「正直言って、福岡での試合がたった2戦で終わってしまったのは痛いです」

 こう本音を漏らすのは、クライマックスシリーズ(CS)と日本シリーズによる、地元福岡への経済波及効果の試算を発表してきた福岡県の担当者だ。



 福岡ソフトバンクホークスが、巨人を圧倒して幕を閉じた日本シリーズ。2戦目までが両チームの本拠地ではない大阪ドームで、さらにソフトバンクの地元福岡でもたった2試合だけで終わってしまった。日本シリーズでの経済波及効果に期待していた福岡の地元からは悲痛な本音が漏れている。

 福岡県は10月末、すでにレギュラーシーズンでの優勝を決めていたソフトバンクが、日本シリーズで第7戦まで戦って日本一になった場合、県内への経済波及効果は339億円に上るとの試算を公表した。

 福岡ペイペイドームの観客数は、コロナの影響で収容上限のおよそ半数となる1試合2万人と算出。コロナの景気への影響は加味せず、百貨店などの記念セールや優勝パレードは過去の日本一の時と同規模で行われると想定した。内訳は、CS・日本シリーズの観客の消費額=39億9000万円、優勝セールなどでの売り上げ=255億6000万円、優勝パレードでの観客の消費額=43億円だった。 

 しかし11月に入り、新型コロナ感染拡大防止のため、優勝パレードを実施しないことが決定。その後、ペイペイドームで行われたCSでソフトバンクは千葉ロッテに2勝。たった2試合で終わってしまったことで、県は経済波及効果を283億円へと下方修正していた。

 さらに今回の日本シリーズ2連勝で地元に戻ってきたソフトバンクは、勢い止まらず巨人を圧倒。CSに続き地元で2試合に終わり、福岡県は観客の消費額は22億8000万円に減ったと算出し、経済波及効果を274億円へとまたも下方修正した。

 当初からは65億円の大幅減額である。福岡の繁華街・中洲の飲食店店主は肩を落とす。

「ペイペイドームでの試合後に飲みに来るお客さんが一定数いて、CSと日本シリーズも試合が多ければそれだけうちも利益が出る。CSが2試合で終わっちゃって、日本シリーズに期待したのですが……。コロナの影響で経営はかなりきつい、巨人も頑張ったとは思うけど、あまりのふがいなさにどうしても腹が立ってしまいました」

 専門家からも厳しい指摘が出ている。

「巨人4連敗は経済波及効果の面ではものすごく大きなマイナスです。その意味でも、ひとりのセ・リーグファンとしても巨人にはもうちょっと頑張って、せめて第6戦まではいってほしかった」

 と話すのは大のプロ野球好きで、経済波及効果の研究で知られる関西大学の宮本勝浩名誉教授(理論経済学)だ。

 宮本氏によると、日本シリーズ後の優勝セールやパレードを除いた、シリーズ期間中のチケット販売、観客の飲食やグッズ購入、交通機関利用などによる経済波及効果は第6戦で決着がついた場合は約43〜44億円、第7戦までもつれた場合は約50〜51億円に上るという。

「今回は、コロナ禍による入場制限の影響で4試合の観客数が計7万人弱と例年に比べ激減しました(昨年は4試合で16万3365人)。私の試算では今年の日本シリーズの経済波及効果は14億6500万円、と非常に厳しい数字が出ています。福岡でも、特に球場周辺やファンが試合後に訪れる飲食店などは大きな影響が出たと思います」(宮本氏)

 そして、こんな核心的な言葉で締めくくった。

「それ以前に問題なのは実力差です。ソフトバンクと巨人では投手の直球の威力も、打者のスイングの迫力も素人が見てわかるほどのレベルの違いだった。去年よりさらに差が開いた気がします。4試合だけでは経済面でもマイナスですし、野球ファンとしても面白くない。特に屈辱を味わった巨人にはなんとかして差を埋めてほしいと思います」

 多くの野球ファンの思いも同じだろう。(AERAdot.編集部)