参院選が公示された。投開票は7月10日。物価高、経済格差、ウクライナ侵攻、環境問題……。課題は山積なのに、驚くほど盛り上がっていない。だが、私たちは肝に銘じなければならない。この一票が私たちの生活を左右するのだと。有権者は何に注目し、候補者や政党を選べばいいのか。フォトジャーナリスト・安田菜津紀さんに聞いた。AERA 2022年7月4日号の記事から。

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 どんな問題意識をもって一票を投じるか。大多数の人々に関わる経済政策などに目が行きがちで、それも大切ですが、「票にはならない」と考えられがちなマイノリティーの人権にかかわる問題も、大切だから見落とさないようにしよう──そんな姿勢を見いだせる政党、候補者かどうか。そこも重要なポイントだと思います。

 この5月から6月にかけて2回、ウクライナに取材で入りました。現地の人と話すと、概して日本に対するイメージは良く、日本の経済支援に対する感謝の声もよく聞きます。軍事面ではなく、こうしたお互いの信頼のもとでの人道的な支援に力を注ぐことは引き続き大きな日本の役割だと思いますし、その信頼をどうやってより強固なものにするかという課題にしっかりと取り組める政治・外交が、今後ますます問われてくる。現地を取材してあらためて実感しました。

 ただし、人道的な支援と信頼構築が必要なのは、ウクライナに対してだけではありません。6月17日、名古屋入管で亡くなったスリランカのウィシュマ・サンダマリさんについて、名古屋地検は当時の入管関係者を不起訴にしました。なぜか国会閉幕後に、です。私はご遺族を取材してきましたが、彼女たちは繰り返しこう言いました。「なぜ日本政府はこういう態度を取り続けるのですか。スリランカという国が貧しい国だからですか」と。胸に刺さりました。ウクライナ危機がフォーカスされるいま、ウクライナの人たちを日本に受け入れて保護しようという動きもあり、それはもちろん大切なことです。一方で、ウィシュマさんのような「欧米以外の国の人たち」に政府が、入管が、どういう態度をとってきたか。それは「外交」として望ましい態度と言えるだろうか、と考えてみることも大切です。

 私が投票に際して注目したいのは、昨年の通常国会で一度は廃案になった入管法「改正」案に対する政党や候補者の態度です。廃案は自国に帰れない事情を抱えた人たちへの刑事罰など、非人道的な内容が批判された結果でしたが、これに「ウクライナの人たちを受け入れるためにも『改正』が必要でしょ?」という衣をまとわせて、再び国会に提出しようとする動きがあります。しかし、ウクライナの人たちの受け入れも現行法で難民認定でき、適切なプロセスは踏める。「ウクライナ危機に乗じて」自分たちの押し通したい法案を再び提出し、「助けて」という声をあげるにあげられないマイノリティーの人たちをますます窮地に追いやるような動きをしないかどうか。入管の問題にも事実に基づいたうえで真正面から向き合い、適切な保護の間口を広げることで、人道的な外交態度を示す。そんな候補者、政党であるかどうか。多くの人たちに注視してほしいと考えています。

 さらに言えば、同じくウクライナ危機に乗じる形で台湾有事など中国への危機感と不安を煽り、核共有や憲法改正などを言い出す動きは、近隣諸国との摩擦(まさつ)のエスカレーションにつながります。有権者として、慎重に見極める必要があると思います。

(構成/編集部・小長光哲郎)

※AERA 2022年7月4日号