27日に行われる安倍晋三元首相の国葬は、「反安倍」「反自民」ではない人々からも抗議の声が上がる。民族派団体「一水会」は国葬に反対の意思を示し、SNSで発信したり反対派の集会に参加したりしている。「愛国」という点で安倍元首相と共通する思想を持つはずの一水会が、国葬に断固反対の立場を取るのはなぜなのか。木村三浩代表に真意を聞いた。

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 一水会は、1970年に東京・市ケ谷の自衛隊駐屯地で割腹自殺した作家・三島由紀夫らの思想を継ぐ団体で「民族派右翼」とも呼ばれる。

「安倍元首相が非業の死を遂げたことは悲しむべきことで、哀悼の意を表します。ただ、国葬については断固として反対します」

 代表の木村さんは、静かにそう切り出した。

 木村さんによると、一水会が国葬に反対する理由の柱は、次の三つだという。

 最初の二つは「決定に至るまでの雑な手続き」と「国民への説明不足」。木村さんは「国葬は法的根拠がなく多額の税金が使われるにもかかわらず、国会での審議を経ずに閣議決定したことは大きな問題です」と批判し、こう続ける。

「岸田首相は、『憲政史上最長の在任期間』などを国葬の理由としました。ですが、安倍政権の一つ一つの政策への評価が十分に検証されていない段階で、それを国葬の理由とするのは国民に対してあまりにも説明不足です。また、旧統一教会と安倍元首相や自民党との関係についても、岸田首相の態度はあいまいです。それでも『功績を残した』とたたえたいなら、内閣と自民党の合同葬の形で盛大に送ってあげれば良いだけ。わざわざ国葬に格上げする必要はありません」

 三つ目は「誰のための国葬か」という問題だ。木村さんは、岸田首相の腹には「点数稼ぎ」があるとみる。今後の安定した政権運営につなげるため、保守層を取り込みたいとの意図が見え隠れする、と指摘する。

「ご本人が亡くなっているので想像するしかありませんが、国を愛し、憂いた安倍元首相がこの国葬を望むのでしょうか。内閣と自民の合同葬なら、ここまで反対されなかったはず。岸田首相は安倍さんの死を利用してはいないか、あるいは残された者の自己満足ではないのかと言いたい」

 安倍元首相と一水会は「愛国」という共通項や、いわゆる「右」という点では、同じ方向を見ているようにも映る。

 だが木村さんは、根本的な違いを強調する。「『愛国』や『戦後レジームからの脱却』という姿勢は確かに同じですが、米国に従属した安倍さんと、米国からの自主自立を目指すわれわれの立場は明確に違います」

 経済政策についても批判的だ。

「格差社会などもってのほか。富めるものは富み、貧しいものが増えていく。国を愛するなら、貧しい国民が増えていく状況を改善する努力を怠ってはいけなかった」(木村さん)

 国葬は、国民の批判が強まる中で行われる。2022年9月27日は、日本に何を残すのだろうか。

「岸田首相の点数稼ぎ。『誠』のない上っ面の国葬で、上っ面の『美しい国』。何も残らないのかもしれませんね。ただ、危惧するのは、こうした優柔不断なトップほど、今回の国葬も含め、周囲にあおられて極端なことをやりたがる傾向があるということです」

 木村さんはそう憂いた。(AERA dot.編集部・國府田英之)