東京五輪で金メダル獲得を目指す侍ジャパン。初優勝を飾った2019年のプレミア12のメンバーが五輪でも中心になると思われたが、20年に開催予定の五輪が新型コロナウイルスの影響で1年延期。プレミア12から2年後になると、選手の序列も変わってくる。特に大きく変動が予想されるのが捕手陣だ。



「プレミア12ではソフトバンク・甲斐拓也、広島・會澤翼、巨人・小林誠司の3人体制でした。東京五輪でも故障のリスクを考えて3人を選出するでしょう。甲斐は確定で、強打が魅力で指名打者でも起用できる西武・森友哉が入ってくる可能性が高い。3枠目は阪神・梅野隆太郎が有力視されます。今年は阪神が開幕から首位快走していますが、梅野は不可欠な原動力になっています。セリーグの投手たちの特徴もつかんでいるし、稲葉監督も注目しています」(スポーツ紙遊軍記者)。

 梅野が一目置かれているのは捕球技術だ。投球を後ろにそらさないブロッキングが巧みで投手も暴投を恐れず腕を振って変化球を投げられる。14年には出場試合数が規定に達した選手で唯一の捕逸0をマークした。際どいゾーンに来たボールをストライクと審判に判定させる「フレーミング技術」も高い。強肩にも定評がある。同じく強肩を誇る甲斐の異名「甲斐キャノン」に対抗し、「梅ちゃんバズーカ」と称されることも。19年には捕手でNPB新記録の123補殺をマークしている。勝負強い打撃と俊足にも定評がある。セリーグを代表する捕手に成長した梅野だが、プロ入り後は日の丸に縁がない。侍ジャパンで東京五輪出場を熱望しているが、その可能性は十分にあるだろう。

 対照的に苦しい立場なのが小林だ。球界屈指の強肩を武器に16年から4年連続盗塁阻止率リーグトップをマーク。巨人の正捕手として活躍してきたが、原監督が3度目の監督に就任した19年以降は出場機会を減らしている。昨年は度重なる故障で10試合の出場に終わり、大城卓三に正捕手を奪われた。今年も開幕10試合を終えたところでファームに降格。大城が活躍しているだけに序列をひっくり返すのは簡単ではない。メディアには「トレード要員」と報じられるなど厳しい状況だ。

 小林の課題の一つが打撃だ。プロ通算打率.217と確実性を欠いているが、国際舞台では別人のように打ちまくる。17年に開催されたWBCでは侍ジャパンの正捕手として全7試合にスタメンで出場し、20打数9安打で打率.450、1本塁打、6打点と大暴れ。持ち味の守備でも準決勝・アメリカ戦でアダム・ジョーンズの盗塁を阻止し、捕逸は0と抜群の安定感で投手陣をもり立てた。

 国際試合で小林とバッテリーを組んだ他球団の投手は、「本当に投げやすい。投手の良さをうまく引き出すし、盗塁を刺してくれるので走者を出しても神経を使わなくていい。打てなくても守ってくれる捕手がベストですよ」とたたえていた。

 捕手の物差しは能力だけでない。守備重視か、打撃重視か。指揮官が目指す野球の方向性によって扇の要を託す選手が変わってくる。国際試合は1点を防ぐ野球になり、守備を重視する傾向がある。小林は「国際試合向きの選手」と言えるだろう。ただ、ファーム暮らしが続くようでは侍ジャパンに選出することは厳しい。残された時間は多くない。ここから大逆転での選出はあるか――。(牧忠則)