楽天・田中将大に、かつてのような絶対的な姿が見られない。



 日本復帰4試合目の登板となった5月8日の日本ハム戦(札幌ドーム)では7回4失点。ストライクを取りに行った球を狙われ、今季2敗目を喫した。

「その日その日できるベストを尽くしていくしかない」とコメントしたように、今はまだ試行錯誤の段階のようだ。

 期待は当然大きい。メジャー移籍前の13年シーズンには28試合(1試合はリリーフ)に登板し、無傷の24連勝を達成。球団初のリーグ優勝、日本一に大きく貢献した。そして、石井一久GMが監督との兼任となった今年、日本一を目指すべく敢行した補強の最終ピースが田中だった。大きな期待を背負っての楽天復帰であったが、ここまでは期待通りの活躍は披露できていない。

「石井監督はじめ、チームの誰一人心配している人はいません。飛び抜けた実績と経験があるので、任せておけば大丈夫。どんな大投手だって1度も負けないなんてことはありえない。7年間も日本球界から離れていたから、慣れるまで多少の時間はかかるはず。適応すれば実力の違いを見せてくれますよ」(楽天関係者)

 周囲はまったく心配していないが、どこか歯車が狂っているようにも見える。3月25日にはブルペンでの投球後に右足ふくらはぎに軽い張りを訴え、先発予定だった27日の日本ハム戦(楽天生命パーク)を回避。4月17日の日本ハム戦(東京ドーム)では、日本復帰後初登板を果たすも、初回に中田翔に2ランを浴びるなど5回3失点で負け投手となった。その後、24日の西武戦(楽天生命パーク)で6回1失点、5月1日のロッテ戦(楽天生命パーク)では6回無失点と、続けて白星を挙げたが、まだまだ本調子といった感じではない。

「正直、13年でみなさんの印象は止まっている部分はあると思うので、すごく求められてる部分、ハードルというものは高いという風に思っているが、そこをまた跳び越えてやろうというところも自分の中でのやりがいの1つでもあるし、1試合でも多く、チームに勝利をもたらす投球ができればなと思います」(田中入団会見/1月30日)

 メジャーでも名門ヤンキースで通算78勝(46敗)と実績を残した右腕の日本復帰は大きな注目を集めた。FAとなった昨シーズンオフは、メジャーチームと契約を結ぶと見られていただけに、“予想外の復帰”には楽天のみならず野球ファン全てが歓喜した。

「自分自身このフリーエージェントになった瞬間というタイミングでは、正直な話をするとヤンキースと再契約してまだプレーがしたいという思いがありました。しかし、もうかなり早い段階で話を代理人通じて聞いている中で、これはもう別々の道を歩んでいかなければいけないと感じたので、それ以降、本当にさまざまなことを考えました」(田中入団会見/1月30日)

 本人も語るように、メジャーでのプレーを続けたかったのは間違いない。だが、コロナ禍の中で、田中も含め昨オフにFAとなった選手は移籍市場でなかなか契約が決まらないという状況になった。

「米国内での評価は変わらず高かったが、コロナ禍もありヤンキースを含め条件提示が低くなった。田中の場合はお金がすべてではないだろうが、条件面がかけ離れていたのだろう。また交渉時期は米国内のコロナ禍の先行きが見えなかった。諸々の条件が重なり、日本復帰を決断したと思います」(米国エージェント関係者)

 様々な要因が重なり、最終的に田中は日本への復帰を決めた。プロ入り後から7年間楽天でプレーしたが、メジャーでも同じく7年間の時を過ごした。久々の日本でのマウンドに慣れるためには、もう少し時間がかかるのかもしれない。

「環境面での修正に戸惑っているようだった。中でも日米のマウンドの違いに、かなり神経質になっていた。ステップ幅などの技術面からスパイクのソールなどの用具まで、色々と試していた。開幕時の故障は、下半身にストレスが溜まっていたのだろう。良い選手は適応能力が優れているから、慣れるのも時間の問題でしょう」(在京球団編成担当)

「マウンドの土の違いは大きい。最近は米国式の粘土質のマウンドを採用している球場も多い。だがあくまで米国式の輸入で、悪く言えばマネであって、どうしても違いは出てくる。本場のマウンドで7年投げれば、身体(下半身)は米国モデルになっている。日本式に戻すよう調整しているところのはず」(スポーツ新聞MLB担当記者)

 投手にとってマウンドの質は死活問題。近年は各球場が米国と同じ粘土系の土をマウンドに取り入れている。しかしどうしても若干の違いが生じてしまう。また本拠地・楽天生命パークの土の管理は、甲子園と同じ阪神園芸が担当。どうしても日本タイプのマウンドに近づいてしまう。使用スパイクの裏面などにクッション材を採用するなどの工夫が話題になった。投げていて違いを感じているのだろう。今後、マウンドに対する更なる適応が求められる。

「チームの顔、広告塔になっている。球団としては多額の投資を回収したいのはわかるが、露出量を見ていると心配になるほど。同じ楽天グループのJリーグ・ヴィッセル神戸に所属するイニエスタのようです。個人ファンクラブやYouTubeなどを使って、マー君を徹底的に売り込んでいる。本人の意向もあるだろうが球団のプッシュがすごい」(楽天担当記者)

 楽天復帰が決定した1月29日にはYouTubeチャンネル「マー君チャンネル」を開設。ツイッターとともに活用して個人情報を提供している。また個人ファンクラブ「マー君クラブ」を設立し、2月25日に入会の受け付けを開始。10人限定で年会費180万円の「マー君クラブVIP」も即完売した。これまでも選手個人が球団の提供するサービスの一環となったことはあるが、NPB選手の中でここまで大掛かりなことは初めてとも言える。

「アイドル好きを公言するなど、田中はミーハーな部分がある。オフシーズンにテレビ出演が多いのも、芸能人と会えるのを楽しんでいるから。それが気分転換になって、野球で結果を出せば良い。根っからの野球好きで妥協は一切しない。渡米以前に比べてもストイックさは増した。チヤホヤされて勘違いする心配はないが、グラウンド外で疲れないようにして欲しい」(在京テレビ局スポーツ担当)

「まあ1つ2つ負けたってどうってことない。13年は24勝して1つも負けていないわけだからね。チームは好位置にいるし他の投手も調子が良い。ずば抜けた投手がこのまま終わるはずはないし、調子は自然と上がってくる。いてくれるだけで若手の手本になるし、ベテランにも刺激になる。お金以上に大きな存在、まさに生きるレジェンドです」(楽天関係者)

 今はグラウンド内外で日本の環境への適応を急ピッチで行なっている最中。まもなくニューモデルの田中を見れる日が近い気もする。その時にはさらに高いステージでの投球を見せてくれるだろう。「巨額契約どころか、安過ぎる」と言えるほどの圧巻のパフォーマンスを期待したい。