羽生結弦、五輪連覇を経てたどり着いた「新たな思い」【沢田聡子】

羽生結弦、五輪連覇を経てたどり着いた「新たな思い」【沢田聡子】

 平昌五輪で連覇を果たして迎えた今季、羽生結弦はショート、フリーともに尊敬するスケーターの名プログラムと同じ曲を選んだ。ショートはジョニー・ウィアーの「秋によせて」、フリーはエフゲニー・プルシェンコの「ニジンスキーに捧ぐ」へのオマージュとなっている。どちらも羽生自身が唯一無二の存在になったからこそ滑れる、先人に対する敬意を表すプログラムだ。



 五輪連覇を果たし、自分自身がレジェンドとなった今、羽生は子どもの頃に憧れたスケーターの曲を滑ることで原点に戻ろうとしている。4月、自らプロデュースしたアイスショー『Continues 〜with Wings〜』に出演したウィアーとプルシェンコにこれらの曲を使いたいと伝え、快諾されたという羽生は、初日の公演後、今季にかける思いを次のように語った。

「前はどうやって勝てるプログラムを作るかも含めて考えていたんですけれども、これからは自分の気持ちに正直に……自分がやりたいと思う曲、自分が見せたいプログラムを考えながら選曲して、そして振り付けもしていただきたいなというふうに、今は考えています」

 また、演技面では今季初戦のオータム・クラシックのフリーで、羽生は高難度の連続ジャンプである4回転トーループ―トリプルアクセルに挑もうとしていた。この連続ジャンプは4回転トーループの着氷後、足を踏みかえてからトリプルアクセルを跳ぶため、各ジャンプの基礎点がそのまま合計される「ジャンプ・コンビネーション」ではなく、その0.8倍の基礎点しか得られない「ジャンプ・シークエンス」扱いとなる。「点数的にということではなくて、自分ができる最高のコンビネーション」としてこのジャンプを構成に入れたという羽生は「自分の気持ちに正直に」滑る姿勢をここでも見せていた。

 しかし、根っからのアスリート気質である羽生が試合に出る以上、勝負にこだわらないわけがない。初戦での羽生は、ショートでは一つのスピンで得点を得られず、フリーでは最大三つ入れられるコンビネーションジャンプを一つしか入れられなかった。優勝したものの納得いく演技ができなかった羽生は「今回の試合で一番感じたのは『試合でいい演技ができないのはすごく悔しいな』ということですし、『やはりもっと強くなりたいな』と心から思いました。『試合で勝ちたいな』という気持ちがすごく強くなった」とコメントしている。


 フィギュアスケートへの思いの起源となる曲で滑る羽生は、しかしあくまでも勝利を目指してグランプリ初戦となるフィンランド大会を戦うだろう。トリプルアクセルを磨き続けてきた羽生が、再び初戦では跳べなかった4回転トーループ―トリプルアクセルに挑むのか。また、憧れのスケーターと同じ曲を選んだプログラムで、羽生らしさをどのように表現するのか。そしてもちろん、どのように勝ちにいくのかも見どころになる。

 11月2日から開催されるフィンランド大会にはボーヤン・ジン(中国)、ミハイル・コリヤダ(ロシア)もエントリーしており、羽生とメダル争いを繰り広げそうだ。スケートカナダで3位に入った羽生と同門の若手、チャ・ジュンファン(韓国)にも注目したい。さらなる高みを目指す羽生のグランプリシリーズが始まる。(文・沢田聡子)

●プロフィール
沢田聡子
1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」


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