巨人ファンも、阪神ファンも驚いた。

 26日の巨人―阪神戦。4点差を追いかける巨人は6回に松原聖弥の11号ソロで反撃ののろしをあげると、8回に吉川尚輝の適時二塁打、松原の犠飛で1点差に迫る。さらに、2死一、二塁と一打逆転の好機。途中出場の北村拓己が打席に向かうと、原監督がベンチから出た。勝負の一手は「代打・中田翔」。だが、実らない。中田は三ゴロに倒れて、そのまま敗戦。自力優勝の可能性が消滅した。

「驚きの一手かもしれませんが、原監督に迷いはなかったでしょう。あそこで中田を使わなければ、なぜ1軍に上げたのかわからない。もし、あそこで中田が逆転の一打を放ってヒーローになれば雰囲気もガラッと変わる。9月に入って低空飛行が続いている巨人に必要なのは新たな起爆剤です。原監督は中田に大きな期待を寄せている。きっかけをつかめば、チームに不可欠な長距離砲になれると考えているのでしょう」(スポーツ紙記者)

 確かに、中田の起用法に指揮官の思いが込められているように感じる。日本ハム在籍時にチームメートへの暴力事件が発覚。8月20日に巨人に電撃トレードで移籍すると、2軍での調整を経ずに、1軍で即起用された。13試合出場で打率.156、1本塁打、2打点と結果を残せず、9月11日にファーム降格したが、6試合出場で22打数11安打、打率.500、4本塁打、13打点と復調の気配を見せると、21日に最短の10日間で昇格した。

 ただ、他球団のスコアラーの見方はシビアだった。

「ファームで10日間調整したから、1軍で打てるほど簡単ではないですよ。中田は確かに実績十分の選手ですが、今年は日本ハムの期間を含めて5カ月以上結果を出していない。そんな選手をシーズン終盤の大事な時期にスタメンで起用するのはリスクです。中田しか起用する選手がいない状況ならやむを得ないが、良い選手はたくさんいる。中島宏之やウィーラーが一塁で起用された方が厄介ですね」

 1軍再昇格後は17打数1安打、打率.059、1本塁打、1打点。23日の広島戦で左腕・玉村昇悟の143キロを左中間に運ぶ先制の2号2ランを放ったが、復活の足掛かりにならなかった。ペナントレースの行方を左右する24日からの阪神3連戦でも1、2戦目にスタメン出場したが無安打に終わり、3戦目も勝負所で代打出場したが、快音は聞かれなかった。

「結果以前に内容も良くないのが気になります。狙った直球をファウルや打ち損じる場面が目立ち、下半身がほどけるのが早いため変化球は当てるので精一杯になっている。中田の精神状態も気になります。今まで日本ハムで伸び伸びやっていた環境とは違い、遠慮しながらやっているように見える。強面ですが繊細なタイプなので結果が出ずに精神的な焦りがあると思います。そもそも、最初から1軍で起用したのも疑問が残ります。他の選手と同じようにファームで試合に出して1カ月間みっちり鍛えてから1軍に上げても遅くはなかった」(スポーツ紙デスク)

 2位・阪神と4ゲーム差。首位・ヤクルトと上に2球団いるため、追いつくのは容易ではない。原監督は今後も中田を我慢強く起用して復活に期待を込めるか。一つも落とせない試合が続く中、起用法が注目される。(梅宮昌宗)