新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大に慌てた政府が日本に到着する国際線の新規予約を12月末まで止めるよう、すべての航空会社に要請するも、たった3日で撤回した問題が波紋を広げている。

 岸田政権の発足後、初めて迎えた本格的なコロナ対応だったが、航空会社や利用者の混乱を招く結果となった。裏で何が起きていたのか。

「国際線新規予約停止要請では、官邸はもとより政府内が大混乱しました。国交省所管の独断、と報じられていますが、諸悪の根源は官邸の機能不全です」(官邸関係者)

 オミクロン株に対応するための水際対策として政府は11月29日、12月から1日あたりの入国者数の想定を5千人から3500人に引き下げることを公表。同日に国交省航空局が一律に国際線新規予約の停止要請を出し、日本航空(JAL)と全日空(ANA)などは12月1日までに予約を止めた。

 すると、長期の出張などで帰国の航空便を予約していない人たちが戻れなくなる上、政府内でも事前調整が出来ていなかったため、大混乱。12月2日に急遽、取りやめを発表した。官邸内でもあらゆる情報が錯綜し、情報の真贋を確かめることに追わる始末だったという。

「戦犯の一人は木原誠二官房副長官(補佐官)です。そもそも木原副長官は、財務省出身の中でもひときわエリート意識が高く、独善的に仕事を進めるので、省庁横断的な根回しや情報共有などの調整役としては能力に欠けています。専門分野である『新しい資本主義』など経済政策には注力しているが、コロナやワクチンは省庁任せ。国交省のなすがまま、放置したために、こういう事態になった。国交省の事務方の暴走という方向へ責任転嫁していますが、 本当にそうであれば、関係部署の職員が処分される話です。こうした官邸の対応に霞ヶ関からも疑問の声が出始めています。今回の対応のまずさは、自民党の重鎮らも怒っていると聞きます」(同前)

 官邸のグタグタぶりに危機感を抱いた岸田文雄首相は3日、側近の寺田稔元総務副大臣を首相補佐官、盟友である石原伸晃元幹事長を内閣官房の参与に起用すると発表した。

「寺田さんは安全保障を木原副長官から引き継ぐ形になります。木原副長官にこれ以上、任せられないと、岸田首相が同じ広島が地盤で岸田派側近である寺田さんを抜擢した。しかし、寺田さんだけでは現在、政権が抱える重大な目詰まりを解決するのは困難です。それなのに落選し、派閥会長を辞職し、ただの人になった石原氏を参与(観光立国担当)に起用なんてピントがズレまくっています。石原氏は安倍元首相とも仲がいいので、岸田首相はパイプ役を期待しているようですが、こうしたお友達人事で各省の不信感や離反が起こりはじめています」(前出の官邸関係者)

 今回の騒動は木原副長官だけではなく、斉藤国交相の対応も大問題だったという。自民党幹部はこう指摘する。

「斉藤国交相は、衆院選期間中に開いた個人演説会の出席者にトラック協会が現金を渡していた疑惑や資産等補充報告書に1億円超の記載漏れが報じられ、メディア対応に四苦八苦。省内の動きにすら目を配れていなかった。所管大臣なのに事前に話を知らない、という大失態を演じたのは、国交省幹部に軽んじられている証左です。公明党は遠山清彦元財務副大臣が東京地検特捜部から取り調べを受けるなど不祥事続きで、政権や霞が関で軽んじられています」(自民党幹部)

 そもそも岸田官邸には安倍・菅政権の時代、懐刀だった杉田和博元官房副長官のような霞が関に睨みの利く、存在感のある人物はいないという。

「岸田官邸全体として言えるのは、どこか人任せ。結局、何より問題なのは、政権中枢にコロナ対策を本当に理解した人材がいないことです」(同前)

 岸田政権のこうした機能不全はオミクロン株などコロナ対応にも影響が出ているという。

「特にワクチンでは、前倒し供給にかかるファイザーとの調整にも木原副長官ら官邸幹部が政治案件として関与しようという意識が薄く、厚労省任せとなり、難航しています」(同前)

 堀内詔子ワクチン担当相、山際大志郎コロナ対策担当相も存在感が薄く、政治力でワクチン交渉を打破する、という気迫もないという。

「それでもやっている感を演出することには熱心で、6日に行われる首相の所信表明でも『ワクチン供給前倒し』の話をねじ込んだ。『日本ならできる、いや、日本だからできる』のような気合だけで中身の無いフレーズが岸田首相の所信表明で随所に盛り込まれる予定で、実務を任されている厚労省も困惑気味です。岸田政権のグタグタぶりで今後、大きな危機を招かないか心配です」(前出の官邸関係者)

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう指摘する。

「国交省幹部の独断と官邸や斎藤大臣は言いわけしているが、岸田官邸が機能不全になっているのは明らかです。今はオミクロン株の騒ぎと燃料の値上げで航空会社はどこも大変な時期。政治の不手際で大きな打撃を与えた。そもそも岸田内閣は肝心かなめのコロナ対策を誰が司令塔となってやるのか、曖昧になっている。菅政権の時は、田村憲久前厚労相、河野太郎前ワクチン担当相、西村康稔前コロナ担当大臣の存在感はあり、連携は必ずしもうまくいっていなかったが、政治力はそれなりにあった。だが、岸田内閣はコロナ司令塔の顔になる人材が見当たらない。ワクチン確保のため、きちんとチームを作らないと大変なことになる」

(AERAdot.取材班)