5月15日(現地時間:以下同)、ロサンゼルス・ドジャースは先日タンパベイ・レイズからDFA(事実上の戦力外通告)を受けた筒香嘉智を獲得したと発表した。11日の戦力外通告発表後、筒香が引き続きレイズとマイナー契約を結ぶのか、あるいはシーズン途中ではあるが日本球界への復帰のどちらを選ぶのか予想されていた中で、メジャー他球団への移籍は現地メディアからも大きな驚きの声が挙がった。



 昨季からレイズと2年契約を結んでいた筒香だが、開幕当初から打撃が低迷していた。チーム内でも二番目の高額年俸選手ということもあり、レイズはシーズン開幕から筒香にチャンスを与え続けていたが、26試合の出場で打率は.167、本塁打に至っては0本と、全く振るわなかった。いつまでもチームの期待に応えられない筒香に対し、レイズの我慢は限界を超え、ついに筒香を手放す決断を下した。

 地元紙『タンパベイ・タイムズ』が13日に掲載した記事では「レイズは筒香に投資した1440万ドル(年俸とポスティング料を含む)を無駄にしたが、今後その代償を払うことはなくなるだろう」と述べ、高額な金を捨てても筒香を手放したチームの判断を評価した。このように地元メディアからも酷評を受け、仮にマイナー契約となってもチームに居づらい状況に陥っていた筒香の去就は米メディアからも大きな注目を集めていた。また、成績の低さだけではなく、指摘されていた速球への弱さ、また獲得する球団が負担することとなる残りの年俸の高さもネックになり、他のメジャー球団が獲得する可能性は極めて低いと現地でも考えられていた。

 ところが、戦力外通告発表からわずか4日後、筒香を獲得する球団が現れた。それが今回のドジャースである。ドジャースといえば昨季のチャンピオンで、筒香にとってもワールドシリーズで対戦したことがある強豪だ。オフには昨季のサイ・ヤング賞投手のバウアーを獲得するなど連覇を狙った補強が話題となった。そんなドジャースがなぜ筒香を獲得したのか、ドジャースを扱う地元ロサンゼルスのメディアに話を聞いた。

「正直、筒香の獲得が正しいかはわかりませんが、今のドジャースの状況を考えると必要な戦力であることは間違いありません」

 こう語るのはドジャース専門メディア『DODGERS NATION』のブルック・スミス記者だ。同記者が語るように現在のドジャースは戦力が低下し、順位も落ちている。開幕前は、ダルビッシュ有を擁するサンディエゴ・パドレスとの熾烈な首位争いが予想されていたドジャースであったが、主砲のベリンジャーや、昨季ワールドシリーズMVPのシーガーなど負傷者が相次ぎ、また同地区で首位を走るサンフランシスコ・ジャイアンツの勢いに追いつけず、現在はナ・リーグ西地区3位という不本意な位置にいる。さらに、ユーティリティープレーヤーのリオスが左肩の手術のため、今季絶望となってしまったことで選手が足りない状況に陥った。もっとも、ドジャースは優勝の可能性は十分にある。内外野を守ることができる筒香は、まさに今のドジャースにフィットしており、その点では「今回の獲得も理解はできる」というのが地元記者の意見だ。

 また、筒香を好条件で獲得できたことも好意的に受け止められている。ドジャースは筒香をトレードという形で獲得したが、通常、戦力外通告を受けた選手がFAを待たず、ウエーバー期間中にトレードでの移籍が成立すれば、新たに所属するチーム、つまり今回の場合ではドジャースがその残りの年俸を負担することになる。しかし、現地メディアの報道によれば、筒香の残り年俸は例外的にレイズが負担し、ドジャースはメジャー最低保証年俸の約43万ドルを負担するのみだという。レイズの温情的な対応もあったのだろうと予測されるが、ドジャースにしてみれば負傷者の代わりを格安で獲得できたといえ、この点は地元メディアも高く評価する。

 使い勝手の良い守備力を買われドジャースに移籍することになった筒香だが、基本的には外野での出場が多くなるという予想もある。今季レイズでは一塁手を務めていた筒香であったが、ドジャースは筒香獲得と同じタイミングで、大谷翔平の元同僚で殿堂入り確実といわれる内野手のプホルスを獲得した。また、15日に死球による骨折で離脱したシーガーのポジションには外野出場が多いタイラーが就くと予想され、筒香が内野の守備に就く機会は多くないという。

 また、スタメンでの出場は少ないだろうとも予想されている。「ナ・リーグ西地区は、レイズが属するア・リーグ東地区に比べ投手のレベルが高いですから、苦労するのは目に見えています」とスミス記者。同記者は「(同じチームの)カーショーやバウアーと対決することがないことが唯一の救いですね」とジョーク交じりに語るが、筒香の打撃についての評価はやはり高くはない。レイズが筒香を手放したのも、前述の通り深刻な打撃の低迷が一番の理由であった。もちろん環境やコーチが変わることによって、自慢の長打力が復活する可能性もあるが、今はあくまで「負傷者の代わり」という扱いである。ドジャースから出場機会を与えられている間に筒香がその存在感を示せなければ、ドジャースはすぐさま筒香を手放すことも考えられる。

 それでもスミス記者は「筒香は楽しみな存在です」と語り、日本時代の長打力復活に期待を込める。また、同記者は同地区にいるダルビッシュとの対戦や、8月にドジャースの本拠地で予定されている大谷を擁するロサンゼルス・エンゼルスとの対決など、日本人対決にも大きな注目をしている。

 新たに背番号「28」を与えられた筒香が、名門ドジャースの一員として引き続きメジャーのフィールドに立つ姿が見られることはとても喜ばしいことである。昨季の覇者ドジャースから救いの手を差し伸べられた筒香には是非ともこの最後のチャンスを存分に活かし、再びメジャーの舞台でその本当の力と存在感を示してもらいたい。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)