2月5日に投開票される北九州市長選。4期16年務めた北橋健治市長(69)が不出馬を表明し、新顔4人の争いになった。ただ、福岡県内の主要な選挙の場合、必ずといっていいほど、自民党内のこの2人の争いが勃発する。副総裁の麻生太郎氏と元総務相の武田良太氏だ。2人とも福岡県選出の衆院議員だが、「犬猿の仲」と言われるほどその対立は激しい。
今回、立候補したのはいずれも無所属で、元国土交通省官僚の津森洋介氏(47)=自民・立憲・公明・国民推薦、共産党県委員会常任委員会の永田浩一氏(57)=共産推薦、元厚生労働省官僚の武内和久氏(51)、広告デザイン会社長の清水宏晃氏(39)。
最初に立候補を表明した武内氏は、2019年の知事選で麻生氏が擁立したが、武田氏が支援した候補に敗れた。
そして、今回の北九州市長選で自民党が推薦する津森氏の擁立には、武田氏の関わりがあったと言われている。
この選挙、麻生氏は表立った動きはしていないが、津森氏の推薦をめぐり“一騒動”あった。
もともと武内氏は、自民党の推薦を取り付けたい考えだった。だが、市議会の自民会派らは津森氏に立候補を要請。県議らとの協議を重ね、津森氏の支援を決めた。
しかし、自民党福岡県連として津森氏を推薦するという承認の署名について、麻生氏は断ったのだ。
「最初は麻生氏に近い幹部も渋ってはいたけど、なんとか説得した。しかし、麻生氏は最後までサインしないと拒んでいました」
と自民党の福岡県議が話す。
この状況に、党本部から森山裕・選対委員長が乗り出して麻生氏と会談し、説得を試みるという事態に。それでも麻生氏は署名を拒否した。
最終的には、
「サインしないが、党へ一任」
という言葉をなんとか取り付け、今に至っている。
麻生氏と武田氏の不仲は、永田町での力学にも影響する。
麻生氏は現在、派閥の会長として茂木派とともに岸田文雄首相を支える主流派だ。しかし、菅義偉前首相の時代は、武田氏が所属する二階派会長の二階俊博氏が幹事長として力を発揮し、武田氏も総務相として重用された。そうした因縁もある。
今回の市長選では、「署名問題」以外にも“事件”が起きた。
当初、津森氏の応援のため、菅前首相が北九州市に入る予定だったが、これが急きょ中止になった。
二階派の国会議員がこう話す。
「麻生氏と武田氏の対立があまりに激しいため、菅前首相は断念した。本当は二階会長も行くような話があったけど立ち消えになった。他の大物も巻き込まれたくないと、北九州市入りを見合わせている」
福岡政界の自民党はこれまで、麻生氏のほか古賀誠元幹事長や山崎拓元副総裁らが火花を散らしてきたが、古賀氏が引退し、山崎氏も失脚すると、麻生氏が重鎮として県内をおさえてきた。
しかし、武田氏が閣僚ポストを得るなどし、勢力図も変わってきている。
その象徴ともいえるのが福岡県選出の参院議員、大家敏志財務副大臣の存在だ。
麻生派の大家氏だが、今回の北九州市長選では津森氏陣営の選対本部長を務めている。
昨年12月初め、こんなことがあった。
大家氏は北九州市長選にあわせるように、「大家敏志 政経フォーラム2022」を北九州市内のホテルで開いた。自身のホームページなどでも広報し、講師として麻生氏を呼んでいることも大きな写真入りで紹介している。
しかし、麻生氏はそれをドタキャンした。麻生氏は大家氏を呼んで、市長選の対応について「説教」をしたと地元では伝えられている。
「麻生会長とすれば、大家氏は自分がずっと面倒を見てきたという自負がある。まさに親分ですよ。麻生会長が武内氏を支援することは前からわかっていた。津森氏の推薦が決まると、麻生会長に近い市議らは自民党を離れて武内氏支援に。それなのに、大家氏は武田氏と歩調を合わせて先頭に立って津森氏の応援でしょう。連日、津森氏がSNSに投稿する動画には大家氏が映っている。そりゃ、カンカンですよ、親分にたてついているのですからね」(麻生派の国会議員)
大家氏については、こんな“失策”もあった。 1月29日に北九州市立総合体育館で「Fリーグ」(フットサルリーグ)の試合が開催された。
地元チームのボルクバレット北九州が出場する試合だったが、その試合終了直後に津森氏が「たすき」をしたまま現れ、あいさつまではじめたのだ。
その模様が地元メディアでも取り上げられ、SNSなどでも流れて「炎上」。公職選挙法に触れるのでないかとの指摘もあった。
ボルクバレット北九州は、市長選への投票を呼びかける案内をする予定だったといい、それが一部の候補者のみとなったと釈明し、
「スポーツの場での政治的活動とのことで有権者の皆さまにはご混乱とご心配をおかけしました。真摯(しんし)に受け止め再発防止に努めてまいります」
とホームページで「おわび」するはめに。この一件には津森氏陣営からも、
「津森氏と一緒に試合会場に同行していたのが大家氏です。参院議員を3期もやっているのに何もわかってない。フットサルチームにまで謝罪させるとはむちゃくちゃ。自らの失策で票を減らしている」
と恨み節が出た。
前出の自民党県議は、
「2019年の知事選の時、自民党福岡県連は麻生氏の“威光と意向”で武内氏を推薦した。選挙は負けたけど、自民党支持者のなかでは武内氏の知名度は確実に上がった。今回、麻生氏は表に出ていないとはいえ、武内氏が津森氏に敗れると武田氏に“2連敗”したというイメージがつくだけに、武内氏陣営は『負けられない』という気迫を感じる。逆に津森氏の選対事務所は武田氏が取り仕切り、大家氏の失策で立憲民主党や国民民主党はしらけてしまい、不協和音がささやかれている」
と話す。
「武田氏は今回、津森氏が勝てば『もう麻生氏の時代は終わり』と公言している。トップを奪い取ると鼻息が荒い。大家氏もそんな情勢を見て取り、武田氏についた方が将来的に有利、と麻生氏を見限って津森氏を応援している」(前出の二階派の国会議員)
とはいえ、そんな簡単に福岡県全体のトップに立てるのだろうか。
福岡県議会を長く取材してきた記者がこう話す。
「仮に今回の市長選で津森氏が勝っても、まだ武田氏が福岡県の“当主”になるのは難しい。というのも、麻生氏には自民の重鎮の県議がついている。この県議は麻生氏と同じで『反武田』です。県議を束ねていて、まだまだ力を持っている。この人物がいる間は、武田氏が麻生氏を抜けるとは考えにくい」
北九州市長選後も、まだまだ福岡政界の戦いは続きそうだ。
(AERA dot.編集部 今西憲之)
仁義なき市長選 終わらぬ麻生太郎氏vs武田良太氏 北九州市を舞台に繰り広げられる因縁対決の行方は

関連記事
おすすめ情報
AERA dot.の他の記事もみるあわせて読む
-
9道府県の知事選きょう告示、統一地方選スタート…補選とともに各党のバロメーターに
読売新聞3/23(木)0:00
-
岸田総理、ウクライナ訪問を終え羽田空港に到着 帰国後すぐに国会審議へ
TBS NEWS DIG3/23(木)6:29
-
こども政策とりまとめ直前に追加会議開催へ 小倉大臣「多様なニーズへのヒアリングも必要」
TBS NEWS DIG3/22(水)22:22
-
がんで治療中の市長が会見 入院時ステージ4明かし、「復帰目指す」
朝日新聞3/23(木)7:45
-
仙台駅東側の「大動脈」完成 都市計画道路宮沢根白石線の1キロ、きょう23日開通
河北新報3/23(木)6:00
-
共産党・除名処分 松竹伸幸が語る真相「調査の時は納得してくれた様子でした」
AERA dot.3/23(木)6:30
-
首相、WBC優勝に祝意 「共に喜びたい」と投稿
共同通信3/22(水)22:35
-
ニュース裏表 平井文夫 やっぱり漏れた情報…「ウクライナ電撃訪問」岸田首相は空気を読めなかった? トップニュースはWBC〝村神様〟サヨナラか
夕刊フジ3/23(木)6:30
-
大阪府知事選23日告示 6氏が立候補を準備
産経新聞3/22(水)22:13
-
岸田首相が帰国
時事通信3/23(木)6:35
-
統一地方選スタート まずは9道府県知事選きょう告示
TBS NEWS DIG3/23(木)0:02
-
保守派にこびるも逆に批判の的になる岸田総理 納骨前の安倍元総理を墓参しようとするミスも
デイリー新潮3/23(木)5:56
-
「維新政治の評価」「IR誘致の是非」…大阪ダブル選の争点は?
毎日新聞3/23(木)6:30
-
児童手当の所得制限撤廃 自民、少子化対策骨子案
産経新聞3/22(水)23:28
-
室井佑月「自分ファーストの娘(息子)って?」
AERA dot.3/23(木)7:00
-
就労状況問わず保育所利用可能に 「異次元」少子化対策で 政府検討
朝日新聞3/23(木)8:00
-
ポーランドに“異例の対応” ODA対象国として支援
テレ朝news3/23(木)5:50
-
首相、キーウ訪問終え帰国 参院予算委で説明へ
共同通信3/23(木)9:11
政治 アクセスランキング
-
1
9道府県の知事選きょう告示、統一地方選スタート…補選とともに各党のバロメーターに
読売新聞3/23(木)0:00
-
2
岸田総理、ウクライナ訪問を終え羽田空港に到着 帰国後すぐに国会審議へ
TBS NEWS DIG3/23(木)6:29
-
3
こども政策とりまとめ直前に追加会議開催へ 小倉大臣「多様なニーズへのヒアリングも必要」
TBS NEWS DIG3/22(水)22:22
-
4
がんで治療中の市長が会見 入院時ステージ4明かし、「復帰目指す」
朝日新聞3/23(木)7:45
-
5
仙台駅東側の「大動脈」完成 都市計画道路宮沢根白石線の1キロ、きょう23日開通
河北新報3/23(木)6:00
-
6
共産党・除名処分 松竹伸幸が語る真相「調査の時は納得してくれた様子でした」
AERA dot.3/23(木)6:30
-
7
首相、WBC優勝に祝意 「共に喜びたい」と投稿
共同通信3/22(水)22:35
-
8
ニュース裏表 平井文夫 やっぱり漏れた情報…「ウクライナ電撃訪問」岸田首相は空気を読めなかった? トップニュースはWBC〝村神様〟サヨナラか
夕刊フジ3/23(木)6:30
-
9
大阪府知事選23日告示 6氏が立候補を準備
産経新聞3/22(水)22:13
-
10
岸田首相が帰国
時事通信3/23(木)6:35
政治 新着ニュース
-
岸田首相「支援の重要性感じた」=ウクライナ訪問から帰国
時事通信3/23(木)9:40
-
神奈川県知事選が告示、4人が届け出
読売新聞3/23(木)9:40
-
奈良・徳島県知事選は自民分裂 長期政権の現職に新人複数挑む構図
毎日新聞3/23(木)9:38
-
神奈川県知事選告示 4人が立候補を届け出
産経新聞3/23(木)9:35
-
岸田総理「侵略の現場を自分の目で見た」 ウクライナ訪問踏まえ
テレ朝news3/23(木)9:32
-
北海道知事選が告示 現新4人立候補、与野党が全面対決
産経新聞3/23(木)9:30
-
大阪府知事選に現職・新人6氏届け出 市長選とのダブル選、幕開け
毎日新聞3/23(木)9:29
-
北海道知事選挙、4人が立候補を届け出
読売新聞3/23(木)9:26
-
岸田首相、ウクライナ訪問終え帰国…「法の支配に基づく国際秩序を堅持しなければ」
読売新聞3/23(木)9:23
-
統一地方選が始まる、9知事選が告示 人口減や地域活性化めぐり論戦
朝日新聞3/23(木)9:20
総合 アクセスランキング
-
1
【WBC】衛藤美彩は歓喜の涙…夫源田壮亮が骨折した夜の会話「絶対ショートで出て必ず世界一」
日刊スポーツ3/23(木)4:00
-
2
侍J王座奪還も栗山監督に退任報道 その裏で浮上する後任候補3人…王貞治氏“推し”は?
日刊ゲンダイDIGITAL3/23(木)7:02
-
3
宅配業者が血だらけの女性に馬乗りの“刃物男”取り押さえ…近所の86歳男を逮捕 横浜市
日テレNEWS3/22(水)22:22
-
4
WBC決勝の客席にいた「31人目の侍」を米称賛「エンゼルスファンはこれを見て学んで」
THE ANSWER3/22(水)22:13
-
5
侍Jに「困っていた」宇田川優希 ダルビッシュに救われた34日間の変貌「今は凄く寂しい」
THE ANSWER3/23(木)5:43
-
6
遠野なぎこは自己記録更新でレベチ…葉月里緒奈は2カ月、山本太郎氏は3カ月 有名人たちのスピード離婚
女性自身3/23(木)6:00
-
7
「水ダウ」謎の違法アップロード画面で放送 右下に不審QRコード ネット疑心暗鬼「怖い」「変なウィルス?」
デイリースポーツ3/22(水)22:45
-
8
【WBC】板野友美、石橋杏奈、ダルビッシュ聖子さんら試合後にグラウンドで夫と記念撮影
日刊スポーツ3/23(木)5:00
-
9
【センバツ】天候不良の予想で3試合が順延 中止は今大会初 決勝は4月1日の予定に
スポーツ報知3/23(木)6:02
-
10
ヌートバー 日本に帰国する侍ジャパンの選手たちと別れのあいさつ ファン「泣けるよー」の声
スポニチアネックス3/22(水)22:05
東京 新着ニュース
東京 コラム・街ネタ
-
“消える魔球”も再現して大ヒット!「野球盤」が愛され続ける理由は“妥協のないリアルさ”にアリ
Walkerplus3/23(木)8:00
-
青梅の岩蔵温泉でシリーズ企画「欲に負ける夜」 春画鑑賞とフルコース楽しむ
みんなの経済新聞ネットワーク3/23(木)7:03
-
赤坂の「さばの棒寿司 赤坂一颯」がちらしずし弁当 平日ランチタイム限定で
みんなの経済新聞ネットワーク3/23(木)7:00
-
普及が進む「マイナンバーカード」、その利便性を専門家がズバリ解説
TOKYO MX+(プラス)3/23(木)6:50
-
ケンコー・トキナー本社ギャラリーで「ツァイスレンズで中野を撮る」写真展
みんなの経済新聞ネットワーク3/23(木)6:16
特集
記事検索
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright 2023 Asahi Shimbun Publications Inc. All rights reserved.
No Reproduction or publication without written permission.