家が孤独対策に言及しないのは、孤独への関心が相対的に低く、よくわかっていないのが本当のところだと思います。だからそこは民間の力を活用してほしい。民間には僕たちを含め孤独の専門家はいっぱいいて、具体的な提案を持っています。僕たちの声を聞いて政策に落とし込んでいただきたい。

 政治に期待したいのは、大前提として相談窓口と支援団体への助成の拡充です。いま孤独を抱える人たちに寄り添っているのは僕たちNPOですが、そこへの支援が圧倒的に足りません。

 その上で求めたいのが「予防的な政策」です。これまで国は、家族や友人がいないなど客観的に把握できるものについては支援制度を作ってきました。しかし、孤独は主観的な感情。家族や友人がいても孤独を抱えている人はたくさんいます。

 こうした個人の主観的な感情にフォーカスするには、予防的な政策が必要となります。まず国は孤独とは何かをしっかり定義する。僕は、孤独を「本人が望んでいないにもかかわらず、誰にも頼れない状態」と定義しています。次に具体的なエビデンスを持って政策を進め、効果検証をしっかり行うことです。

 スティグマ(差別や偏見)対策も重要です。日本では自殺者の7割が男性です。だけど、僕たちへの相談は圧倒的に女性が多い。それは、男性は他人に悩みを打ち明けるのは恥だと思っているから。スティグマをなくすには、「孤独は人生のどこかのタイミングで誰もが感じる。恥ずかしいものではない」というメッセージを政治が発信することが重要です。

 コロナ禍で、望まない孤独に陥る人はさらに増えていくでしょう。対策はまったなし。新首相には期待したいです。

(構成/編集部・野村昌二)

※AERA 2021年10月4日号