夏の参院選にれいわ新選組からの出馬を表明したお笑いコンビ・浅草キッドの水道橋博士(59)。選挙では「反スラップ訴訟」「消費税ゼロ」などを訴えていくとされるが、本当に政治家になる覚悟はあるのか。また、かつて自身が批判していた「タレント候補の出馬」について今はどう思っているのか。その他、師匠であるビートたけしの反応なども含めて、数々の疑問を本人に直接聞いた。

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 水道橋博士が「出馬表明」したのは、都内でトークショーが行われた18日のこと。れいわ新選組の山本太郎代表からの「れいわで一緒に参議院選戦ってくれるかな」という問いかけに対して「ああ戦います、はい戦います」と答えたのだが、本人の口からは一度も「出馬します」というストレートな言葉は聞かれなかった。

 そこで、インタビュー冒頭で改めて聞いてみた。ズバリ、本当に次の参院選に出馬するんですよね?

「えーと、まぁ確実にすると思うんですが……。れいわさんも山本太郎代表の“独裁”ではなく、党できちんと会議をへて候補者を決める過程を踏むので、ワンクッション置かせてもらっている状態です」

 では「れいわ」のことはいったん脇において、水道橋博士さんのお気持ちはどうなんでしょうか?

「れいわさんに誘われてなかったら出馬してないですね」

 じゃあ、出馬しますと言ってよろしいんですね?

「出馬します」

 やっと、スッキリと答えてくれた。

 出馬への懸念材料としては、供託金の問題があるという。参院選の立候補に必要な供託金は、選挙区での出馬は300万円、比例区なら600万円と高額で、得票数が一定の水準に達しなければ没収されてしまう。れいわ新選組がこの供託金を負担してくれることが、出馬の条件だという。

「れいわさんが選挙分析をして『水道橋では票が取れないので、供託金は払えない』というなら出馬はしないと思います。その場合、他党から『供託金を払いますから出てください』と言われれば、それはやぶさかではありません。ウチの家計には供託金を払えるような余裕はないので、(今回の出馬は)予定していなかった行動なんです」

 出馬を考えたのは、本当にごく最近のことだという。15日、川崎市の溝の口駅前で山本氏の街頭演説があった。そこに博士は「自称ジャーナリスト」として訪れ、山本氏に質問した。

「4月25日かな、松井一郎・大阪市長から訴状が届きました。名誉毀損の裁判を5月30日、大阪地裁でやるんですが、裁判費用は莫大(ばくだい)にかかります。被告になってテレビ、ラジオに出られないということになれば、政敵をテレビ、ラジオに出演させないために訴える方法があるわけです。反スラップ訴訟の法律をつくりたい。れいわさんで今後、反スラップ訴訟の立法化について努力してくれるかをお聞きしたい」

 2月13日、博士はツイッターで松井市長を批判したYouTube動画を紹介した。これに対して、松井市長は「水道橋さん、これらの誹謗中傷デマは名誉毀損の判決が出ています。言い訳理屈つけてのツイートもダメ、法的手続きします」とツイッターで応戦。本当に訴訟沙汰に発展したという経緯がある。

 博士はこの訴訟について、権力を持つ地位にある者が弱い者の口を封じるために訴訟を起こす「スラップ訴訟」だと主張しているのだ。

 博士の質問に対して、山本氏はこう答えた。

「(水道橋さんは)自称ジャーナリストから政治家になったらどうですか。自分自身がスラップの被害者であるならば、その立場に立って立法していくというのはかなり説得力のある話なんです。(供託金は)うちから出しますから、うちから出てください。どうでしょう?」

 博士はまんざらでもない様子で「検討します」と応じた。

 これが発端となり、博士の「出馬」が現実味を帯びた。

「立候補は(山本氏とのかけあいで生じた)偶然の産物です。それから3日間、出馬のための調整をしました」

 博士が最初に相談したのは、妻と娘だった。

「妻には(街頭演説翌日の)16日に打ち明けました。泣いていましたね。本当にかわいそうでした。そういうことが好きなタイプの女性ではないので。妻は『家計の持ち出しになるのは絶対に嫌だ』『子どもの教育費を残してほしい』ということをずっと言っていました」

 娘はこう言ったという。

「私も公の仕事に就きたいという希望があるから、パパ、人の道を汚したり、後ろ指をさされるようなことがあったら困ります」

 師匠のビートたけしとは「出馬表明」前日の17日午後、直接会って相談したという。その時の様子をこう明かす。

「芸人仲間の原田専門家と2人で待ち合わせ場所へ行きました。実に2年半ぶりの再会になりました。たけしさんはもう75歳なので体調はどうかと思っていましたが、非常にお元気な様子でした。話したのは30分くらいです。たけしさんは政治的な活動には、冷ややかなんです。ご自身も出馬などはなさらないので。私からは『大阪の松井市長に訴えられていて、反スラップ訴訟をやらないことには、僕はただ干上がるだけなので、出馬させてほしい。ただし、たけしさんが芸人として出馬はするなとおっしゃるのであれば、出馬はやめます』と申し上げました」

 たけしはこう答えたという。

「おまえのことはおまえで決めていいよ。ただし、オレは一切関係ないし、一切の応援はしない」

 たけしとは部屋を出て別れた。

「たけしさんの後ろ姿は、がんばれよと言っているようで、かっこよかったです」

 たけしの承諾が得られたことで、18日の「出馬表明」となったわけだが、それを報じた記事のコメントやSNSでは批判も巻き起こった。

「タレントとして仕事が減ったから報酬の高い国会議員になろうとしている」「選挙をネタにしたいだけ」などの批判も少なくなかった。こうした声について、どう思っているのだろうか。

「客観的にみれば、そう受け取れるでしょうし、(批判は)傾聴に値するというか、そう思われるだろうなとは思います。僕もタレント候補に対しては、以前からかなり批判してきましたから。ネットで発信する限り、自分を全否定されたり、気を病むくらいの矢が放たれてきたりすることは当然のことだと思っています」

 選挙をネタにしたいだけという書き込みについては、

「芸人は選挙もネタにすればいいんじゃないですか。(立川)談志師匠がそうであったようにね。『囃(はや)されたら踊れ』というのが芸人ですから」

 参院選で最も強く訴えたいことは「反スラップ訴訟」だという。

 前述のように、博士は松井市長から名誉毀損で訴えられているが、2月13日のツイートから訴訟に発展するまでの間には、直接話をしようと試みたこともあった。

 松井市長が現れる応援演説に出向き、本人にも声をかけたが、ほとんど反応はなかったという。

「知り合いのジャーナリストに聞いたところ、松井市長はジャーナリストだったらいつでも会いますと言っているようでしたので、即座に肩書を“自称ジャーナリスト”に変えて、なぜ僕を訴えようとするのかを松井市長に質問しに行っているんです。公人だから、そうして声をかけられることもあると思うのですが、なぜか反応はしてくれませんでしたね。僕は、絶対に向こう(松井市長)が大後悔するところまでやります。芸人という職業をバカにしてああいうこと(訴訟)をしているわけで、僕はそんなにヤワじゃないぞということは絶対に見せたいですね」

 選挙戦では、反スラップ訴訟を軸に「反維新」の包囲網を広げていくつもりだという。また、アントニオ猪木元参院議員が30年以上前に「スポーツ平和党」を旗揚げして参院選に出馬した時のスローガン、「国会に卍固め、消費税に延髄斬り」も口にしている。

「それはほんとにギャグで言っているだけなんですが、あまり響かないので、もうみなさん、覚えていないのかなと思いました。経済政策としては、消費税ゼロとインボイス反対を訴えていきたいです」

 参院選までおよそ2カ月。水道橋博士は客寄せの“タレント候補”で終わるのか、はたまた旋風を巻き起こす新人議員となるのか。これからの活動で試される。(AERA dot.編集部・上田耕司)