桑田真澄の1軍投手チーフコーチ補佐就任が発表された。06年オフにメジャー挑戦のために巨人を退団後、15年ぶりの古巣復帰を果たす。



「新年早々、春から縁起がいい。非常にいいニュースを発信することができることになりました」

 巨人・原辰徳監督は満面の笑みで語り始めた。

「強い味方が、強い同志が1人加わったという点では、すごく喜んでいます。野球人として、人間力、生き様に非常に私自身も興味がある。私自身も勉強になる人だと思いました。ぜひ、そういう人にスタッフに入ってもらって、ジャイアンツをつなげて育てて行ってもらいたいと思いました」

 原監督の『桑田賛辞』が止まらない。

 ほんの1カ月ほど前、日本シリーズでソフトバンクに惨敗。2年連続4連敗という屈辱を味わい、言葉を失っていた同一人物とは思えないほどの饒舌ぶりだった。

「突然の決定と言われているが、以前から桑田本人との接触は図られていた。球団内ではチームのビジョンについて協議されていた。球団施設等にかなりの投資をしたこともあり、育成システムを体系化する必要性もあった。従来型のメンタル重視系ばかりでなく、理論的に指導できるコーチの必要性が出て来た。そこで桑田の名前は前から出ていた。謎の中の謎ということではない」(巨人担当記者)

 桑田は08年に現役引退後は、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科でトップスポーツマネジメントを学んだ。東京大野球部、桜美林大で特別コーチ、PL学園高OB会長やスポーツ庁参与なども務めて来た。論理的で丁寧な語り口の解説も変わらず評判が高い。

「高校野球からメジャーまで様々な場所で投げて来た。小さい身体で多くのケガや故障を抱えながら、プロで結果を残した。現在も東京大学大学院 総合文化研究科で投球や打撃の動作解析などを続ける。古今の野球をとことん探究している。今の巨人にとって必要な人物の1人であるのは間違いない」(巨人OB)

 日本シリーズでの惨敗が桑田招聘を後押しした面もある。巨人打線は球威あるソフトバンク投手陣を打てなかった。逆に巨人投手陣は柳田悠岐、中村晃など、パワフルな強打者たちの餌食になった。盛んに議論されるようになった『セ・リーグの危機』を、巨人全体で受け止めた部分もある。

「自前で負けない選手を作り出す必要性を痛感した。そのためにも心技体の全てで負けない『強い』選手が必要。理にかなった身体の使い方で、技術を高めるのもその中の1つ。現役時代から高い技術を誇り、運動生理学など専門知識も勉強している桑田は適任だった。原監督を筆頭にモチベーターになれる首脳陣はいるのだから、それ以外の役割を求めている」(巨人球団関係者)

 18年オフ、原監督が3度目の監督就任を果たした。この時に話題になったのが指導者経験のない元木大介、宮本和知の2人をコーチ起用したこと。テレビのバラエティ番組で活躍していたため、手腕に対して疑問も投げかけられた。しかし持ち前の“コミュ力”などを生かし、選手の大きな手助けとなった。

「元木、宮本両コーチは人情型というか、選手に寄り添って力を発揮させるタイプ。もちろん野球頭脳も優れているが、チーム全体の雰囲気を良くするバランサー的存在。桑田とは役割分担が明確に異なる。身体の使い方や技術など、野球を理論的に選手に伝える。1軍のみでなく3軍まで、全ての選手に対して指導する権限が与えられるのではないか」(巨人担当記者)

「プレーをしていない桑田真澄という選手を見た時、何とも頼りない選手が入って来たなと。体も大きくないし細身でしたしね。しかしひとたびマウンドに上がってボールを投げると、こんなに大きく見えたピッチャーはいませんでした。小手先で野球をするという言葉がありますが、そういうことがない。体も年々大きくなっていった。そういうものを今の選手たちに教えてもらいたい」

 現役時代の桑田を振り返り、原監督は投手としてのスケールの大きさを感じたと言う。ソフトバンクにねじ伏せられ、手も足も出なかった巨人。不甲斐なさを最も感じた指揮官は、投手陣の立て直しを桑田に託す。

「期待されているのはグラウンド内だけではない」と語るのは、全国キー局のテレビ関係者だ。

「KKコンビ(=桑田、清原和博)の人気は今でも絶大。清原もいろいろあったが、少しずつテレビ復帰を果たしている。ここに桑田が加われば注目度が格段に上がる。コロナ禍で各球団とも経営が苦しくなっている。野球界を盛り上げるためにも、桑田にはいい選手をどんどん育て、表舞台にもどんどん顔を出して欲しい。将来的にKK対談などを見てみたい。数字が期待できる」

『あの事件』の禊も済ませつつある清原。テレビだけでなく、ユーチューバーとして新たな道を開拓している段階でもある。そして紆余曲折の末、実現不可能とまで言われていた巨人のユニフォームに再び袖を通す桑田。かつて球界を代表した2人が、ここに来て話題になり始めている。今後、サシでの絡みが実現するのかなど、楽しみも尽きない。

「持論は常に、今日より明日。明日になれば明日より明後日。OBで野球人として非常に魅力がある人がユニホームを着られる環境にあった」(原監督)

 雪辱を期する原監督にとって、今オフは追い風が吹いている。ポスティングシステムを利用してのメジャー挑戦を表明していた菅野智之の巨人残留も決定。そしてキャンプイン直前での桑田コーチ就任も発表された。

 いい環境かどうかは今後次第だが、桑田コーチの手腕に注目したい。『野球センスの塊』とまで言われた好投手。自らの遺伝子を後世に伝えることはできるのか。そして巨人の挽回は成るか。今年もプロ野球は面白そうだ。