世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が過去に皇室と接触していた写真や動画がある。当時の皇太子さま、皇太子妃美智子さま(現・上皇ご夫妻)が旧統一教会の関連団体の行事に訪れている様子や、昭和天皇の弟の三笠宮さまと見られる人物が、旧統一教会の創始者である文鮮明氏と一緒に収められていた。旧統一教会が霊感商法などで問題となる前の出来事だが、その後、写真や動画は旧統一教会や関連団体などで長く利用されていた。宮内庁は「皇室の写真を宣伝目的のために利用することは好ましくない」との見解のようだが――。

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 当時の皇太子ご夫妻が写っていた写真は、旧統一教会の関連団体「リトルエンジェルス芸術団」(韓国・ソウル)のホームページ(HP)にあった。

 同芸術団は1962年に旧統一教会の創始者である文鮮明氏によってつくられた。小中学校の女子児童、生徒らによる舞踊公演などを世界各地で行っている。写真は、皇太子ご夫妻が公演に訪れた際に撮影したと見られる。

 写真の説明では、

<1971.1 皇室御前特別公演後、リトルエンジェルスと挨拶を交わされる皇太子(当時)ご夫妻>

 とある。

 他にも、英エリザベス女王やアイゼンハワー米大統領との写真や、2002年のサッカー・ワールドカップ日韓大会の開会式に参加したことなどが紹介されている。

 写真以外にも同芸術団の公式YouTubeチャンネルには、「日本巡回公演 紹介映像」という動画があり、1971年1月に皇太子ご夫妻が観覧したときの様子が映っている。

 今年7月1日に創設60周年の歴史資料としてアップロードされていた。

 動画を見てみると、皇太子ご夫妻以外にも、皇室からは秩父宮妃殿下も観覧していたようだ。

 さらに意外な著名人も出ていた。プロ野球選手(当時)の張本勲氏や作家の川端康成氏らだ。

 安倍晋三元首相の祖父である、岸信介元首相も出ており、動画ではこう紹介されている。

<東京公演最終日、皇太子殿下、美智子妃殿下、秩父宮妃殿下をお迎えして、特別公演がもたれました。お迎えする、名誉会長の岸信介元首相も到着です>

 映像には、リトルエンジェルス芸術団の理事長の久保木修己氏が、皇太子ご夫妻を迎えて、会場へ案内するところが紹介されている。久保木氏は、日本統一教会初代会長で、64年から91年まで会長を務めた人物だ。動画内では、久保木氏が皇太子ご夫妻をエスコートしている姿が何度も収められていた。

 動画の最後には、菊の花が映し出され、同芸術団の今後の予定がしっかりと宣伝されていた。

 皇室関係者が、同芸術団の公演を観覧したことについては、旧統一教会の書籍の中にもたびたび出てくる。旧統一教会の歴史をまとめた書籍『日本統一運動史』(初版2000年)には次の記述がある。

<1971年1月8日夜の部(神田・共立講堂)で、皇太子殿下(現天皇陛下)・美智子妃殿下(現皇后陛下)・秩父宮妃殿下がリトルエンジェルスの公演を御観覧されました>

<1972年12月26日のリトルエンジェルス日劇公演を美智子妃殿下(現、皇后陛下)、常陸宮御夫妻、秩父宮妃殿下が御観覧されました>

 また旧統一教会や関連組織の幹部を務めた朴普煕氏の書籍『青年よ行け、そして世界を救え』(初版1996年)では皇太子ご夫妻、そして久保木氏の写真を紹介しながら、<今の天皇陛下が皇太子殿下であられる時、「リトルエンジェルス」舞踊団と共に謁見する光栄にもあずかりました>などと紹介している。

 旧統一教会の活動を紹介するなかで、皇室の写真などが掲載されており、長い間、皇室も宣伝に利用されていたともとれる。

 さらに取材を進めると、文鮮明氏が皇族と見られる人物と写る写真をサイトで見つけた。食事の席での記念撮影のような雰囲気で、文鮮明氏(写真前列左)の隣(写真前列左から2番目)に写っているのが、昭和天皇の弟・三笠宮さま(1915〜2016)と見られている。

 写真を掲載していたのは、英語などで旧統一教会の原理や出来事などを詳細に紹介するサイトだった。サイトの運営者は明示されていないが、過去のサイト情報を調べると、問い合わせ先に、旧統一教会の「お問い合わせフォーム」がリンクされていたことが確認できた。さらに旧統一教会のHPの内容と同じページが作られていたこともあった。

 写真に付けられた英語の説明では「文師は1965年1月に韓国から第1回となる世界ツアーに出た」「日本で2週間過ごした」などとあった。

 先に紹介した旧統一教会の書籍『日本統一運動史』を開くと、文鮮明氏は65年から世界40カ国に拠点をつくるための旅に出ており、この年の1月28日から2月12日までの約2週間、日本各地に滞在していたことが記録されている。そして、こんな記述がある。

<2月10日午後2時に真の御父様(注:文鮮明)は羽田に到着され、直ちに本部に戻られて着替えをされ、三笠宮殿下との会見に臨まれました>

 三笠宮さまの写真と、サイトに掲載されている人物をつきあわせると、酷似しており、同一人物と見られる。

 これらについて専門家はどう見るか。元宮内庁職員で、皇室ジャーナリストの山下晋司氏が語る。

「リトルエンジェルス芸術団の公演を鑑賞されたのは、霊感商法で統一教会が問題視される前です。通常の公務としてお出ましになったのではないでしょうか。外務省や文部省など省庁が後援していれば、日韓の交流という目的でお出ましになることは十分に考えられます」

 また、三笠宮さまと文鮮明氏らとの写真については、

「三笠宮殿下は間違いないと思います。ただ、他に皇族の方はいないようですね。このような写真を撮る場合、皇族方は前列にお座りになるはずです。後ろにお立ちになることはないでしょう」

 皇族と会うことは可能だったのか、またどういった経緯だったのか。山下氏はこう見る。

「天皇や皇太子となると、私的なことでも通常は宮内庁が関わり、必要があれば調べることもあるでしょう。一方、宮家皇族の場合は側近職員も少なく、また自由度も高いため、宮内庁が把握していないこともあると思います。文鮮明氏は反共主義の政治団体『国際勝共連合』を68年に立ち上げており、岸信介氏とも関係が深かったといわれています。想像ですが、三笠宮殿下は元総理の岸信介氏からの依頼を受けて、私的にお会いになったのではないでしょうか」

 同芸術団や旧統一教会はどう答えるか。

 同芸術団に、当時の皇太子ご夫妻が公演を観覧した経緯や、その当時の様子をHPやYouTubeで使っている趣旨について尋ねたが、「当芸術団の日本公演をご観覧されたのは事実ですが、それ以外のことは存じ上げていません」と答えるのみだった。

 旧統一教会には、三笠宮さまが写る写真を掲載しているサイトとはどういった関係なのか、皇室関係者との写真を布教などで使ったことがあるか、どういった経緯で三笠宮さまと面会したのかを尋ねた。

 サイトについては「当該ホームページと当法人は全く関係ございません」と関係を否定した。皇室との写真については、「布教のための広報活動に使用したことは一切ございません」。

 三笠宮さまとの面会の経緯については、資料が古く確認できなかったとしたが、「Wikipedia等の情報から推察するに、三笠宮崇仁親王が日本オリエント学会の会長も務めた1967年に『聖書年代学』(ジャック・フィネガン著)を翻訳されていることから、キリスト教研究の一環として当法人とコンタクトを持ち、会食および写真撮影の機会を持つようになったのではないか」と回答した。

 宮内庁にも事実関係を確認すると、上皇ご夫妻が当時、同芸術団の公演を観覧したことは認めたうえで、「公演については、外務省や文化庁等が後援しており、主催者からの要望があり、お出ましになったと思われますが、詳細は確認できませんでした」。三笠宮さまとの面会については、「文書では確認できませんでした」としている。

 さらに、今回の件以外でも、旧統一教会や関連団体との皇室のかかわりを把握しているかを尋ねると、「把握していない」と回答した。

 旧統一教会やその関連団体が公開しているHPや書籍などに、皇室関係者の写真や動画などが使われており、団体の宣伝活動に利用しているとの見方もある。その点について宮内庁の見解を尋ねると、「基本的に、皇室のお写真等を専ら営利や宣伝目的のために利用することは、国民感情からみて好ましくないことと考えています」との回答だった。

 旧統一教会とのかかわりについては「把握していない」とのことだが、調査を尽くしてほしい。

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)