岸田文雄内閣は相変わらず、各メディアの世論調査で支持率が低迷している。ジャーナリストの田原総一朗さんは、岸田内閣の何が問題だと考えるのか。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。

*  *  *

──通常国会が1月23日に開会しました。ですが、岸田文雄政権は昨年12月10日の臨時国会閉会後に、賛否が分かれるであろう方針を立て続けに打ち出してきました。防衛関係費を2027年度までに国内総生産(GDP)比2%に倍増したり敵基地攻撃能力(反撃能力)を保有したりすることなどを含む「防衛力の抜本的強化」や、「原発の推進」などです。

「本当なら国会において与野党できちんと論議すべきテーマ。国会を軽視した姿勢は大問題です。通常国会で野党はこの点を猛烈に攻撃するでしょう。ただ、何人もの自民党幹部が言っていました。『国会を開いてからやっていたのでは、時間がかかって決められない』と」

「どういうことか。米国からの強い要請があったということでしょう。加盟国は国防費をGDP比2%にするという基準があるNATO(北大西洋条約機構)と比べると、日本の今年度予算案の1.25%は少ないし、『米国は矛、日本は盾』という日米安全保障上の役割分担を担うには足りない。防衛問題で米国にもっと加担しないと同盟は維持できない、と言われているということだと思います」

■具体的に見えてこない

──国会での議論をすっ飛ばしている一方で、判断を引き延ばした揚げ句に2カ月で4人の閣僚が相次いで辞める「辞任ドミノ」も起きるなど、「決められない政権」との評価もあります。

「最大の問題は、何をやりたいのかがわからない、ということです。田中角栄政権(1972〜74)後、やりたいことがわかりやすかったのは中曽根康弘(82〜87)、小泉純一郎(2001〜06)、安倍晋三(06〜07、12〜20)の各政権です。例えば、小泉さんは自民党総裁なのに『自民党をぶっ壊す』と言って国民の支持を得た。彼らに比べると、岸田さんは『日本を良くしたい』とは言うんだけれど、具体的にどういうことなのか見えてきません。そういう意味では、サラリーマン型リーダーです」

──「外交の岸田」をアピールしようと、2月にはロシアによる侵攻1年のタイミングでウクライナの首都キーウを訪問することも検討しているそうです。

「これも恐らく、裏には米国の強い要請があると見ています。ウクライナを積極的に支持するということは、ロシアに対抗するということです。専守防衛の日本はこれまでそういった姿勢を明確にしてこなかった。でも、日米の同盟関係を持続するために、キーウに行ってウクライナ支持を世界に示すということなのでしょう」

──防衛費増額の財源のほか、新型コロナウイルスを感染症法上の5類に引き下げる件についても、反対派にきちんと説明して押し返すという工夫や力を岸田政権には感じません。

「一つには、岸田さんを支える人たちの力不足もあります。安倍政権では菅義偉さんが官房長官、二階俊博さんが幹事長で、この2人が非常に力を持っていた。安倍さんが抽象論を語ると、この2人が嫌なことを引き受け、泥をかぶって進めてくれた。いまはそういう存在がいません。優等生ばかりになったという印象です」

(構成/編集部・小長光哲郎)

※AERA 2023年2月6日号より抜粋