“新星”紀平梨花、GPファイナルで女王ザギトワに勝利なるか【沢田聡子】

“新星”紀平梨花、GPファイナルで女王ザギトワに勝利なるか【沢田聡子】

 今季シニアデビューを果たし、グランプリシリーズでは2戦2勝と鮮烈な印象を残した“新星”紀平梨花が、早くも女王アリーナ・ザギトワに挑む−−。

 11月10日に行われたNHK杯でフリーの演技を終えた紀平梨花は、熱狂の渦の中心にいた。

 冒頭でコンビネーションも含むトリプルアクセルを2本決めただけでなく、他の要素や滑りも完璧といっていい演技で、衝撃的なGPシリーズデビューを果たす。ポテンシャルの高さはジュニア時代からよく知られていたが、ついにシニアで快進撃を始めたのだ。会場には、スター誕生の瞬間を目の当たりにした興奮が満ちていた。

「これからも、あとどこを直せば点数が伸びるのかまた研究しなおして、これからももっと上を目指せるように、満足せずに、明日、明後日からも気持ちを持っていたいです」

 メダリスト会見でそう語った紀平は、GP2戦目のフランス杯(日本時間11月25日に開催)も制した。ファイナルに出場する選手の中で、GP2戦とも優勝しているのは平昌五輪金メダリストのザギトワと紀平だけだ。

 トリプルアクセルはもちろん紀平の大きな武器だが、GPの2試合を通して見せたのは、むしろトリプルアクセルが決まらなかった時の強さだ。NHK杯のショートプログラムでは、冒頭のトリプルアクセルで転倒。初の大舞台で、思い入れのある大技をいきなり失敗したにもかかわらず、その後の演技はきっちりまとめる。トリプルアクセル以外のすべての要素に加点がつく出来栄えで滑り切ったことが、フリーでの逆転優勝につながったのだ。

 またフランス杯でも、ショート冒頭のトリプルアクセルが1回転半になり得点が入らなかったにもかかわらず、その後の要素をきちんと滑ったことで2位につけた。さらに、フリーでも最初のトリプルアクセルの着氷で乱れると、2本目のトリプルアクセルを予定していた次のジャンプでは無理せずダブルアクセルを跳び、手堅く演技をまとめてGP2勝目を挙げている。


 女子では限られた選手しか跳べないトリプルアクセルについて、紀平は「代名詞になるくらいしっかり跳んでいかないといけない」と語っている。しかし、大技であるだけに毎試合成功するわけではなく、失敗した時のダメージも大きいはずだが、その際の対処は16歳とは思えないほど落ち着いている。今季から演技の完成度を求める方向で改正されたルールの下で、リスクを伴う大技に挑んでいくために必要な心の保ち方を身につけているのが強みだろう。

 紀平は昨季出場したジュニアグランプリファイナルでは4位となり、ロシア勢の表彰台独占を許す結果となった。しかし、現在、勢いの点では世界の女子の中でも有数の存在であり、シニアのカテゴリーで頂点をうかがえる可能性を感じさせる。五輪を制しても緩む気配すら見えないディフェンディングチャンピオンのザギトワが今季のファイナルでも優勝候補最有力であるのは間違いない。ただ、すべての面で優れる紀平が大技を決めれば、ザギトワに迫れる数少ない存在となるはずだ。(文・沢田聡子)

●プロフィール
沢田聡子
1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」


関連記事

おすすめ情報

AERA dot.の他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索