試合後、マー君のはじける笑顔は見られなかった。

 

 8年ぶりに日本球界に復帰した楽天・田中将大が17日の日本ハム戦(東京ドーム)に先発も、5回を投げて2本のアーチを浴びて3失点で降板。打線が1得点と沈黙して黒星がついた。13年から続いていたシーズン連勝記録は「28」でストップ。NPB通算100勝は次回登板にお預けとなった。

 被弾した2発はいずれも高めに浮いた直球だった。初回2死一塁で4番・中田翔に左中間スタンドへの2ランを浴びて先制を許すと、2回も石井一成に右翼席にソロ。昨季までプロ4年間で8本塁打の伏兵が振り抜くと、打った瞬間にホームランと分かる打球だった。2回まで3失点と波乱の立ち上がりだったが、3回以降は無失点ときっちり抑えた。2722日ぶりとなる国内公式戦のマウンドで投じた75球を、他球団のスコアラーはどう分析しただろうか。

「さすがだなと思いましたね。2回までに2つのアーチを浴びましたが、3回から変化球中心の投球に切り替えてきっちり抑えた。そもそも開幕前に右ヒラメ筋を損傷して4週間近く実戦から離れているのに、いきなり1軍にぶっつけ本番で投げるのが前代未聞です。手探りで投げながらきっちり試合を作る能力は凄い。8年前のような球の勢いは少しなくなったかもしれませんが、変化球の質がグッと上がってさらに打ちにくくなったイメージがある。13年の田中とは別人だと思って分析した方が良いと思います。手強い相手であることは変わりませんね」

 故障明けの登板であることを考慮しなければいけないし、田中の投球は及第点を与えられる内容だろう。ただ、鮮やかな快投を期待したメディアの間で、この結果に落胆の空気が流れたことは否定できない。

 テレビ朝日は田中の日本復帰登板をテレビ朝日は地上波で午後1時半から、BS朝日で午後2時から緊急生中継した。田中が2本のアーチを浴びると、ネット配信される各メディアの速報で、「田中がまさかの2被弾」、「田中将大期待裏切る復帰戦」の見出しが躍った。

 前出の他球団スコアラーは続ける。

「田中を神格化しすぎですよ。13年の24勝0敗が驚異的であの投球を再現するのは不可能です。剛速球でねじ伏せる姿を想像した人がいるかもしれませんが、8年間で肉体も投げ方も変わってくる。中田翔、石井一成の本塁打はきっちり捉えて『まさか』ではないし、田中の投球は決して期待を裏切った内容ではない」

 過去にメジャーからNPBに復帰した日本人投手の成績を見ると、日米通算201勝を挙げた元広島の黒田博樹は8年ぶりに日本球界復帰した15年に11勝8敗、防御率2.55。ソフトバンクに復帰した和田毅は16年に15勝5敗、防御率3.04で最多勝に輝いている。だが、現役メジャーリーガーが日本でも勝てるかと言ったら、そんな甘い世界ではない。松坂大輔、岩隈久志など球界を代表する好投手たちはNPBに復帰後、故障などで満足のいく数字を残していない。

「田中は2ケタ勝利が御の字だと思います。球の勢いで言えばオリックス・山本由伸、ソフトバンク・千賀滉大の方が上だし、対戦する相手球団も『田中に抑えられたくない』いう意地を前面に出してくる。打撃不振に苦しんだ中田翔が田中から今季初アーチを打ってダイヤモンドを一周した後に、珍しくガッツポーズをしたのが象徴的なシーンです。これからどんどん調子を上げていくと思いますが、全てを背負わせるのは気の毒でしょう。再び故障で離脱するのが球団にとって一番痛手なので、先発ローテーションで1年間回ることが最も重要で数字は後から自然についてくると思います」(在京スポーツ紙デスク)

 田中はスーパーマンではない。13年の幻影を追いかけるのではなく、32歳の円熟味の投球を堪能したい。(梅宮昌宗)