世論を二分したまま、国葬が終わった。首相経験者の国葬は55年ぶり、戦後2例目だ。当日の「分断の現場」を取材した。AERA 2022年10月10−17日合併号の記事を紹介する。

*  *  *

 安倍晋三元首相の「国葬」が9月27日、東京都千代田区の日本武道館で執り行われた。国内外から4183人(政府発表)が参列。会場は黒一色に染まった。式は4時間以上続いた。

「テロが怖くて迷ったけれど、安倍さんを見送りたかった」

 参列した60代女性は、招待状を握りしめながらそう打ち明けた。女性はかつて、安倍元首相が議長を務めた会議に有識者として参加。複数回、席をともにした。安倍元首相を「他の政治家にはないオーラがあった」と懐かしむ。直接会話を交わしたことはなく、今回の参列を「繰り上げ招待」だと話す。

「国葬に参加するかどうか電話がかかってきたんです。『行きます』と返事をしたら、招待状が届きました。でも、ほら」

 そう言って、女性は招待状の住所部分を指した。名前は封筒に印字されているが、住所や女性の肩書は上から貼り付けた紙に書かれている。改行もされておらず、読みづらい。女性は小さな声で、こうこぼした。

「急いだんだろうけど、雑ですよね。安倍さんが可哀想」

 待ち時間に頭を抱えたというのは、関西から参列した男性。新幹線で上京し、午前11時過ぎにバスで会場入りした。

「国葬開始まで約3時間も待ったうえ、献花までも長かった。疲れたよ」

 だが、その間に他の参列者と名刺交換などができたのはよかったと振り返る。

 国葬中には、政府が制作した、安倍元首相の足跡や功績を紹介する映像が流された。強調された「功績」の一つが「女性活躍の推進」だ。だが、国葬会場を見渡すと、参列者のほとんどが男性だった。流れる映像と目の前の現実にズレを感じた。(編集部・福井しほ)

※AERA 2022年10月10−17日合併号