支持率が低迷する岸田文雄内閣は、4月に統一地方選と衆院補選を迎える。今後の政局はどうなるのか。ジャーナリストの田原総一朗さんに聞いた。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。

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──通常国会を乗り切ったとしても、4月には統一地方選と衆院補選があります。ここで自民が数を減らし、政局に影響してくる可能性はありますか。

「いま、岸田政権の支持率が20〜30%台で低迷しています。他国なら政権交代ですよ。日本の大問題は交代する党がないということ。野党第1党の立憲民主党の支持率は10%程度。政権交代を言うには低すぎます」

「ただ、野党が弱いのは昔から。もう一つの問題は自民党内の派閥の弱体化です。以前なら派閥の力で総理大臣を代えていました。それが小選挙区になって自民党議員の多くが執行部のイエスマンになりました。安倍政権末期には『モリカケ桜』の問題があり、国民の多数が『問題だ』と捉えていました。自民党の議員もバカではないので問題があるとは思っていたはずです。私は安倍さんに直接聞いたことがあります。『あなたに問題があると思ったら、議員たちはちゃんと指摘するか』と。そしたら『(そんな議員は)いない』って言うんです。ということは議員たちはごますりばかり考えて、国のために何をしたらいいか考えていないということ。そんな無責任な人ばかりで心配にならないのかと聞くと、安倍さんは『そう言われれば、確かに心配だ』と(笑)」

■明らかに痛烈な批判

──指摘と言えば菅前首相がこのところ、岸田首相が防衛費増額のための増税方針を表明したことは「突然だったんじゃないか」などと苦言を呈しています。

「菅さんの一番大きな指摘は、歴代総理大臣は総理になれば派閥を離脱してきたのに、岸田さんは抜けていない、なぜなんだ?ということです。その指摘に一理あるかどうかよりも大事なのは、これは明らかに痛烈な岸田批判だということです。私は菅さんが『岸田降ろし』にもう踏み切ったと見ています」

──党内で岸田降ろしが起きるとすれば、カギは菅さんだと。

「ただ、菅さんが総理の座を狙っているわけではありません。自民党の歴代総裁に共通するのは『自民党体制を続けたい』という思い。私利私欲はないんです。確かに菅さんはアンチ岸田ではある。でも、自分が総理になる気はない。では、誰を担ぎたいのか。党幹部たちの間でささやかれているのは(デジタル相の)河野太郎さんです。そのときに、やはり非主流派の代表格である二階さんがどう動くか。実は中国の習近平(シーチンピン)国家主席が最も信頼している日本の政治家は二階さん。米中対立の難しい状況の中、二階さんの影響力はいまだに大きいと思います」

■萩生田氏は動きにくい

──会長不在が続く最大派閥の安倍派はどう動きますか。分裂するのか。萩生田光一政調会長を推して「次期総理候補」にする流れもありうるでしょうか。

「安倍さんがいなくなり、安倍派は分裂するだろうと言われていました。でも、分裂したら、自民党はばらばらになります。いまのところまとまっている。あまり言及されないことですが、(元首相の)森喜朗さんの存在が大きいと思います。非常に面倒見のいい人。彼が安倍派を支え、まとめているんです」

「萩生田さんは菅さんや二階さんと同様、『泥をかぶれる人』。安倍さんも、また岸田さんも萩生田さんを非常に信頼しています。ただ、萩生田さんは旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係で批判されたので、いまは動きにくいでしょう」

──岸田さんが「来年の党総裁選前に衆院を解散すると示唆した」という報道もあります。

「私は、解散の前に内閣改造をやると思います。昨年8月の内閣改造は失敗でした。岸田さんは宏池会です。宏池会と言えばまずリベラルであり、清潔が売り物。私は岸田さんが旧統一教会に関係した連中を思い切って外すと見ていた。でも、第4派閥ゆえ、安倍派や麻生派の思惑を重視せざるを得ず、ほとんど外せなかった。これが支持率が落ちた最大の理由です。でも、今度は思い切った改造をやるでしょう。やらなきゃもっと支持率が落ちますから。統一地方選の前か後か。目が離せません」

(構成/編集部・小長光哲郎)

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※AERA 2023年2月6日号より抜粋