なぜラグビーは紳士のスポーツ? 発祥の地でわかった歴史と精神

なぜラグビーは紳士のスポーツ? 発祥の地でわかった歴史と精神

 2019年ラグビーW杯はアジアで初めて開催される。ニュージーランドやイングランド、オーストラリアなど強豪10カ国「ティア1」以外でも初めてで、歴史的な大会になる。



 日本の魅力を伝える好機となると語るのは、鶴岡公二・駐英国特命全権大使(66)。

「ラグビーは、イングランドの名門、ラグビー校が発祥の伝統的なスポーツ。イギリスでは紳士のスポーツとして定着しています。日本でのW杯開催は、イギリス国民が注目するだけでなく、指導層が集まる機会にもなります。大会運営や滞在の快適さ、さらに日本代表の活躍などで、日本の素晴らしさを世界に印象づける大変よい機会だと思います」

 1823年、ラグビーは名門パブリックスクールのラグビー校で生まれたといわれる。どのような学校なのか、訪ねてみた。

 ロンドンから電車で約1時間。イングランド中部のウォリックシャー州の、その名もラグビーという町にラグビー校はある。

 パブリックスクールは、イギリスでは私立校にあたり、中世のラテン語文法学校を起源に、富裕な大地主「ジェントリ」を中心とする「ジェントルマン=紳士」を養成する学校として発展した。その教育はいまなお受け継がれ、入学審査の厳しさと高額な学費で知られる。イギリス全土に7%しかない“難関校”だ。そのなかでもさらに名門とされるのが、ラグビー校を含む「ザ・ナイン」と呼ばれる9校。イギリスの指導層の大半は、その出身者で占められると言われるほどである。

 ラグビー校の門をくぐると、緑の美しいラグビーグラウンドが広がっていた。同校広報室のPJ・グリーンさんによれば、ラグビーはまさにこの場所で生まれたという。

「原型であるフットボールの試合中に、ウィリアム・ウェブ・エリス少年がボールを手にゴールに走ったことがきっかけと言われています。その生徒が実在したという以上の記録はわが校には残っていませんが、大切なのは、この学校でルールが作られたということなのです」

 現在は1チーム15人、試合時間は前半後半各40分の計80分と決まっているが、当時はいずれも上限がなく、75人対225人で試合をしたり、5日間も続くことがあったりしたそうだ。ルールは1845年に生徒たちによって初めて明文化され、次第に整えられていった。やがて、ラグビー校の卒業生たちが進学先のケンブリッジ大学で広めたことで、当時の上流階級を中心に一般化したという。これが、紳士のスポーツとみなされるゆえんだ。

 ラグビー校は、1567年の創立当初は寄宿を基本とする男子校だったが、現在は共学。生徒は806人で、うち男子が53%。90%がイギリス人だ。13歳から18歳までの生徒の9割が寮生活を送っている。学費は年間約3万ポンド(約420万円)。

 オックスフォード、ケンブリッジの両大学に10%強が進学。スポーツや音楽、演劇の教育にも重きを置いているが、「ラグビーはもちろん、わが校にとって大変重要な存在です」とグリーンさん。男子は必修。課外活動も盛んで、100人以上が在籍し、うち1軍でプレーできるのは、15人のレギュラーを含む22人だけだ。

 その1軍キャプテンを務める、アラン・メヒター君(17)は、ラグビーが強い、この学校を自ら選び13歳から通っている。学校チームでの週3〜4回に加え、プレミアリーグの地元チーム「ノーサンプトン・セインツ」の育成組織でもプレーしている逸材だ。同時に、学校からプリフェクト(監督生)に指名される優秀な生徒でもある。

「ラグビーをすることで、フィジカルもメンタルも鍛えられます。でも何より、自分のためではなく、チームのためにプレーすることの大切さに気づける」とアラン君。ラグビーはまさにフェアプレーの塊だ。

「礼儀正しく、お互いを尊重し合いながら、試合で全力を尽くす。一旦試合が終われば『ノーサイド(敵味方なし)』と言われるように、友好を深める伝統のあるスポーツでもあります」 と鶴岡大使も言う。

「日本人の気質に非常に合っているのではないかと思います」

 深い歴史と伝統のあるこの競技を、今年、ラグビーW杯日本大会の会場で体感してはいかが。チケットは19日10時から公式サイトで一般先着販売される。(朝日新聞出版・伏見美雪)

※AERA 2019年1月14日号


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