「にわかファン」どころか選手ですら知らない、もう一つのラグビーとは?

「にわかファン」どころか選手ですら知らない、もう一つのラグビーとは?

 ラグビーW杯日本大会は、いわゆる「にわかファン」を急増させるほど熱狂した。だが「にわか」どころか選手ですら知らない、もう一つのラグビーがある。



*  *  *
 楕円のボールを持って突破を図るフォワードにタックルが決まる。攻撃側と守備側それぞれが入り乱れて密集戦……と思いきや、すぐに立ち上がり、倒れた地点からバックパスでプレーが再開された。ラグビー日本代表“サムライズ”の練習風景だ。

■休業補償を求めて分離

 実は、ラグビーと呼ばれるスポーツは複数ある。ひとつは、先日ワールドカップ(W杯)が終了した日本でもよく知られるラグビー。これは「ラグビーユニオン」と呼ばれる。そのユニオンと世界で人気を二分するのが「ラグビーリーグ」で、サムライズはこの日本代表だ。ラグビーリーグは19世紀末期、働きながらプレーする選手への休業補償などを求めるチームがユニオンから分離して発足した。当初は同じルールだったが、ラックやモールなどが廃止され、スクラムも簡素化を図るなど独自のルール改正が進んだ。日本ラグビーリーグ協会の小西周(あまね)代表理事はこう説明する。

「休業補償などの選手待遇を改善するには、観客を入れて収入を得る必要がありました。そのために、わかりやすくスピーディーな展開になるようルール改正が進んだのです」

 ユニオンは、W杯で人気が高まったとはいえ、初心者には「いま何をしているか」わかりづらいプレーが少なくない。一方、リーグではタックルが決まるとそこでリスタートとなり、密集戦が起こらない。攻撃側が6度のアタック以内で得点できなければ、相手ボールに。つまり、守備側は6度タックルを決めるとボールを奪い返すことができる。ボールの位置が常に把握でき、展開がわかりやすい。

 ラグビーリーグは現在、欧州や南太平洋の国々で広くプレーされ、W杯も開かれる。オーストラリアはユニオンの強豪国としても知られるが、国内ではリーグの方が人気スポーツだ。選手の転向も珍しくなく、ユニオン日本代表のウィリアム・トゥポウ選手は、リーグのトンガ代表に選出された経歴も持つ。

 豪・パース在住の大学生リアン・ヴェストハイゼンさんはユニオンの選手だが、リーグの大ファンでもあるという。

「リーグは密集戦が少ない分ボールがよく動いて一人ひとりの運動量が多いから、見ていてとてもエキサイティングだよ」


■日本では競技人口100人ほど

 一方、日本では1993年に日本ラグビーリーグ協会が設立され、普及や代表選出を担っているが、知名度は低い。国内の競技人口は100人程度で、ほとんどがユニオンと掛け持ちだ。

「ユニオンの選手でも、リーグの存在すら知らない人も多い。発展途上です」(小西代表理事)

 それでも、リーグに重きを置く選手も増えてきた。大庭雄太選手(33)はリーグ歴約3年。今は、選手としてプレーする傍ら協会スタッフとしても奔走する。

「始めたのは“日本代表になりたくない?”と声をかけられたからで、興味本位でした。でも、初めて国際試合のピッチに立ったときは鳥肌が立ちました」

 日本代表は現在、世界ランク34位。豪州、ニュージーランド、イングランドの「ビッグ3」と対戦歴はないが、小西代表理事は「やったら目も当てられない結果になる」と言い、続ける。

「早いうちに、“ビッグ3に勝ったことがある”レベルまでは持っていきたい」

 サムライズは9日、アジア王者フィリピンと現地で対戦。今年リーグに転向した小森公揮選手(24)は、今回が初代表だった。かつてのチームメイトにはユニオンの日本代表選手もいる。小森選手は出発前、こう話した。

「ユニオンの代表選手を間近に見てきたので、自分がそこまで背負えるか不安もある。でも現地で君が代を聞くのが楽しみ」

 ユニオンW杯の盛り上がりを見て、小西代表理事は「いつかリーグも」との思いも強くした。ラグビーリーグ日本代表の挑戦は続く。(編集部・川口穣)

※AERA 2019年11月25日号


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