作家の室井佑月氏は、マイナンバーカードに対する不安を明かす。

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 11月18日付の東京新聞の「こちら特報部」に「マイナカードと国家公務員身分証一元化 政府内からも『反対』出ていた」という記事があった。政府はマイナンバーカードを国家公務員の身分証化することを進めているが、一部が「個人情報漏えいの恐れがある」との理由で反対していたという。

 16日の衆議院内閣委員会で、立憲の山岸一生氏が質問に立ち、そこで政府部内で交わされた文書を出した。「文書のタイトルは『国家公務員身分証の個人番号カード一元化における問題点等について』。政府は二〇一六年から、霞が関の中央省庁でマイナカードの身分証利用を実施しているが、文書はその直前の一五年十一月、内閣官房と警察庁、公安調査庁、外務省、防衛省が連名で政府に提出したものという」「文書は、マイナカードを身分証として使用することの問題点として『紛失・盗難等により、職員の氏名、住所、年齢等を所属省庁とともに把握できる』とし、外国情報機関などが取得したり、一般人がネットなどで拡散したりすると『職員やその関係者に対する危害・妨害の危険性が高まる』と指摘」

 この記事を読んで、

(なんだ、官僚たちも、あたしたちとおなじ心配してるんじゃん)

 そう思ったが、文化放送で一緒になったジャーナリストの青木理氏の話を聞いてもっと深い意味があるのかもと感じた。

 たとえば、官僚が政府などに対し、内部告発をする。時の権力に逆らうわけだ。そのとき、公安に目をつけられ、執拗(しつよう)に問題点を探されたらどうなるのか。問題点はなくても、個人情報を細かく握られていれば、簡単に罪は作られてしまう。

 というか、そこまで出来るだろうという空気感、もしくはするかもしれないという空気感は、正しいことをしようとしている者の口を塞(ふさ)いでしまうことにならないか。

 市井の敏感な人も、これを懸念していた。政府に逆らったりすれば(デモを主催するとか参加するとか)、目をつけられ、個人情報から罪をでっち上げられたりすることになったりはしないかと。

 馬鹿にされがちなこの手の懸念が政府内から出てきたのは、それが核心をついていたことの証左だろう。

 マイナカードの不安はこれだけじゃない。関連システムにかかる予算が2021年度は113億円だったのが、今年度は290億円に増えている。

 それは古いシステムで、特定企業の製品に頼っているから、コストが高くなるとわかったばかりだ。

 古いシステムで管理される、あたしたちの個人情報。最先端のデジタル化でコストカットするといっていたのに、なんか期待していたものと違う。人々を奴隷のように繋(つな)いでおく鎖みたいだ。

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

※週刊朝日  2022年12月9日号