NPBでは、外国人枠の拡大や育成契約の増加などに伴い、1チームに6、7人の助っ人が在籍するケースも珍しくなくなった。これに加えて、シーズン途中に入団、移籍する選手も少なくないことから、昨季はDeNA、中日、ソフトバンクに9人、巨人には10人もの助っ人が在籍している。



 そんななかでも、助っ人の登録名のややこしさで異彩を放っているのが中日だ。ドミニカを中心とする中米獲得ルートを確立したこの10数年で、ヒスパニック系名字の助っ人がめまぐるしく入団、退団を繰り返しており、そのバリエーションも限られているため、中日ファンでも混乱させられるのでは?と思われるほどだ。

 昨季在籍しているのは、投手がルイス・ゴンサレス(ドミニカ)、ヤリエル・ロドリゲス(キューバ)、エニー・ロメロ(ドミニカ)、ライデル・マルティネス(キューバ)、野手がアリエル・マルティネス(キューバ)、ダヤン・ビシエド(キューバ)、ゾイロ・アルモンテ(ドミニカ)、モイゼス・シエラ(ドミニカ)、育成のサンディ・ブリトー(ドミニカ)の計9人。

 マルティネス姓が2人いるため、登録名の表記をR・マルティネス、A・マルティネスとファーストネームのアルファベット1文字で区別しているものの、「R」も「A」も文字型が似ているので、遠目ではわかりにくい。「ライデル」「アリエル」とファーストネームを登録名にしたほうがわかりやすいのだが、姓へのこだわりは、お国柄なのだろうか?

 A・マルティネスは、7月1日に育成から支配下を勝ち取り、NPBでは91年のマイク・ディアズ(ロッテ)以来、29年ぶりの外国人捕手として1軍の試合に先発出場。同7日のヤクルト戦では、マルティネス姓同士の外国人バッテリーも実現した。

 17年入団のR・マルティネスも、前年に続いて40試合以上登板し、クローザーとして後半戦の躍進を支えている。

 一方、マルティネスとともに、代表的なヒスパニック系名字として知られているのが、ロドリゲスだ。

 8月に支配下登録されたロドリゲスは、19年シーズンに最優秀中継ぎ投手に輝いたジョエリー・ロドリゲス(現レンジャーズ)と同姓とあって、1月に育成で入団したときには、「ロドリゲスが退団してロドリゲスが入団」という、ややこしい話になったが、1軍昇格後、先発ローテ入り。10月1日の阪神戦では、打線の援護なく負け投手になったものの、6回を2安打10奪三振1失点の好投を見せた。

 名字関連サイト「人名力」によれば、彼らの故郷・キューバには2877以上の名字があり(14年度調査)、一番多いのは、やはりロドリゲスで、54万8262人(ドミニカでも1位)。マルティネスも23万4863人で6位(ドミニカでは3位)。日本でいえば、佐藤さん、田中さんに相当するポピュラーな名字である。

 ちなみにマルティネスは、05年入団のドミニカ出身の左腕、ルイス・マルティネスを加えると計3人になり、球団助っ人史上最多になる。

 第1号のルイスは同年、18試合すべてに先発し、8勝4敗、防御率3.38。エース・川上憲伸、ルーキー・中田賢一とともに先発の柱として活躍した。入団前の04年にドミニカで発砲事件を起こした容疑で指名手配されたが、正当防衛が認められ、大事に至らなかったという仰天エピソードもある。

 このマルティネスとともに過去3人が在籍し、球団最多タイで肩を並べるのが、これまたヒスパニック系のバルデスだ。

 第1号は、03年に入団したアメリカ出身の右腕、マーク・バルデス。前年退団したメルビン・バンチの穴を埋める先発要員と期待されたが、5試合に先発して1勝もできず、シーズン途中から中継ぎへ。翌04年は30試合にリリーフ登板し、1勝1敗1セーブ、防御率3.51で5年ぶりのリーグ優勝に貢献。西武との日本シリーズ第2戦で勝利投手になったが、同年限りで退団した。

 2人目は、10年入団のドミニカ出身のエドワード・バルデス。07、08年に米3Aでプレーした経験もある193センチの右腕は、7試合に先発して1勝3敗と結果を出せず、たった1年でチームを去った。

 3人目は、15年入団のドミニカ国籍の左腕、ラウル・バルデス。野球で大金を稼ごうと、生まれ育ったキューバから亡命に失敗すること5回。数週間の刑務所暮らしのあと、6度目でドミニカへの亡命に成功したが、その代償として、兄が10年間刑務所に入れられてしまう。そんな苦難の数々を経てマイナーから這い上がり、10年に32歳でメジャーデビューをはたした苦労人だった。

 中日では3年間通算17勝24敗、防御率3.49。開幕からチームが19試合連続で先発投手に白星がつかない珍事となった17年、4月23日のDeNA戦で8回を無失点に抑え、開幕20試合目で先発初勝利。39歳の年齢と風貌から“おじいちゃん”のニックネームで親しまれた。同年はオールスターファン投票の先発投手部門で菅野智之(巨人)に次いで2位の19万7655票を集め、監督推薦で初出場をはたしている。

 昨季はバルデス姓の選手が不在だが、今季以降、通算4人目のバルデスが中日に入団する可能性もありそうだ。また、もう一人、マルティネスが加入すれば、同時期に3人が在籍という事態も十分考えられるが、もしイニシャルが「A」または「R」だったら、現在の2人と重なり、ますますややこしくなる?(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。